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小嶋裕司

就業規則の整備による人事労務問題解決社労士

小嶋裕司(こじまゆうじ) / 社会保険労務士

フェスティナレンテ社会保険労務士事務所

コラム

「就業規則を作成するメリットは?」と質問する経営者の背景的事情

2023年5月22日 公開 / 2023年6月13日更新

テーマ:就業規則 考え方

コラムカテゴリ:法律関連

当事務所の業務は就業規則です。

関連業務まで含めると99%を超えます。
15年就業規則に関連した業務
ばかりを行ってきました。

就業規則に専門特化した事務所なので、
様々なご質問を受けますが、

その1つに、
「就業規則を作成するメリットは何ですか?」
というご質問があります。

このご質問に対して、
以前の私は以下のような感じで
お答えしておりました。

(会話のやり取りでご説明しています。)

私「会社には様々な価値観の社員
が入社してきます。

認識の違い・考え方の違いが
出てきますので、

規則やルールを書面にしておくことが大切です。

そうすることで、労使(労務)トラブルを
防止することができます」

経営者「例えば、どんなことですか?」

私「退職時に、引継をしないで辞めていく
社員がいたら困りませんか?」

経営者「それは、困ります」

私「退職時の手続や引継の義務等を決めて、
就業規則に記載することで、
そのようなトラブルを避けることができます」

この会話をお読みいただいて
どうお感じになったでしょうか?

就業規則のメリットとして、
労使(労務)トラブルの防止は
最初に挙げられるものですので、

就業規則のメリットの回答として
間違えているわけではありませんが、

今は、このようなお答えを
することは決してありません。

このようなご質問をする経営者の気持ち
(背景的事情)がわかるようになったからです。

労働基準法89条で、
常時10人以上の労働者を使用する会社には
就業規則を作成する義務が課されています。

そうなると、就業規則の必要性を
全く感じていないけど、

法律上、作成しなければない
会社も出てきます。

法律上の義務だから作成
しなければならないとしても、

「どんなメリットがあるのか?」
を知りたいですよね。

そのような背景から頂く
ご質問だということに気づきました。

そういう背景的事情から出たご質問だとすると、
先ほどの回答では心に響きません。

労使トラブルに困っているとは
限らないからです。

そもそも、現在、労使トラブルで困っていたら、
「労使トラブルを防止する就業規則を作成できますか?」
というご質問になるはずです。

現在、困っていないことに対して、
メリットだと言われても、

やはり、仕方なく作成するもの
になってしまいます。

少なくてもじっくりと
作成しようとは思わないでしょう。

どの会社も、もっと緊急かつ、
重要な経営課題を抱えているのです。

しかし、以下のような感じなら
どうでしょうか?

経営者「就業規則を作成する
メリットは何ですか?」

私「メリットはたくさんありますけど、
その前に、1つお聴きしたいことがあります。

人事労務の問題で困っていることはないですか?

社員との関係の問題でも、
残業代の問題でも賃金の問題でも何でも構いません」

経営者「そりゃ、たくさんありますよ」

私「例えば、どのようなことですか?」

経営者「1番の悩みは、これから、定年を迎える
社員が何人かいて、

その人たちの処遇をどうするかで
悩んでいます」

私「もう少し、詳しくお話を
聞かせてもらえますか?」

経営者「わかりました。実は・・」

(省略)

私「なるほど、理解できました。
ところで、会社として、どうしたいですか?」

経営者「私個人の気持ちは決まっています。」

私「そのお気持ち(方針)を教えて下さい」

(省略)

私「それなら、解決策は3つほどあります。」

(省略)

経営者「3番目の内容は当社にぴったりですね。
それを当社で導入してもらえますか?」

私「もちろんです。ただ、その制度を導入するには
就業規則の作成が必要です」

経営者「なぜ、就業規則が必要なんですか?」

私「今回、ご提案の内容は就業規則に記載
しないといけないことになっているからです」

2つとも同じく就業規則のメリット
についてお答えをしていますが、
どのようにお感じになったでしょうか?

専門家に1番必要だと思うこと

恥ずかしながら、昔の私は最初の会話例のように、
自分が「良い」と思うご提案やお話
をしていました。

しかし、何をメリットに感じるかなど、
人(会社)によって全く違うのです。

今は、とにかく、ご相談者の方のお話を
丁寧に聴くことを大切にしています。

そして、経営者の気持ちやご質問をする
背景的事情について思いを巡らせること。

価値観に沿ったご提案をすること。

当たり前のことなのですが、
それを大切にしています。

専門家が専門的知識があることなど、
当たり前のことであって、

これこそが1番大切なことだ
と思っております。

最後まで、お読みいただき、
ありがとうございました。

この記事を書いたプロ

小嶋裕司

就業規則の整備による人事労務問題解決社労士

小嶋裕司(フェスティナレンテ社会保険労務士事務所)

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