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工藤正彦

マニュアルの仕組みづくりコンサルタント

工藤正彦(くどうまさひこ)

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コラム

継承するべきは、良き伝統? 悪しき伝統?

代々の先輩たちが、工夫に工夫を重ねてきたノウハウ、秘訣、コツなどが、様々な形で会社に残っている。
その中には、こう言ってはなんだが、あまり受け継いでもらっては困るようなものもあるだろう。
しかし、それらは良きにつけ悪しきにつけ会社のDNAとして継承されているはずだ。

それらが、「マニュアル」という形式知になっていれば最高である。
それをタタキ台にして、時代や環境、お客様の変化に対応していく。
つまり、改良・改善していけばよいわけである。

もし、「マニュアル」という形になっていなくても、「マニュアルづくり」に取り組むことで、
それらは否応なく反映されることになる。
「こんな風に教えられた」「こうするんだと言われた」などなどは、立派な?ノウハウの継承である。
そうして作成された「マニュアル」は、次代の人たちにとって「先人の知恵の固まり」として大きく貢献することになる。
作成・活用・改訂のサイクルを回し続けるという良きDNAを会社に残しておくことは、
現代を生きる私たちの大きな責任でもあるだろう。

ところで、思い出したことがある。
この受け継いできたものを「伝統」と呼んでいるが、一般的にはそれなりの時間的経過を
イメージすると思う。
「日本の伝統」などと言われれば、古くから綿々と受け継がれてきたかのように思ってしまう。

ところが、である。ここ数年、中国人のマナーの悪さに関するニュースをよく目にする。
それに引き換え、「日本人は昔から礼儀正しかった……」などとちょっと誇らしげに振り返る、
ことも多いのではないだろうか。

「(ホテルの)じゅうたんにツバを吐いたり、たばこを捨てて焦がしたり」
「ロビーのイスで足を開いて高イビキ」
さらに、
「銀座の歩道はゴミの山」
「割り込み乗車は当たり前」
                   などなど。

実は、これらはすべて日本人がやったことだという。(毎日新聞 2016年1月25日 夕刊「特集ワイド」)
記事によれば、東京五輪(1964年)の前は、日本人のマナーは、ひどかったとのこと。
つまり、戦後から続く様々な取り組みによって、今のマナーの良さがあるのだという。
ある社会心理学者は、「そうした過去を忘れ、今あるものを『これが日本の伝統だ』、だから
『日本人は昔から優れていた』と思い込むのは、他国を見下す思想につながる危険性があると述べている。
「日本人の道徳・マナーは昔から優れていた」わけではないのである。

翻って、マニュアルである。
「何でもかんでもマニュアルにすることで、会社の良き伝統、言葉にしづらいものが失われてしまう」
と嘆く人がいるが、よくよくその中身を吟味しておかないといけないと思う。
自分に都合の良い「部分的事実」だけを取り上げて「良き伝統」と言われては、
新しい時代に対応した改良・改善はおぼつかない。
それこそ、何も変えない「悪しき伝統」を作ってしまうことにもなるだろう。

マニュアルづくりは、本当に様々な問題を提起してくる。
マニュアルは深いものだとあらためて思う。だからこそ、やりがいがある。
気合いを入れて、これからも真摯に向き合っていきたいと思っている。


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工藤正彦 著作

『成功したければマニュアルどおりにやりなさい。』(実務教育出版) 2015年

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