
コラム
報道の自由はどこまで許容されるべきか
2018年1月28日
文春砲については既に論じたが、それ以外にも、
報道に関して気になることがいくつもある。
例えば、人気女優の広瀬アリスさん、すずさん姉妹の兄が、
1月15日に道路交通法違反(酒気帯び運転)容疑で静岡県警清水署に現行犯逮捕された件。
※そもそも、逮捕された時点で実名報道することも問題なのだが、
今日はその点は措く。
姉妹がTwitterで「ご心配をおかけし申し訳ございません」とお詫びする事態に発展している。
さて。
Q1 兄とはいえ、別人格である成人男性が逮捕されたことに対し、姉妹が公に謝罪する必要があるのか
Q2 っていうか、そもそも「捜査関係者によると、容疑者は広瀬姉妹の兄」
の部分を報道する必要があるのか。許されるのか。
日本の刑法は、犯罪者の家族に連帯責任を取らせる仕組みにはなっていない。
日本は諸外国に比べて、加害者の家族に対して非常に冷たい。
まあこの点も別に論じることにして、本コラムはQ2に専念しよう。
芸能人の家族に逮捕者が出た、逮捕者がいる、という事実の報道は、果たして刑法230条の2に定める
「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合」
に該当するのでしょうか。
前にも書きましたが、私は芸能人だという理由だけで
何でもかんでも「公共の利害に関する事実」と捉える見解には反対です。
芸能人は私人です。
報道の自由とプライバシー権という、人権と人権が衝突している場面で、
安易に報道の自由を優越させるべきではない。
公共の利害に関する事実とは、民主主義の維持・発展に不可欠な事実という風に、
ある程度狭く解するのが妥当でしょう。
芸能人にとって、イメージが悪化する情報が公になれば
場合によっては引退も余儀なくされかねない、
痛恨のダメージを負ってしまう可能性があります。
それに対し、報道の自由の優越によって得られる利益はどうでしょう。
芸能人の不倫とか、芸能人の身内に犯罪者がいるとかって、
民主主義の維持・発展に不可欠な情報でしょうか。
はっきり言ってどうでもいいことですよね。極めて個人的な問題です。
こんなものは法的保護に値しない。
報道は民主主義の要、を大義名分に、
実際には権力を監視して国民の人権を擁護すべきマスコミが、
むしろ権力に阿り人権を積極的に侵害しているのではないか。
私にはそう思えてならないのです。
強い危惧を感じています。
関連するコラム
- 立憲民主主義と人権を舐めるな ~森友文書改ざん問題 一線を越えた歴史的大問題2~ 2018-03-07
- 村本氏の「愚民観」は非難されるべきものなのか? 2018-01-03
- 憲法ドリル あなたは村本氏を笑えるか? その2 2018-01-05
- 1票の重み AKB総選挙より 2017-12-27
- 芸能人の権利を守れ ~表現の自由VSプライバシー権~ 2018-03-06
コラムのテーマ一覧
- メンタルコーチング
- 海事代理士
- 英語・中高生向け
- ジョブヨク・SDGs・CSR
- 判例100選
- 行政法
- YouTube
- 予備試験・法科大学院
- その他法律知識
- 微分積分・数学的思考
- 民法道場
- 語彙読解力検定
- 司法書士試験合格者向け
- 司法書士試験合格のための当たり前講座
- 司法書士試験
- 教育・育児・中等教育学校
- 貧困問題
- 補助者愛子の事件簿?
- 慰謝料・不法行為
- 大学等入試
- 行政法
- 個人情報保護
- 行政書士試験・宅建士試験
- 資格取得支援
- ご案内・その他
- 百人一首・古典
- 租税法
- 知的財産権
- 刑法・刑事訴訟法
- 憲法・人権
- 加害者家族支援
- 伊藤詩織さん・犯罪被害者支援
- 理系雑学
- 中小企業診断士
- ブラック企業
- 女と男の法律論
- 主義・主張
- 家族信託・財産管理・終活
- 短期療法・ブリーフセラピー
- アンガーマネジメント
- 古典的カウンセリング理論
- レジリエンス
- 認知行動療法
- アサーション
- 傾聴
- 趣味・日記・その他
栗原庸介プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。