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澤根慎児

働く人と関わる全ての人を応援するカウンセラー

澤根慎児(さわねしんじ)

ヒトらぼ

コラム

やるせない思い、失われる想像力

人に迷惑をかけないこと、多かれ少なかれ、生きてくる中で学ぶことだと思います。中には厳しく躾けられた方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際には、迷惑をかけないという言葉はなかなか曖昧なもので、その理由は、迷惑かどうかを判断するのは相手だから、と考えることもできます。迷惑をかけているわけではないから、を枕詞に自分のやりたいことをする方も多いように感じますし、その迷惑の範囲をどこまで想定しているのだろう、という点も、考えると興味深いところです。

この迷惑、という観点を見ても、相手の立場、状況など踏まえて想像力を働かせないと、実は辿り付かないものです。多くの場合、視覚的に判断出来る範囲で、そのエリアを決めて、迷惑になりそうかどうかを考えているようです。その気の使い方も、多くの方は相手との心理的距離によって変えているようです。

こういった場合、人の気持ちを理解する、あるいは想像する、ということが前提として必要なわけですが、最近はその部分が特に薄れているように感じます。その一方で、論理性、合理性が強くなっているのか、といわれるとそうと思えず、実際には、関心の範囲が狭くなってきている、ということではないかと感じています。

とある、カフェで起きた出来事です。ご家族連れで入店してきた際に、段差があったことでお婆さんが転倒してしまいました。もともと怪我をされていたようで、その怪我の部分をさらに打ってしまいました。その時のご家族の反応、冷めた感じで「ちゃんと下見てくださいね」という一言。ご家族にも普段からいろいろな思いがあるのかもしれませんし、介護やお世話を含めて大変なのかもしれません。もしかすると、今の精一杯なのかもしれません。それでも、ご高齢の方の身体が衰えていくこと、怪我をしている際の不自由さ、などを考えた(想像した)ときに、いろいろな選択肢があったと考えられます。少なくとも、この時、ご本人、ご家族、そしてそのお店にいらっしゃった方、誰も心地よい気持ちにはなっていないと思うのです。

このご家族にとっては、自分たちの行動を滞りなく進めることが大切なのかもしれません。少なくともそうならざるをえない生き方をしてきたとも言えるでしょう。こういった日常の中に見える出来事から、最近報道され続けているような、多くの事件が矢継ぎ早に起きています。中には、想像もしなかったようなことが起きていることもあります。

何かしらの事情で人が追い込まれていく、その結果、余裕もなくなり想像力を失っていく、そして、人を気遣えなくなり、狭い視野の中で選択肢を失っていく、それが今の社会のひとつの形でもあると言えるように思うのです。

自分を知る、相手を理解しようとする、人を気遣う、そういった力をもう一度、取り戻せるよう、想像力を取り戻せるよう、変化が必要なのだと思うのです。様々な出来事、そして、幅広い世代のカウンセリングを通して、失った物が大きすぎる、そんなふうに感じています。


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