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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし)

寺田淳行政書士事務所

コラム

おひとり様の遺贈寄付

【今日のポイント】

 おひとり様でかつ一人っ子といった「後を継ぐ相続人がいない」人物の遺産相続について、年齢を重ねるにつれて自分の財産の始末について頭を悩ませる方も少なくないはずです。

 今日は、この問題に関しての一つの解決策、選択肢として考える「遺贈寄付」について紹介します。



【遺贈寄付とは?】

 まず、遺贈についてですが、遺贈とは「遺言書によって」 遺産を「相続人以外の個人または法人に」 寄付(贈与)することを言います。 

 遺贈の特色としては、仮にNPO法人等に遺贈した場合、この財産は非課税となります。 また遺贈先に制約はなく、自分が学んだ母校、長年勤めた企業や研究所、自分の考えに近いNPO法人等など、多岐にわたり、分野としても医療、文化、福祉、支援等あくまでも当事者である本人の意向が反映される点です。

  前にも紹介していますが、相続発生後、相続人等財産を受け継ぐ人物がいない場合は、最終的に国庫に没収となります。 国にあてて遺言で使いみちを書き遺したとしてもその意向が叶えられる可能性には疑問符が付きます。 確実に自分の遺志を叶えるには この遺贈寄付の手続きは欠かせないものなのです。

 

 【相続人がいる場合の遺贈寄付の意味】

 さて、遺贈寄付は相続人のいないおひとり様だけのものではありません。 通常の相続の場合、多くの場合相続税が発生し、期限までの申告と納付を済ませますが、その相続税はどういう用途で使われるかは「闇の中」です。 相続人が税務署に対し、故人の遺志で〇〇の為にここに納めた税金を使って下さいと願い出ても一蹴されるだけです。

 遺産全額とはいかないまでも、一部の財産を意中の法人等に受け渡したい場合、この遺贈寄付を用いれば、その想いを叶えることが出来るのです。
 
 またこれは相続人との合意が必要になりますが、一部の財産を遺贈することで、残りの相続財産を基礎控除の枠内に収めてしまい、相続税を免れるという使い方も可能です。 

 冒頭に書いたように、遺贈寄付は非課税になる為、相続人にとっても当人にとっても満足のいく手段と言えるのではないでしょうか? ~税務署にとっては満足のいく手段といえるかどうかはわかりませんが・・・


【遺贈を考えることの意味】

 遺贈を考える場合、まずは財産調査なくしては始まりません。 多くのNPO法人では現金での寄付以外は難しいと言われています。 不動産や貴金属を所有しているならば、現金での評価額を調べ、場合によっては事前の売却や処分によって換金しておく必要もあります。 自然、自分の保有する財産の内訳を正確に把握しておく必要があります。

 また遺贈の場合は遺言書の作成は必須案件です。 遺言書は公正証書遺言での作成をお奨めします。 法的な拘束力の強い公正証書遺言であれば、遺族が遺言を無視して糧に処分する事も出来ませんし、出来る事なら信用出来る遺言執行人を公正証書遺言の中に記載しておけば、より確実に遺志を実現できると思います。

 このように遺贈を考えることは正しい遺言書を作成しなくてはならず、そうなれば相続に関して相応の準備をすることとなります。 自然と「生前整理」の開始にも繋がっていくのです。

 

【遺贈の注意点】

 このように、良いこと尽くめ(にみえる)の遺贈寄付ですが、注意点があります。

 まず、遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」があります。 前者は全ての遺産を遺贈(寄付)するもので、後者は遺産の中の一部を指定して遺贈(寄付)するものです。

 相続人がいないおひとり様の場合ですと、この際きれいさっぱりしたいと「包括遺贈」を選びがちですが、前項で書いたように遺産の中に不動産が含まれてると受け取ることを拒否されることもあるのです。 また遺産には借金といった「負の遺産」も含まれます。 つい失念して包括遺贈を選択しますと却って負債を押し付けられることにもなり兼ねません!

