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小堀將三

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小堀將三(こぼりしょうぞう) / マンション管理士

マンション管理士事務所JU

コラム

管理組合における自治会費の支払い実態について

2022年11月7日

テーマ:管理組合

コラムカテゴリ:住宅・建物

 マンションみらい価値研究所が、管理組合における自治会費の支払い実態調査の結果レポートを公表しています。
 自治会費の徴収を管理費等とともに自動引落しを行っているマンションは高経年マンションで多く、最近分譲されたマンションでは非常に少ないと思っていましたが、このレポートを見るかぎりでは、築年数の若いマンションの方が割合は高くなっています。また、管理費に含んで徴収しているマンションもかなり存在しています。竣工年別で見てみますと、管理費等とともに自動引落しを行っている管理組合数プラス管理費に含んで徴収している管理組合の割合は、以下のとおりです。
2017年以降築マンション 47.0% ( 81管理組合)
2012年以降築マンション 63.6% (192管理組合)
2007年以降築マンション 61.7% (263管理組合)
2002年以降築マンション 71.1% (534管理組合)
1997年以降築マンション 77.4% (643管理組合)
1992年以降築マンション 67.2% (354管理組合)
1987年以降築マンション 52.9% (263管理組合)
1982年以降築マンション 41.5% ( 85管理組合)
1977年以降築マンション 48.4% ( 46管理組合)
1972年以降築マンション 58.3% ( 28管理組合)
1966年以降築マンション 44.0% ( 11管理組合)
全体            64.5%(2505管理組合:不明5含む)

 この数字は大和ライフネクスト(大手管理会社)が管理している物件で調査した数字ですので、他の管理会社が管理している物件の数字を含めますと、かなりの数の管理組合様で、自治会費を管理費に含めて徴収している、若しくは管理費等とともに自動引落ししていることになります。
 平成17年4月の最高裁判例やマンション標準管理規約コメントにより、管理組合が自治会費を徴収することに否定的な解釈がなされるようなった経緯から、最近、自治会費の徴収の是非とともに、自治会の脱退について検討される管理組合様が増えてきています。
 私の顧問先の管理組合様では、管理組合役員のなかで徴収担当理事を決めて現金で集金されており、1回の訪問で集金できれば良いのですが、何度も足を運んで徴収しなければならないことが多く、この管理組合様でも組合員さんの高齢化が進んでいますので、この集金作業は高齢の役員さんにとって肉体的に重労働となってしまっています。また、自治会に加入するメリットが無くなってきていることから、現在、理事会において自治会の脱退を真剣に検討し始めています。
 マンションみらい価値研究所のレポート結果を見ても、このような自治会に関する問題に直しておられる管理組合様はかなり多いと推測されます。実際、私のところに以下の内容の相談がメールで寄せられてきています。

[お問い合せ内容]
貴事務所ホームページの「管理費と自治会費との区分経理」を拝見して問い合わせさせていただきました。私の住んでいるマンションでも自治会一括加入をやめて個々の判断となりました。あわせていままで管理費等と同じように口座引落されていた自治会費(年1回)の徴収もコンプライアンス上好ましくないのでやめるといわれています。自治会退会の方はよいのですが、継続した方から「なぜいままでどおりできないのか」という疑問の声があがり、少々にぎやかな状況となっています。そこで教えていただきたいのですが、現在、自治会費の徴収代行を実施してらっしゃるマンションの管理組合殿では、「区分経理」や「代行徴収に係る負担」についてどのように「整理」されていらっしゃるのでしょうか。

 この相談をいただきました管理組合様では、「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」にある記述内容を踏またうえで、管理会社に今までどおり代行収納を行ってもらえるようにしたいと模索されているそうです。

※マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針
「一方、自治会及び町内会等(以下「自治会」という。)は、管理組合と異なり、各居住者が各自の判断で加入するものであることに留意するとともに、特に管理費の使途については、マンシ ョンの管理と自治会活動の範囲・相互関係を整理し、管理費と自治会費の徴収、支出を分けて適切に運用する必要がある。なお、このように適切な峻別や、代行徴収に係る負担の整理が行われるのであれば、自治会費の徴収を代行することや、防災や美化などのマンションの管理業務を自治会が行う活動と連携して行うことも差し支えない。」

 原則的には、自治会の仕事は管理組合の業務ではありませんので、私の顧問先のように、管理組合の役員様が役員任務で自治会費の徴収を行うべきではありませんし、自治会の仕事を引き受けるべきでもありません。問題を1つずつ整理しながら、本来あるべき姿の理事会と自治会の関係性を構築していただければと思います。

 マンションみらい価値研究所レポート
 「管理組合における自治会費の支払い実態」

 コラム:管理費と自治会費との区分経理

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