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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし)

寺田淳行政書士事務所

コラム

遺言の書き方ひとつで変わる相続  ~代償分割の活用

終活~遺言にまつわるあれこれ

2014年8月11日 / 2015年3月31日更新

 


 お元気ですか?
生活に密着した法律相談と第二の人生支援に邁進している
新橋駅前の寺田淳行政書士事務所の寺田 淳です。



 今回は相続対策の最大の決め手である遺言書の書き方について紹介します。

 特に遺される家族に「問題を抱えている」場合の遺言の「効力」です。

代償分割


 代償分割とは、例えば相続財産としては家と土地が大半を占め、そこに相続人のうちの一人が被相続人と同居しているような場合では相続発生時に公平な遺産相続が難しい事になります。
 この場合、同居している相続人が家と土地を全て相続し、残りの相続人には法定相続相当額を金銭で支払う事で相続を完了させる方式の事を言います。

 事例として母親と兄が実家に同居、弟は独立して別居。財産は不動産の他には僅かな貯金だけという設定とします。そして弟は所謂「愚弟」の極みで兄と母親とは絶縁状態に近いような場合とします。
母親も兄も本音では一円も愚弟に財産を相続させたくない!または最小限の相続に抑え込みたいという場合。この代償分割の活用である程度兄と母の希望に沿った相続の形に出来るのです。

  仮に不動産の価額が5,000万円、貯金が1,000万円で計6,000万円の場合、通常の相続ですと相続人は兄弟2人なので1/2づつの3,000万円です。遺言が書かれていなければ、このままの相続となってしまいます。兄弟2人で話し合って決めて欲しい等と書いてはさらなる泥仕合を招くだけです。

 この時、母親は遺言で「全財産を兄に相続させる」と書いておけばいいのです。

 当然法定相続人である「愚弟」は正式な権利である「遺留分減殺請求」を申し立てるでしょう。ですが、その場合は相続財産は1/2の1/2で1/4、1,500万円にまで「減額」出来ます。

 もし法定相続のままだとしたら、兄は家に住み続けたければ3,000万円相当額を用意して弟に渡さなければいけません。貯金の1,000万円を渡しても残り2,000万円を工面する必要があります。兄の家庭にそれだけの蓄えがあれば別ですが、そうでなければ家を手放す、または2,000万円分の名義を弟と共有するという選択しか残されないところでした。

 ですが、母の遺言のおかげで弟には遺留分減殺請求分の1,500万円だけ渡せばいい事になります。1,000万円は母の財産だった貯金を充てて、残る500万円分だけを兄は用意すればいいのです。2,000万円から500万円へ。 差引き1,500万円の「節約」となります。

 余談ですが「こんな愚弟にそれでも1/4の権利を保証するなんて!遺留分減殺請求なんてなぜ認めるのか?」と思われた方は少なくないのではないでしょうか?

 今回の事例では子供を悪役にしましたが、親に問題ありと言う逆の場合もありますね。
父親が母親(妻)の死後、再婚し、後妻に言われるがままに「全財産は後妻に相続させる。」等と言う遺言を遺してしまったら、先妻の子供には何ら非は無いのに相続財産を失う事になります。

 同様に兄弟の中の一人を溺愛し全財産を特定の子供に相続させるというケースもあり得ます。この様な場合には、遺留分減殺請求で少なくとも非の無い他の子供達は法定相続の1/2の財産は確保出来るのです。

 法の解釈は立場によって様々な形になります。

 既述したような事例ではなく、話合いによって代償分割で合意がされた場合でも、ひとつ問題が残ります。それは「不動産の評価額」の捉え方です。

 ご存知の通り土地の価額には3つあります。一物三価ですね。

 ・公示価格=時価
 ・相続税評価額=路線価
 ・固定資産税評価額

 例えば時価が5,000万の評価額なら 路線価は約8掛けの4,000万円、固定資産税評価額なら3,500万円前後という具合にかなりの差が生じます。

 もうお分かりでしょうが、代償分割の際の基準価額をどこで捉えるかで大きく貰える金額(支払う金額)が左右されるのですから、貰う側は少しでも高く、支払う側は少しでも安く済ませたいのが本音です。

 せっかくここまで順調に合意が出来ていたとしても具体的な代償金の金額の話になった途端、交渉決裂という恐れがあるのです。

 先の事例でも愚弟にとっては最後の最後の悪あがきの機会なのです。
不動産を幾らで評価するかで1/2になる代償金額にも差が出るのですから、この点は兄としても覚悟しておく必要があります。 ~兄弟は仲良くしておくに限りますね。

 
 補足になりますが、兄弟間に事例のようなトラブルはなかったものの、母が遺言を遺さないまま亡くなった場合には遺産分割協議で財産の分配を決める事となります。通常相続税は被相続人が「死亡した時の相続税評価額」で算定されますが、遺産分割協議の場合は「分割協議成立時の時価を基準」とするので価額が変動している場合が出てきます。 評価額が下落していれば特に問題はありませんが、その逆の場合は・・・
 

 仮に、協議中に土地の近くに鉄道の新駅ができるとかショッピングモールの建設決定等の情報が公開されればどうなりますか? 時価は急騰します。協議成立までに時間がかかればかかる程時価も上がり、それに伴って相続税も上がります。当然代償分割の場合の代償金も比例して上がりますので要注意です。

 相続財産が家と土地しかない場合等に用いられる「代償分割」の活用法と注意点、お分かり頂けたでしょうか?

 次回は「同居の子供への寄与分」「二次相続への対応」について紹介したいと思います。

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