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谷津吉美

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谷津吉美(やつよしみ) / 薬剤師

有限会社むつごろう薬局

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コラム

漢方を音楽にする

2018年12月6日 公開 / 2021年3月1日更新

テーマ:漢方の研究

コラムカテゴリ:医療・病院

今回のお話は、作曲家、音育家、京都精華大学教授である小松正史さんです。
私の希望する漢方音楽を作り上げた方です。とても人間性に優れている小松さんのこの曲に対する思いを聞いてください。




 漢方は口から飲むものであり、音楽は耳から入るものであります。どちらも、人の心身に深く影響を与え、明日への活力を促す役目を担っています。
 私は小さなときから「音を聞く」ことが大好きでした。遠くから迫る雷の音をじっと聴き入ったり、隣家の機織りの機械音に耳を傾けていました。音が身体に染み通る瞬間に、得も言われぬ悦楽を感じていたものです。
 音を聞くことの楽しさを、多くの方と分かち合ってみたい。そんな想いで40年以上にわたる音活動を続けています。代表例を2つ紹介します。ひとつは、京都タワー展望室や京都国際マンガミュージアムなどの公共空間の居心地をよくするために、専用の環境音楽(BGM)を制作しています。もうひとつは、老化防止や脳の活性化を目的に開発した「耳トレ!」。耳の聞こえをよくすることを目的にした音源を制作し、書籍執筆やセミナーを展開しています。
 漢方薬と出会ったのは、むつごろう薬局の鈴木さんがきっかけでした。箱根のポーラ美術館で流れていた私の音楽を偶然耳にされ、その音楽に心を動かされたとの連絡があったのです。その後、直接薬局に伺う機会をつくりました。鈴木さんと話しをするうちに、「漢方薬による音楽をつくろう!」という流れになりました。
 私はこれまで、顆粒状の漢方薬を何度か飲んだことはありました。薬局でいただいたのは煎じた漢方薬でした。その味は衝撃的でした。身体にすっと溶け込むような「やさしさとやわらかさ」があるのです。漢方薬の広大無辺な魅力と奥深さに強く共鳴し、「漢方を音楽にする」プロジェクトが進行したのです。
 漢方を音楽にする目的は、漢方薬の効能を音楽の力でさらに高め、薬が効くための心理的な環境を質的に向上させることです。音楽は漢方薬と違い、目には見えません。ところが、耳を介して脳に取り込まれます。つまり、心に直接作用を促すのです。明るい曲なら明るい気持ちに、暗い曲なら暗い気持ちに…。音楽心理学では、これを「同質の原理」といいます。聴き手の心理状態に近い音の刺激を与えると、安心感や気持ちの快復につながる、という理論です。
 音や音楽は、無意識のうちに人に影響を与えます。耳はずっと開いているからです。人工音の多い場所に居続けると、なぜか疲れてくる。ぎゃくに、自然豊かな場所に出かけると目はもちろん、耳も安らいできます。自然音には、人の耳(正確にいえば脳)を休める効果があるからです。





 漢方薬は天然素材である生薬を利用しています。即効性は弱いけれども、人間の生命力(自己治癒力)に働きかけ、根本的な体質改善に資するといわれています。音楽もこれに似た効果があります。場に相応しい音楽であればあるほど、(個人差はあるものの)その空間にいる方々の心身によい作用をもたらせる。こうした事実を、これまでに携わってきた数々のフィールドから発見してきました。この手法を漢方薬の現場にも応用する、というのが漢方を音楽にするやり方なのです。
 漢方薬にマッチする音源を制作するために、(1)リズムの力で推進力と躍動感を表現、(2)心に響くシンプルなメロディ、(3)多様な楽器を使ってのアドリブ演奏、(4)漢方薬にゆかりのある環境音を導入、の4項目を意識しました。
 

鈴木さんとはじめて出会ったのが2018年6月初頭。それから互いの想いを温めつつ、作曲・編曲・レコーディングを一気に進めました。マスタリング(最終の音質調整)を終えたのが、9月末。3ヶ月余りの短期間で、幸運にも日の目を見ることになりました。タイトルは、ズバリ『漢方音楽』! 漢方薬を服用されるときはもちろん、漢方薬を煎じるときや、服用後の穏やかなひとときなど、適宜お使いいただける内容となっています。
 制作中最も苦労したことは、漢方薬をイメージできる音づくり、の一点に尽きます。安直な中国風の民族楽器を取り入れても逆効果。試行錯誤を続けて思いついたのが、漢方薬を想像できる「サウンドスケープ(音風景)」を取り入れること。漢方を煎じる音、生薬配合音、私が録りためてきた自然音(小川、鳥、虫、波など)を、まさに生薬を配合するかの如く、適材適所に散りばめました。使用楽器は意外にも西洋楽器。ピアノ、チェロ、ベース、マリンバ、ギター、パーカッション…。さて、これらのブレンド具合は如何に!? 漢方薬とセットでお使いいただければ、きっと心身の滋養増強につながることでしょう。「耳から漢方プロジェクト」に興味をいただけましたら、『漢方音楽』をご一聴いただければ幸いです。
 

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