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コラム
遺言を巡る争いその2
2016年6月24日
遺言書の「印」を巡る争い
もう一つの遺言を巡る裁判の話は、遺言書の「印」についてです。民法の規定では、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、いずれの場合も遺言者の署名、押印が必要です。印鑑の種類は特に指定されていませんので認印でも構いませんが、公証役場が作成に関与する公正証書遺言や、秘密証書遺言では、遺言者の特定や同一性の確認のために印鑑証明書の提出を義務付けていますので実際には実印で押印することになります。拇印については、以前裁判で争われたケースがありますが、有効という結論が下されています(最高裁平成元年2月16日判決)。
今回、最高裁で争われたのは「花押」です。花押とは「書き判」とも呼ばれ、文献によると、中国の南北朝時代の斉にまで遡るそうです。それが、日本にも伝わり、当初は貴族社会で用いられていましたが、それが武士の間でも使われるようになり、有名なところでは伊達政宗の織田信長の「麟」字花押や羽柴秀吉(豊臣秀吉)の「悉」字花押、伊達政宗の鳥(セキレイ)を図案化した花押などの例が見られます。
花押は押印とは認められない
この裁判で争われた遺言書の遺言者は琉球王国の名家の末裔(まつえい)にあたる沖縄県内の男性です。男性は2003年に85歳で死亡し、遺言書には、息子3人のうち、次男に山林などの不動産を全て相続させるとする内容が書かれていました。1審の那覇地裁と2審の同高裁那覇支部はいずれも、花押を印と認め、遺言書を有効と判断していましたが、上告審で、最高裁第2小法廷(小貫芳信裁判長)は6月3日、「花押は押印とは認められない」としてこの男性の遺言書を無効と判断しました。
個人的にはこの判決を見て、この男性の素性や文化的背景を鑑みれば、花押を遺言に必要な印として認めても良いのではないかという気もしましたが、おそらく最高裁としては今後、遺言書にまつわる同様の裁判を想定して、ここで、一度遺言書の印について明確に線引きしておきたいという判断があったのではないかと推察します。
遺言書の本来の目的は、ご本人の遺志を遺産相続に反映させるとともに、遺されたご家族の相続手続きの負担を減らしたり、遺産相続が揉め事にならないようにするための備えであったりするわけです。ですから、遺言書そのものが争いの火種になっては本末転倒です。皆さんも遺言書を作るときはその点を良く考えて専門家に相談するなどして本来の目的が達成される遺言書を作成するようにして下さい。
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