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田村菜穂子

輸出入ビジネスを盤石にする、マルチリンガルのコンサルタント

田村菜穂子(たむらなおこ)

 

コラム

食品を輸入する際の必要な知識

日本ではあまり見ることがないカラフルなお菓子や、旅先で出会った珍しいサラミやチーズ、家族と友人のためだけに作っているというナチュラルなワインやオリーブオイルなど、海外の食品を輸入して販売したいと思ったことはありませんか。しかし、販売目的で海外から食品を輸入するには、一般的な貿易のノウハウだけでなく、食品特有の輸入手続き、輸入通関に必要な書類の準備、国内の食品関連法規の遵守など、さまざまな知識が必要です。

そこで今回は、食品を輸入する際に必要な知識について簡単にご紹介します。

食品と法律

海外から食品を輸入する場合、「法律の確認」「規制の確認」「生産国からの輸出~日本への輸入に必要な書類の確認」「原材料の確認」「製造工程の確認」「生産者の確認」などさまざまな事前の確認作業が必要になります。輸入食品の輸入者は、生産者と同等の責務を負いますので、輸入した食品が、人体への健康危害を与えないものであることを確約できなくてはなりません。事前の確認作業の多さは、輸入食品の安全性を担保するためのものでもあるのです。

それではまず、食品を輸入する上で必要となる法律についてご説明しましょう。

一般的な外国の商品を輸入する場合は、税関に何を輸入するのか申告し、関税(税金)を支払えば許可がおります。

しかし、食品の輸入販売についてはそうはいきません。輸入に共通の関税法が関わるのはもちろんですが、それに加えて、食品の輸入通関特有の法律があります。以下の3つは頻繁に出てきますので、食品の輸入に関わるのであれば、覚えておいたほうがいいでしょう。(カッコ内は管轄の省庁です。)

・食品衛生法 (厚生労働省)
いわゆる食衛法です。この法律の冒頭に、「食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする。」とあります。要は、口にすることによって健康危害を与える可能性のある飲食物、添加物、器具、容器包装等を規制する法律です。

・植物防疫法 (農林水産省)
植物を介して、病害虫が日本国内に持ち込まれるのを防ぐ法律です。野菜、果物、豆類など検疫の対象となるものを輸入した場合は、植物防疫所に届け出て検査を受けなければなりません。輸入された植物の検査は、 輸出国の政府機関が発行した検査証明書(植物検疫証明書、Phytosanitary Certificate)が添付されているかどうか、輸入禁止品であるかどうか、検疫有害動植物があるかどうかについて行います。検査の結果、合格とならなければ輸入できません。同じ品目であっても、輸出国によって規制の内容が異なる場合がありますので、注意が必要です。

・家畜伝染病予防法 (農林水産省)
家畜の伝染性疾病の国内への侵入防止のため、輸入貨物のうち検疫を受けなければならないもの、輸入が禁止されているものを定めており、偶蹄類の動物、馬科の動物、家きん、食肉製品、卵などが該当します。これらのものを輸入しようとする場合は、農林水産省動物検疫所の検査を受け輸入検疫証明を取得するか、農林水産大臣の許可を得る必要があります。

また、輸入そのものはできたとしても、実際の販売にあたって確認が必要になる法令も多数存在します。せっかく輸入した商品がスムーズに販売できなければ意味がありませんから、輸入を決める前に、輸入とは直接関係ない法令も事前にすべて確認するのが普通です。
輸入の話からは少々脱線しますが、以下に私が頻繁に目にする食品関係の法令を挙げます。これらはほんの一部分に過ぎず、取り扱う食品によって、確認しなければならない法令はまちまちです。(カッコ内は管轄の省庁です。)

・食品安全基本法 (内閣府)
・食品表示法 (消費者庁)
・不当景品類及び不当表示防止法 (消費者庁)
・日本農林規格 (農林水産省)
・乳及び乳製品の成分規格等に関する省令 (厚生労働省)
・健康増進法 (厚生労働省)
・薬事法 (厚生労働省)
・計量法 (経済産業省)
・酒税法 (国税庁)

いかがでしょうか?この複雑さが、食品の輸入は難しいと言われる一因でもあります。

食品輸入の流れ

以下は、食品の輸入手続きを簡単にまとめたものです。輸入する商品のカテゴリーによってはこれがすべてではありませんので、実際に輸入する場合に必要となる書類や検査については、常に最新の情報を関係機関にご確認ください。

(1) (必要に応じて)検疫所や税関への事前相談
検疫所では輸入相談を受け付けていますので、食品の輸入経験がない場合や、新しく取り扱う商品に不明な点がある場合は、事前に問い合わせたほうがよいでしょう。
また、税関も事前教示を受け付けていますので、輸入を考えている貨物の税番等が不明な場合は、事前に照会を行い、回答を取得することで、よりリアルな輸入コストを算出することができます。

(2) 輸入通関に必要な書類を準備する
食品の輸入にあたって、食品衛生法第27条(輸入届出の義務)に該当するものは食品等輸入届出書(いわゆる「食品届」)の提出が必要になります。届出の前提として、原材料表、製造工程、製造者の名前と住所の入手が必須になりますので、発注前に必ず取り寄せましょう。食品届が必要となるものは、食品衛生法第27条のとおり、「販売の用に供し、または営業上使用する」ことを目的として輸入する食品が届出の対象です。
販売以外の目的であっても不特定または多数の人に無償で配布するのも規制の対象となりますので、輸入目的が曖昧に捉えられる可能性がある場合は、事前に検疫所や税関に相談しておくほうがいいでしょう。
それ以外にも通関にあたっては、インヴォイス、パッキングリスト、商品によってはその他の添付書類、過去に実施した自主検査の試験成績書の提出などが必要になります。
必要とされる書類は、食品の品名、生産国、加工方法などにより提出すべきものが異なり、製造者または輸出者が作成・発行したものが望ましいとされています。
貨物が到着したにもかかわらず、輸入できないというトラブルを避けるためには、輸入通関時に必要となる書類については予め、関係機関または専門家へ相談するほうが確実でしょう。

