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大竹光明

人事労務コンサルティングのプロ

大竹光明(おおたけみつあき)

社会保険労務士法人大竹事務所

コラム

「仕事中に転倒!メガネが壊れてしまった!~労災補償の範囲~」

労働保険

2012年2月6日

~総務事務Aさん(25歳女性)の受難~


社内でパソコンのケーブルにつまづき、窓ガラスに激突!
幸いにも窓からの転落は免れはしたが、割れたガラスでおでこから大流血!!
社内は騒然となり、彼女は救急車で運ばれ、結果10針も縫う大ケガとなった。
ケガは全治1ヵ月の診断だったが、彼女が何よりも気に入っていた、去年のロンドン旅行のときにオーダーメイドで買ったメガネが再起不能に…。

そもそも、彼女がつまづいた「パソコンのケーブル」。
これは、彼女も含めて多くの社員が、部長に「危険ですから早くタイルカーペットの下に埋めてくださいよ」と指摘していた事だった。
けれど、2ヵ月もの間、会社は放置していたのだ。

復帰した彼女の第一声は、「私のメガネを弁償してください!!」


このようなケースで、会社はどの様に対応すれば良いのでしょうか。

まず、ケガに対する補償。
会社には通常「労災保険」があります。
Aさんは、「仕事中」に「仕事に関係すること」でケガをした、という要件がそろっていますので、労災保険で彼女のおでこのケガに対する「治療費(=療養補償給付)」、そして治療のために会社を休んだら「給与補償(=休業補償給付)」などが受けられます。

そして、メガネです。彼女がとっても気に入っていた愛すべきメガネへの補償です。
その前に・・・。
そもそも、「物損」に対しての補償って「労災保険」にはあるのでしょうか?

答えは、「原則としてありません」です。
あくまでも「労災保険」は、労働者自身のケガなどに対してだけ補償される保険だからです。
労災保険には他にも、介護にかかる費用や、遺族に対する補償などはありますが、モノが破損したことに対しては、民間の損害保険の様には保険が出ないのです。


けれど、労災からメガネの費用が出ることもあるのです。

労災保険には「社会復帰促進等事業」というものがあります。
この事業は、労災病院の運営や未払い賃金の立替払い、義肢装具等の支給などを行っています。

この事業の一環で、メガネの費用が支給されます。
但し、労災事故によって、目に障害を負った場合に限られます。

Aさんのケースでは、両眼に障害を負う程度ではありませんでしたので、労災として支給されるものではありません。

「じゃあ、メガネは弁償してもらえないの?会社のせいで壊れたのに!」
そうですよね・・・。そうなりますよね。
となると、あとは民事上の責任が、会社には問われることとなります。

会社は「安全配慮義務」というものを、社員に対して負っています。
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」(労働契約法第5条)

つまり、極端な話ですが裁判になった場合などは、社内を安全にしていなかった会社に落ち度があると判断されるかもしれません。パソコンのケーブルを会社がきちんと処理していれば、Aさんもつまづくことはなかったのですから。
だから、今回の場合はもめごとを大きくする前に、ケガをした彼女に対して、きちんと謝罪をし、メガネ代の弁償をすることが一つの良い解決策だと言えます。

会社によっては、個別の弁償などではなく、「見舞金」として渡されることもあります。

ケガをされてその上、自分の大切なものを失ってしまった方に対しては、何よりもその精神面で相当に配慮をしてあげなければなりません。それが、無用のトラブルを防ぐことにもなります。
会社の悪い面は認めて、そしてさらに誠意(物損への弁償や、見舞金)をみせることが必要ではないでしょうか。門前払いなどはもっての外ですよ!

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