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小堀將三

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小堀將三(こぼりしょうぞう) / マンション管理士

マンション管理士事務所JU

コラム

マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針

2021年10月8日

テーマ:管理規約・法律関連

コラムカテゴリ:住宅・建物

 9月28日に、国土交通省から「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」が公表されました。理事会等で管理組合様にこの方針内容を周知するために、内容を箇条書きに整理してみました。箇条書きにして理解していただくために、語尾の箇所を断定した言い回しになっており、少しニュアンスが違っている箇所がありますが、その件につきましては、ご了承いただきたいと思います。内容を正確に確認したいと思われる方は、以下の国土交通省のホームページをご覧ください。
 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001425448.pdf
以下が、整理して箇条書きにしたもので、太字箇所は管理組合様に特に関連した箇所となっています。



一 マンションの管理の適正化の推進に関する基本的な事項
 管理組合、国、地方公共団体、マンション管理士、マンション管理業者等は、各役割を認識して、適正化の推進のためにお互いに連携すること。
1 管理組合及び区分所有者の役割  
 ・管理の主体は管理組合であり、この指針の内容をよく理解して適正に管理すること。  
 ・建物を長く維持するために、専門家の支援を得て、自治体の政策に協力すること。  
 ・区分所有者等は、管理組合の運営に関心を持って積極的に参加すること。

2 国の役割
 ・マンションの管理状況が市場評価される環境整備のための施策を講じること。
 ・マンション管理士制度とマンション管理業者の登録制度を適切に運用すること。
 ・マンションの実態調査を実施すること。
 ・マンション標準管理規約の適時適切な見直しを行い周知すること。
 ・マンション管理士等を育成して、自治体の取組を支援すること。
 ・マンション管理適正化推進センターと連携して必要な情報提供等を行うこと。
3 地方公共団体の役割
 ・各自治体は、区域内のマンションの実態を把握すること。
 ・マンション管理適正化推進計画を作成して、施策の方向性等を明らかにすること。
 ・マンションの管理状況が市場で評価される環境整備を図ること。
 ・必要がある場合には、関係者に調査の協力を求めること。
 ・マンション管理士等の協力を得て、マンションに係る相談体制の充実を図ること。
 ・管理が不適正なマンションには、積極的に専門家を派遣すること。
4 マンション管理士及びマンション管理業者等の役割
 ・マンション管理士は、管理組合等の相談に応じるなど誠実に業務を行うこと。
 ・マンション管理業者は、管理委託業務を誠実に行うこと。
 ・マンション管理士とマンション管理業者等は、自治体からの求めには協力すること。
 ・分譲会社は、管理規約、長期修繕計画、修繕積立金を適切に定めること。
 ・分譲会社は、購入者に上記内容を理解してもらえるよう説明すること。

二 マンションの管理の適正化に関する目標の設定に関する事項
 適切な管理のためには、長期修繕計画の作成と修繕積立金の積立が重要であり、自治体は、25年以上の長期修繕計画に基づいた修繕積立金を設定している管理組合の割合を、国が掲げる目標を参考にして、区域内のマンションの状況を把握して目標を設定すること。