(3) 貨物が到着する
船舶、航空機いずれの場合も、本船到着後、貨物は保税地域に搬入されますので、貨物の到着が確実になった時点で、輸入手続きを始めましょう。

(4) 検疫所に「食品等輸入届出書」(いわゆる「食品届」)を提出する
食品輸入届出証は、食品などを輸入するにあたって必要な書類で、輸入申告に先立って通関場所を管轄する検閲所へ提出します。届出事項を記入し社印を押した食品等輸入届出書2枚一組を提出するか、オンラインによる提出を行います。
なお、輸入通関業務(以下、4~10までの項目にある業務)については、専門の通関業者に代行依頼することも可能です。通関業務のみならず、国内輸送の手配の代行まで依頼できるので、貨物のボリュームによっては通関業者に任せることを考えたほうが、スムーズでしょう。

(5) 検疫所での検査 (※検査対象の場合)
検疫所では、食品衛生法の規格基準に適合しているか輸入者の届出内容を審査します。検査による確認の必要がある場合には検査内容を指示し、輸入可否の判断を行います。検査については、おもに命令検査、自主検査、行政検査、モニタリング検査などがあります。

(6) 「食品等輸入届出済証」が発行される (※検疫所での検査に問題がなかった場合)
検疫所の審査・検査指導の結果、問題がないと判断されたものについては、食品輸入届出書に届出済印を押印した食品等輸入届出済証が発行(返却)されます。

(7) 税関に輸入申告をする
食品等輸入届出済証を税関へ提出または郵送します。
※輸入する食品には、関税、消費税(商品のCIF価格+関税に対して課税)などの税金が課せられます。輸入品の引き取りまでに、関税と消費税を納付する必要があります。関税が無税である場合でも消費税がかかるので注意しましょう。

(8) 税関での審査・検査
税関での審査は輸入申告時に、簡易審査扱い、書類審査扱い、検査扱いの3つの区分で判定されます。簡易審査扱いの場合は直ちに輸入許可がおります。
書類審査扱い、検査扱いの指定を受けた場合は、管轄税関の指示に従い検査が必要になります。

(9) 関税・消費税を納付する
関税・消費税の納付には、納付書(輸入申告時に提出する必要あり)を利用する方法と、マルチペイメントネットワークを利用する方法(輸入申告時に利用を申し出る必要あり)があります。通関業者に通関業務の代行を依頼する場合は、通関業者のほうで関税・消費税の支払いを一旦立て替えてくれることが一般的です。

(10) 輸入許可が下り、貨物の引き取りが可能となる
(必要に応じて)税関の審査や検査を受けて関税と消費税を納付後、税関から輸入許可証を取得して、外国貨物を国内貨物として引き取ります。

輸送方法

海外から食品を輸入する輸送手段は、様々な方法が考えられます。航空便による輸送と海上コンテナによる輸送がメジャーですが、場合によっては、鉄道輸送やトラック輸送と組み合わせることも考えられます。

小口の輸入の場合、最も簡単な方法は、クーリエサービスと呼ばれる国際宅配便を利用することです。出荷元への荷物の引き取り、輸送、面倒な通関手続き、日本国内での配送をすべて請け負ってくれますが、速くて簡単な分、価格は非常に割高になります。輸入コストがかかりすぎるので、販売目的の商品の輸入の場合は、あまり使うことはないかもしれません。

次に、国際郵便を利用する方法があります。クーリエサービスと比較すると、時間はかかりますし、個人的には商業貨物を輸送するメリットを感じません。ただ、単価の安い商品を少量輸入するのであれば、商品特性に応じては検討してもよいかもしれません。

もっともメジャーな輸送方法は、フォワーダーと呼ばれる運送業者にコンタクトして、輸送のアレンジをしてもらうことです。フォワーダーは貿易ビジネスにかかわる上で欠くことのできない存在で、航空便・船便を問わず輸送の相談に乗ってくれる、頼りになる存在です。また、積み地によっては、海上コンテナの混載などもフレキシブルに受け付けてくれます。それぞれのフォワーダーで得意とする分野がありますので、輸送を依頼する貨物について経験が豊富なフォワーダーを選ぶことをおすすめします。特に食品は、生鮮、冷凍冷蔵、温度変化に敏感な食材、壊れやすい商品、リーファー(定温)の混載、大口の加工食品など、特性がまちまちですので、そのフォワーダーが普段どんな貨物を運んでいるのか、まずはヒアリングしてみましょう。
販売目的の商品を輸入する場合、フォワーダーへの見積のヒアリングにあたっては、一般的に以下の情報が必要になります。あらかじめ準備しておくと、問い合わせがスムーズになります。

● 商品の種類
● 貨物のボリューム(数量、重量、大きさなど)
● 原材料(※)
● 商品の生産者の名前、および住所(※)
● 製造工程表(※)
● 保存温度
● ドライコンテナ(常温)か、リーファーコンテナ(定温)か
● 貨物の引取先住所
● 貨物の配送先住所
● 商品の価格
● 貿易条件
● 保険をかけるか
● 通関手続きを誰が行うか (輸入者が自分で実施するのか、もしくは通関業者などに委託するのか)

(※)「原材料表(%入り)」、「製造工程表」、「生産者の名前と住所」については、輸送には直接関わってこないとしても、通関の際に必要になります。フォワーダーに見積もりを問い合わせる時点で、そこまでの情報を揃えておくことをおすすめします。

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