香りと医学

谷津吉美

谷津吉美


 薬剤師木村が、武蔵野大学薬学部に訪問いたしました。様々な豊かな木々に囲まれていて、とても落ち着いた空間でした。前身の武蔵野女子大学からの歴史ある大学で、鎌倉仏教の一つ、浄土真宗の宗祖とされる親鸞像が出迎えてくれました。右手に杖、左手に菅笠、小さく踏み出した足には簡素な草鞋。20年近く過ごした関東から故郷の京都へ帰る旅立ちをイメージした像なのだそうです。凜としたまなざしは、見ていると身が引き締まります。
 仏教で使われる線香は生薬の香りを元に作っているものも多く、生薬の標本も充実しておりました。仏教の文化では線香の香りが神聖な空間を作り出すための重要な要素として見なされています。線香の煙が空に向かって上昇する様子は、仏教徒の祈りや願いが天に届くという象徴的な表現としても解釈されてきました。線香の香りは、教えや法話を聞く際の心の準備としても機能します。香りによって心が落ち着き、集中力が増すことで、仏教の教義により深く没入し、理解を深めることができるそうです。
 仏教と香りの深い関係を知り、漢方での香りもとても重要だとより感じました。薬を煎じる間、部屋に充満した漢方の香りを嗅ぐことはより身体の治癒力を高めてくれるのではないかと思いました。煎じ薬とエキス剤の効果の違いもご存じかと思いますが、この「香り」が大きな違いを生み出していると思います。皆様も、より漢方の香りに集中して、五感で感じてみてください。もしかしたら、体調や感情の状態によって香りや味の感じ取り方が違うかもしれません。

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谷津吉美
専門家

谷津吉美(薬剤師)

有限会社むつごろう薬局

漢方医学を専門に23年。不妊症をはじめ各種女性の悩み・アレルギー・皮膚病・自律神経失調症などの症状に、深い知識で丁寧に対応。また静岡県立高校の進路指導講演会や不妊専門雑誌などで漢方薬を広めています。

谷津吉美プロは静岡新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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