三 管理組合によるマンションの管理の適正化の推進に関する基本的な指針に関する事項  
 このマンション管理適正化指針は、管理組合が適正にマンションの管理を行ってもらうための基本的な考え方である。
1 管理組合によるマンションの管理の適正化の基本的方向  
 ・マンションの管理の主体は、区分所有者で構成される管理組合である。  
 ・区分所有者等の意見を十分に反映して適正に運営すること。  
 ・健全な会計を確保すること。  
 ・管理事務を委託する場合は、委託内容を十分に検討して契約すること。  
 ・組合員は、管理組合の運営に関心を持って積極的に参加すること。  
 ・問題があれば、マンション管理士等の支援を得ながら対応すること。  
 ・第三者役員等を導入する場合には、監視・監督を強化すること。  
2 マンションの管理の適正化のために管理組合が留意すべき事項
<管理組合の運営>  
 ・管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化により、開かれたものとすること。  
 ・理事長は、組合員が適切に判断できるよう、総会前に必要な書類を準備すること。  
 ・理事長は、法令を遵守して、区分所有者等の為に誠実にその職務を執行すること。  
<管理規約>  
 ・組合員の意向を汲んだ適切な管理規約を作成し、必要に応じて改正すること。  
 ・マンションの実態に即した使用細則等のルールを定めること。  
 ・規約等の違反者には、勧告・指示だけではなく、法的措置もとること。  
<共用部分の範囲及び管理費用の明確化>  
 ・共用部分の範囲と管理費用を明確にして、未然にトラブルを防止すること。  
 ・専有部分、専用使用部分、共用部分との区別を、費用負担とともに明確にすること。  
<管理組合の経理>  
 ・管理費と修繕積立金等は、必要な費用を徴収すること。  
 ・費用項目を帳簿上においても明確に区分して経理し、適正に管理すること。  
 ・帳票類の閲覧請求があった場合には、速やかに開示し透明性を確保すること。  
<長期修繕計画の作成及び見直し等>  
 ・資産価値の維持向上のために、適時適切な維持修繕を行うこと。  
 ・長期修繕計画を作成し、必要な修繕積立金を積み立てておくこと。  
 ・適正な修繕内容、資金計画を明確に定めて、組合員に十分周知させること。  
<発注等の適正化>  
 ・事業者の選定の際の意思決定の透明性を確保し、利益相反等に注意すること。  
 ・第三者役員等を導入する場合は、組合員に信頼される発注ルールを整備すること。  
<良好な居住環境の維持及び向上>  
 ・防災計画の作成や火災保険の加入等により、防災・減災や防犯に取り組むこと。  
 ・日常的トラブルの防止のためにも、コミュニティの形成に積極的に取り組むこと。  
 ・自治会等は、各居住者が各自の判断で加入するものであることに留意すること。  
 ・自治会費の徴収及び支出は、管理費と区分して適切に運用すること。  
<その他配慮すべき事項>  
 ・団地の場合は、各棟固有の事情も踏まえて、全棟の連携をとって管理すること。  
 ・複合用途型の場合は、住宅部と店舗部との利害調整を図って費用負担を決めること。  
 ・管理組合は個人情報取扱事業者としての義務があることに十分に留意すること。
3 マンションの管理の適正化のためにマンションの区分所有者等が留意すべき事項  
 ・マンション購入者は、マンションの管理の重要性を十分に認識すること。  
 ・マンション購入者は、管理規約等、長期修繕計画の内容を十分に理解しておくこと。  
 ・マンション購入者には、上記の情報を提供すること。  
 ・組合員は、進んで集会その他の管理組合の管理運営に参加すること。  
 ・管理規約等のルールや集会の決議等を遵守すること。  
 ・賃借人等の占有者は、使用方法については組合員と同一の義務を負うこと。
4 マンションの管理の適正化のための管理委託に関する事項  
 ・標準管理委託契約書を参考にし、委託内容を十分に検討して契約すること。  
 ・委託先選定の際には、事前に必要資料を収集して、組合員に情報を公開すること。  
 ・委託先を選定したときは、説明会を開催して組合員に契約内容を周知すること。


四 マンションがその建設後相当の期間が経過した場合その他の場合において当該マンションの建替えその他の措置に向けたマンションの区分所有者等の合意形成  の促進に関する事項
 建替え等を含めて、今後どのような方向性をとるべきかを、組合員間の意向を調整して、合意形成を図っておくことが重要となる。組合員の連絡先等を把握しておき、必要に応じて外部の専門家を活用して、適切に集会を開催して検討を重ね、長期修繕計画において建替え等の時期を明記しておくことが重要である。

五 マンションの管理の適正化に関する啓発及び知識の普及に関する基本的な事項
 国と自治体は、マンションの実態の調査・把握し、必要な情報提供等の充実を図るとともに関連団体等と連携し、管理組合等の相談に応じられるネットワークを整備する。自治体においては、必要に応じてマンション管理士などの協力を得て、セミナーの開催や相談体制の充実を図る。マンション管理適正化推進センターは、関係機関及び関係団体との連携を密にして、管理適正化業務を適正かつ確実に実施し、国、自治体、関係機関等は、マンション購入者に対しても、管理計画認定制度の周知等を通じて、マンションの管理の重要性を認識させるように取り組む。

