コラム
生薬の話「 牡蛎 (ぼれい)」その2…牡蛎を含む漢方薬
2022年6月21日
桂枝加竜骨牡蠣湯は、桂枝湯に竜骨・牡蠣の2味が加わったものです。竜骨と牡蠣は相性の良い組み合わせで一緒に用いる場合があります。竜骨は古代の哺乳動物の骨の化石です。牡蠣と同様炭酸カルシウムを含むほか多量のリン酸カルシウムを含み、固気に働きます。 鎮静作用があり、気分のふわふわしたものを落ち着かせます。 また、微量のアミノ酸や各種元素を含み収斂作用があり、汗を止める働きがあります。 桂枝加竜骨牡蠣湯を用いる人は、体力・精力が消耗して疲れやすく下腹部は突っ張り、臍上動悸が認められるという特徴があります。竜骨・牡蠣は、この顕著な臍上動悸を鎮め、のぼせてフラフラしたり驚いて発汗したりするものを治します。精神不安や神経症、不眠症、また脱毛症や不妊症の治療によく用います。
桂枝加竜骨牡蠣湯は虚証の人に用いますが、これに対して実証で下腹部の緊張ではなく心下部に緊張がある場合は柴胡加竜骨牡蠣湯を用います。柴胡加竜骨牡蠣は 11 味から成り生薬の種類は多いです。小柴胡湯に近い性質があり胸脇苦満や心を治します。また、竜骨・牡蠣を含むいくつかの生薬の働きにより動悸や頭驚を治します。実証の高血圧症、神経症などに用いる薬ですが、物音や光に敏感でビクッと驚き、動悸する人に良く効果があります。
柴胡加竜骨牡蠣湯と大小の関係にあるのが柴胡桂枝乾姜湯です。柴胡加竜骨牡蠣湯は体力の充実している人に用いますが、 柴胡桂枝乾姜湯は外見がいかにも疲れている人に用い柴胡剤としては最も虚証の漢方薬です。 柴胡桂枝乾姜湯に竜骨は含まれず牡蠣のみですが、臍上動悸はほとんどの場合に認められます。柴胡桂枝乾姜湯は神経症以外に、胃潰瘍、皮膚病、冷え症、頭痛など幅広く使用する機会の多い漢方薬です。
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