 確実に遺贈の目的を達したいのであれば、「特定遺贈」を選択すべきです。

 もうひとつは、相続人がいる場合の遺贈です。 事前の合意が出来ていれば構いませんが、相続人にも内緒で公正証書遺言を遺しておけば、内容によってはトラブルの火種にもなるのです。

 遺言内容に納得しない相続人から「遺留分減殺請求」を当該のNPO法人等に求める場合があります。 こうなれば最悪裁判沙汰となり、双方に無用な負担を課すことになるともに、このような軽挙をした個人に対し遺恨を生じさせることにもなり兼ねません。 想いが叶わないばかりか、思いもよらぬ恨みを買ってしまっては、死んでも死にきれないでしょう。


【遺贈寄付と税金の関係のまとめ】

 ここまで書いてきて、このままこのコラムを終わると、相続人がいる場合の遺贈寄付や、よく中身が分からないような法人であっても遺贈寄付なら「税金は全く払わなくていい!」とも解釈されるかもしれないと思いました。 そこまで日本国は甘くは無いので、課税されるケース、されないケースについて簡単にまとめておきました。 対象となる税金は、「相続税と譲渡所得税」の2つです。

〇 相続税
 「1」個人に対する場合
 原則は「相続税は課税されます。」 但し、相続税法には次の規定があります。
「宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者」であって「政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該の公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの」であれば、相続税非課税となります。 (相続税法第12条第1項の第3号より)
 
 さらに、第2項には「前項第三号に掲げる財産を取得した者が「その財産を取得した日から二年を経過した日」において、なお当該財産を当該公益を目的とする事業の用に供していない場合においては、当該財産の価額は、課税価格に算入する。」とあります。

 要は社会福祉事業や学校の運営、その他の公益事業の事業者である者が、遺贈を受けた日から2年以内に遺贈を受けた財産を当該公益事業に使用した場合には非課税にするということです。

 「2」法人に対する場合
 原則として相続税は非課税です、なぜなら相続税とは「個人を対象とした税金」だからです。(相続税法第一条の3より) 
 とは言うものの、明らかに相続税節税、回避を目的としたと判断された場合は、不当に相続税を減少させる行為として寄付行為自体を認めない場合がありますし、持ち分の定めのない法人への寄付の場合も法人自体を個人と見做し、相続税課税の対象とする規定もありますから、税務署はそう甘くはないという事です。

 相続税については、原則非課税ですが、「法人税の課税対象」ではあるのです。
ただここでも例外があり、一定の基準を満たした公益法人の場合は、法人税も非課税とされることがあります。

〇 譲渡所得税
 「1」個人の場合
 ここも「原則として譲渡所得税は非課税」となります。 譲渡所得税の課税対象外となるのですが、一部限定承認の場合に課税されるケースもありますが、ここでは省略します。

 「2」法人の場合
 譲渡所得税の対象に金銭は含まれていないので、金銭の遺贈寄付の場合は非課税扱いになります。

 不動産、株式等の遺贈寄付の場合は、原則「課税対象」となります。 但しここでも例外規定があり、一定の要件を満たしていれば非課税とされます。(租税特別措置法第40条より)

 代表事例として、以下に3つ挙げておきます。

1)公益の増進
その遺贈寄付が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に「著しく寄与」する。

2)事業供用
 遺贈寄付のあった日から2年以内にその公益法人等の公益目的事業に直接供する(寄与する)か、その見込みがある。

3)相続税等不当減少
 被相続人の親族等(相続人)の相続税や贈与税の負担を「不当に減少」させる結果とならないこと。

 まっとうな理由、想いからの遺族寄付であれば、上記に該当することは無いはずです。 強いて言えば、2)にある寄付を検討している公益法人の見極めだけは、慎重に行わなくてはいけない点でしょうか?


 以上、いろいろ問題提起をしてきましたが、かくいう私も「おひとり様で相続人なし」のひとりです。 他人事ではなく真剣に考えなくてはいけない課題の当事者として、ここに紹介した次第です。

この記事を書いたプロ

寺田淳

寺田淳(てらだあつし)

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