六 マンション管理適正化推進計画の策定に関する基本的な事項
 自治体は、各地域で異なるマンションの状況等を踏まえて、マンションの管理の適正化の推進に関する施策の担当部局と福祉関連部局、防災関連部局、まちづくり関連部局、空き家対策関連部局、地方住宅供給公社等と連携し、マンション管理適正化推進計画を策定する。
 1 マンションの管理の適正化に関する目標
 ・25年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金額を設定している管理組合の割合等の明確な目標を設定する。
2 マンションの管理の状況を把握するために講じる措置に関する事項
 ・マンションの管理の実態について把握する。(規模や築年数等に絞ることも可)
 ・登記情報等に基づいてマンションの所在地を把握する。
 ・管理組合へのアンケート調査等の実態調査や条例による届出制度を実施する。
3 マンションの管理の適正化の推進を図るための施策に関する事項
 ・管理セミナーの開催、相談窓口の設置、マンション管理士等の派遣を実施する。
 ・マンション管理士等、管理会社、管理組合の代表者等で協議会を設置する。
 ・必要に応じ、地方住宅供給公社による修繕その他の管理に関する事業を定める。
4 管理組合によるマンションの管理の適正化に関する指針(都道府県等マンション管理適正化指針 )に関する事項
 ・都道府県等マンション管理適正化指針は、管理計画の認定の基準になるものである。
 ・地域の実情ごとに考慮して、管理に求められる観点や水準を定める。
5 マンションの管理の適正化に関する啓発及び知識の普及に関する事項
 ・管理セミナーの開催、相談窓口の設置、専門家の派遣などの取組を広く周知する。
6 計画期間
 ・築年数の推移や人口動態等の将来予測を踏まえて、適切な計画期間を設定する。
 ・住生活基本計画の見直し期間と整合を図る。
7 その他マンションの管理の適正化の推進に関し必要な事項
 ・管理計画認定制度の運用に、地域の実情に応じて独自の施策を講じる必要がある。

七 その他マンションの管理の適正化の推進に関する重要事項
1 マンション管理士制度の一層の普及促進
 ・国、自治体及びマンション管理適正化推進センターは、マンション管理士に関する
  情報提供に努めること。
 ・管理組合は、必要に応じて、マンション管理士等の知見を活用すること。
2 管理計画認定制度の適切な運用
 ・自治体は、管理計画認定制度を積極的に周知すること。
 ・新築分譲マンションを対象とした管理計画を予備的に認定する施策を講じること。
 ・自治体が認定に係る調査に関する事務を委託する際には、適切に監督を行うこと。
3 都道府県と市町村との連携
 ・市区町村と連携を図り、必要に応じて市区の区域内を含めて施策を講じていくこと。
 ・道府県と町村は、連絡体制を確立し密に連携をとること。
 ・町村が事務を行う場合は、引継ぎを確実に受け、その旨を公示等で周知すること。
4 修繕等が適切に行われていないマンションに対する措置
 ・修繕等が適切に行わずに老朽化したマンションをそのまま放置した場合には、
  自治体が改善の命令等の強制力を伴う措置を講じる。
5 修繕工事及び設計コンサルタントの業務の適正化
 ・国は、管理組合に対して様々な工事発注の方法を周知する。
 ・国は、管理組合に対して修繕工事の実態に関する情報を発信する。
 ・国は、関係機関と連携して相談体制を強化し、設計コンサルタントの業務の適正化
  を図る。
6 ICT化の推進
 ・ICTを活用したマンションの管理の適正化を推進する。
 ・重要事項説明時や契約成立時の書面交付を、ITを活用できることを周知する。

別紙一  
自治体が管理組合に助言、指導及び勧告を行う際の判断の基準の目安は、以下の事項が遵守されていない場合である。
1 管理組合の運営
 ・管理者等(理事長等)を定めること。
 ・集会を年に1回以上開催すること。
2 管理規約
 ・管理規約を作成し、必要に応じて改正を行うこと。
3 管理組合の経理
 ・管理費と修繕積立金を明確に区分経理して、適正に管理すること。
4 長期修繕計画の作成及び見直し等
 ・適時適切な維持修繕を行うため、修繕積立金を積み立てておくこと。

別紙二  
管理計画の認定の基準は、以下の基準のいずれにも適合していることである。  
1 管理組合の運営  
 ・管理者等(理事長等)が定められていること。  
 ・監事が選任されていること。  
 ・集会が年に1回以上開催されていること。  
2 管理規約  
 ・管理規約が作成されていること。  
 ・災害等の緊急時や管理上必要な時の専有部立ち入りについて定められていること。  
 ・修繕等の履歴情報の管理等について定められていること。  
 ・管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付について定められていること。  
3 管理組合の経理  
 ・管理費と修繕積立金とが明確に区分経理されていること。  
 ・修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと。  
 ・年度末において、修繕積立金の3ヶ月以上の滞納額が全体の一割以内であること。  
4 長期修繕計画の作成及び見直し等  
 ・長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成されていること。  
 ・長期修繕計画によって算出された修繕積立金額が集会で決議されていること。  
 ・長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること。  
 ・計画期間が30年以上で、期間内に大規模修繕工事が2回以上設定されていること。  
 ・長期修繕計画において将来の一時的な修繕積立金の徴収が予定されていないこと。  
 ・修繕積立金の総額から算出された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと。  
 ・最終年度において、借入金の残高のない長期修繕計画となっていること。  
5 その他  
 ・組合員名簿、居住者名簿を備えており、1年に1回以上は見直しを行っていること。  
 ・都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること。

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小堀將三

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