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田中嘉一

医療ミスを防ぐ医療機器安全コーディネーター(R)

田中嘉一(たなかよしかず) / 臨床検査技師

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コラム

手術室におけるメンテナンス方法

2018年6月4日

コラムカテゴリ:医療・病院

手術室におけるメンテナンス方法です


手術室で使用されるME機器というと、麻酔器・電気メス・生体情報御モニター・シリンジポンプ・輸液ポンプなどが代表的ですが、現場のスタッフが日常点検を行いにくく、そのためメーカーにスポット依頼している場合ならまだしも全く手つかずでメンテナンスが為されていないME機器の代表格に「電気メス」があります。

何故、電気メスのメンテナンスが放置され気味なのでしょうか?
その理由として以下のようなことが考えられます。
1、日常点検しようにも電源を入れて機器のセルフチェック機能を見るくらいしかやりようがない。
2、術中に不調になってもリユースしているディスポのハンドスイッチを新しいものに替えると大抵復活する。
3、専用の測定装置がないときちんとした点検ができないので、メーカーに点検依頼するしかない。
4、専用の点検装置自体が高額なのでそもそも購入できない。
5、目に見えた不具合が発生している感じがないので大丈夫なような気がする。

大体こんなところではないでしょうか。
しかし、これ実は危険なんです。
電気メスに関するトラブル事例で有名なのは消毒液にメス先から発生した火花で引火した事故例が報告されていますが、これ以外で顕在的な機器の不具合によるトラブルって意外と少ないのは事実です。
電気メスの精度を測定した場合の測定項目は以下の通りです。
1、切開・凝固の出力測定
2、高周波漏れ電流測定
3、対極板外れ警報抵抗値測定
4、各種漏れ電流測定
5、保護接地抵抗測定
6、消費電流測定
この内の2の高周波漏れ電流と5の保護接地抵抗の値が患者さんに対する電撃から守るために重要な役割をしています。


高周波漏れ電流
電気メスから発せられる電流は高周波で、モノポーラで使用する場合はメス先から発生した高周波電流は体内を通って対極板に流れます。この時もし患者さんの身体が対極板以外の金属部分に触れていた場合そこにも高周波電流が流れて今う場合があります。これが高周波漏れ電流でJIS規格では150mA以下であることが定められています。
もし、この基準を超えていた場合は機器の絶縁状態に異常をきたしている可能性がありこのまま使用した場合患者さんに重篤な健康被害を及ぼす可能性がありますので直ちに使用を禁止してメーカーに修理・点検の依頼を出さなければなりません。
このような状態を事故が起こる前に発見するには定期的な専用の点検装置による点検が必要となります。

実例
私の経験でも高周波漏れ電流を測定器で測定し150mAを超越していた機器が発見されたことがありました。メーカーに確認したところ直ちに使用中止にするよう指示を受けました。この機器は年数も古くいわゆるバスタブカーブの末期の状態であったため、潜在的な不具合を事故発生前に発見できた事例です。何年も点検していない機器や古い機器は測定器による点検を実施することをお勧めいたします。

保護接地抵抗
電気メスに使用されている電源コードのアースピン(長いピン)から、機器側のアース端子間に一定時間電流を流して計算で導かれる電気抵抗値です。JIS規格では0.2Ω以下と定められていますが、この値が高い場合が結構ある場合があります。
この値が高いと機器側から発生した漏れ電流(漏電)を大地に逃がすための機能が働きにくくなり患者さんを電撃から守ることができなくなるリスクが出てきます。電源コードのアースピンに錆などの酸化被膜がある場合はこれを除去することで改善できる場合がありますが、それでもダメな場合は電源コードを交換する必要があります。何年も点検していない機器や古い機器は要注意ですので測定器による点検をお勧めいたします。



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