ある日琵琶湖ホールで第九のコンサートを聴きに行くことがあり、その合唱の素晴らしさに感動しました。
普通ならそこで終わるはずが、何を思ったか「私はここで聴くのじゃなくてあのステージで歌いたい！」と思った私。歌に関しては小学校でのトラウマがあり、私の人生の中に封印していました。なので学生時代は授業中は口パク、子どもには子守唄も聞かせず、すべてテープレコーダーで済ませて育てました。

さて、まず何から始める？声楽の先生を探す。
近所の音楽教室を探して聞いても「声楽は専攻してないので。」この歳で近所で習うのもちょっと気が引けるしなあ。
カルチャーセンターは？毎週通えないし。曜日が合わない。それに『第九合唱』だけっていうのも変だし。
そうこうしていると、ママ友の息子さんが、ウイーンから戻って来て声楽の教室を開くって。ちょっと顔を見がてらお家に訪問させていただきました。
それが姜先生との久し振りの再会でした。最後に会ったのは高校の卒業式かな。長身のきれいな声の男の子でした。
で、とにかく何年かかってもいいので『第九』が歌いたい。との無理なお願いを聞いてもらいレッスンが開始です。

でも声楽の練習って立ったままで大きな声を出して、腹式呼吸なんかするのかと思いきや。
えっ？座ったままで？声で歌わない？
鼻歌みたいにして響かせる。身体に力を入れない。
コーラスで歌っている友達から聞いていた話と全く違ってる。時にはボールの上に座っての発声練習、またはゴム紐を引っ張りながら、または椅子の背にもたれながら全身の力を抜いての練習。これでいいの？と半信半疑。すごいリラックスの中で行う発声練習で、なんと私の音域が段々と広くなってきたのです。
また、どういう風に発声をするかの例えが面白くて、毎回それが楽しいレッスンです。時々変顔も見られます。歌う時って顔の表情も必要なんです。90分のレッスンがあっという間終わります。

その後のお楽しみはウイーンの紅茶タイムです。私は紅茶が大好きなのでレッスンの後の至福のひと時です。その時にオバちゃんの愚痴を聞いてもらったり、主婦の井戸端会議会話に付き合ってもらっています。これはかなりご迷惑ですね。それでもいつもにこにこと話を聞いてもらって、私は日頃のストレスを発散。また、次に向けて進んでいきます。

で、『第九』はどうなったかと言いますと・・・その年にたまたま抽選で当たり、11カ月後琵琶湖ホールのステージに立つことができました。
ステージから見る客席は気持ちがよかったです。ほぼ半年でドイツ語の発音、歌を仕上げていただいた姜先生に感謝です。
そして、私の人生にまた一つ『歌う』楽しみが増えました。とにかく先ずは始めてみましょう！