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寺田淳

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寺田淳(てらだあつし)

寺田淳行政書士事務所

コラム

無主の土地問題に一石? 相続登記の義務化を検討

終活~相続に関する問題

2018年1月11日 / 2018年9月19日更新

【今日のポイント】

 所有者が分からない空き地や無人となった家屋、貴方の周囲にもあるのではないでしょうか?
一向に減らない、むしろ増加傾向にあるこの問題に対して、国は抜本的対策を検討し始めたようです。

 今日はこの話題について紹介したいと思います。



【無主の土地、空家の原因】

 「無主の」とは書いたものの、実際には所有者はいるわけで、所有者が不明な土地や家屋の存在を指します。 ではなぜ、不動産という「財産」の所有が不透明な状態に落ちるのでしょうか? 

 土地に関しては相続発生後には「相続登記」という手続きをすることで土地の名義を先代(故人)から当該相続人に切り替えることになります。 なぜこの手続きが必要かと言いますと、土地の所有の正当性を第三者に主張、対抗する為です。 ですがなぜかこの手続きは「任意」とされており、手続きをしなくとも罰則はありません。 この為か今一つ認知度も浸透していません。

 この制度自体を知らなかった為、。遺言や遺産分割協議で相続手続きが済んだものと解釈してしまうケースがあります。 

 ですが、より深刻な問題は「知っていて手続きをしない」為の所有者不明となるケースでした。



【なぜ相続登記をしない?】

 ではなぜ、法的な対抗要件を持つ相続登記を「あえて」しないのでしょう?
相続登記をしなければ、登記簿上名義人は「故人」のままです。 この状態ですと不動産につきものの「固定資産税」を現在の事実上の所有者である「相続人は課せられません! さらに、空き地であれば雑木や雑草の処理や定期的な清掃などの費用負担も発生し、「金食い虫」でしかない土地をわざわざ引き受けたくないという本音もありました。

 
 特に過疎化の進んだ郷里の土地や、変形の土地といった場合、ただ固定資産税だけを払い続ける事になることを嫌って手を付けないケースが目立ちます。  都心の土地であっても道幅が狭く自動車の通行が困難とか、駐車スペースがない、駅からの交通アクセスが今一つという理由で相続登記を渋るケースもありました。

 さらに家屋が残っている場合には、多くの場合火災保険にも加入していますから無人の家屋にわざわざ安くはない火災保険料をつぎ込むことにも強い抵抗感を生じさせています。

 もう一つの要因としては、ある相続人が名義人が曽祖父(故人)のままという事実に気付いたものの、曽祖父以降の法定相続人が世代交代を重ねた結果、2桁人数になっていたため全員での協議や合意は困難と考え、現状のまま放置を続けるというものでした。


 以上のように、相続人は特定が容易であっても税負担を始め無用な出費を避けたいケースと、相続登記には前向きであっても膨大な人数の法定相続人間の調整の手間は御免蒙りたいという2つの理由で手続きを「放棄」しているようです。



【この状況を受けて】

 今話題になっている「空き家問題」の一因もこの相続登記の手続きが任意であることは明白で、田舎の土地だけでなく都心でもこの問題は徐々に拡大しています。 空き地であっても不法なごみの投棄による周囲の環境問題の原因となりますが、空家が存在すると不法滞在や、家屋の倒壊による事故や損害の原因にもなります。 放火のターゲットにもなり易く周囲への被害は膨大なものになる恐れがあります。

 この為、国としても 所有者の「善意」だけに託すのではなく、相続登記を「任意から義務化」へ切り替えることを検討するとありました。 義務となれば、履行しない場合には「罰則」が発生するでしょうから、手続き放棄へのけん制となるかもしれません。 

 これとは別に法務省は「土地の所有権放棄」を法制化することも検討しているようで、手に負えなくなった土地の所有権を法に則って国や自治体へ移管・委託することでその後の処分が容易になる仕組みを設置したいとされています。

 ですが、先に述べたような空き地の管理費は所有者が国や自治体に変わっても当然発生します。 本来個人が負担すべき費用を安易に肩代わりしていいものか? 財政負担が増す分は結局他の住民の負担増になるのではないか? といった新たな検討課題が発生するでしょう。

 既に2016年時点で全国で約410万㌶に達する土地が「無主の土地」と試算されており、このまま推移すれば2040年には北海道全土に匹敵する780万㌶が「所有者不明の土地」と化すと試算されています。

 不動産神話、土地神話ともてはやされた時代を知る身からすれば、隔世の感を禁じ得ません。

この記事を書いたプロ

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2018-09-19
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