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小堀將三

充実したマンションライフを支えるマンション管理士

小堀將三(こぼりしょうぞう) / マンション管理士

マンション管理士事務所JU

コラム

置き配について

2021年2月20日 公開 / 2021年2月27日更新

テーマ:管理組合

コラムカテゴリ:住宅・建物

 第4回「マンション管理の新制度の施行に関する検討会」で、「総会・理事会のデジタル化」について議論され、マンション標準管理規約(単棟型)の改正案と「コメント」の改正案が提案されたことをお伝えしましたが、「総会・理事会のデジタル化」以外にも、幾つかのコメント改正案がありました。そのうちの一つに「置き配」に関する記述があります。
 マンション標準管理規約第18条(使用細則)に関するコメントに、この「置き配」について次のように追加されていました。

<コメント④>
共用部分への置き配を認める場合は、長期間の放置や大量・乱雑な放置等により避難の支障とならないよう留意する必要がある。

 そして、このコメント内容について検討した第4回検討会の議事録を見てみますと、各委員から次のような意見がなされたようです。
・ 共用部分に物を置いてはいけないことは大原則であり、標準管理規約においてあえて置き配について言及する必要はないのではないか。
・ コロナ禍におけるマンション内での生活では、置き配に頼りがちな現状もある。
・ 置き配は、宅配ボックスが設置されていない場合等、やむを得ず利用せざるを得ない場合に限るなど例外的な取扱いであることが伝わる表現としてはどうか。
・ 生活様式の変化に対応していくことも管理組合の役割と言える。なお、置き配を認める場合、厳格なルールを定める必要がある。例えば、生鮮食品の置き配は認めない、引取時間を定める等、詳細なルールを定めればよいのではないか。
・ コロナ禍の例外として、今後1~2年の暫定的な対応とすることも考えられる。
 「置き配」という配達手段が考えられ実施されはじめたのは、配送業者のドライバーの人手不足のなかでの再配達を削減するためでした。しかし、消費者の「置き配」利用の増加とともに、「置き配」の荷物の盗難や不在が知れしまう等の犯罪も増加しています。そのため、国土交通省は経済産業省と連携して「置き配検討会」を設置し、2019年3月から検討してきた内容をまとめた「置き配の現状と実施に向けたポイント」を2020年3月に発表しています。この頃は丁度、新型コロナウイルス感染症が拡大し始め、学校等には休業要請を行い、企業にはテレワークや時差出勤を呼びかけた頃で、家族の皆さんが家庭にいる時間が長くなり、結果的に宅配の利用頻度が大幅にアップし、結果「置き配」も増加しはじめた時期です。
 この頃から、マンションにおいても、共用廊下の玄関前に「置き配」の荷物が見られることが多くなり、管理組合内で問題視されるようになりました。そこで、冒頭のようなマンション標準管理規約のコメント案が検討されることとなりました。
 先程の「置き配検討会」の構成員を見てみますと、宅配関連業者、宅配BOX業者が中心で、マンションに関わる方はほとんどいませんでしたが、それでも、マンションに関わる問題点等が幾つか指摘されており、最終的に発表された「置き配の現状と実施に向けたポイント」では、次のような内容が記述されています。

*置き配の運用方法(置き配ができる場所、一定期間放置された荷物等の扱い、オートロックの解除システムなど)について事前に決めておくことが望ましい。
*細則等で「置き配」が禁止されていなければ、現状においては「置き配」は許容されると思うが、今後の「置き配」の増加を措定して、細則等に規定するか、総会で合意を図っておくことが望ましい。
*消防法との関連で、避難の支障になる荷物が放置されないよう適切に管理する必要があるが、避難の支障とならない小さな物を暫定的に置く場合は、長期放置等しなければ、社会通念上、法的問題にはならないと考えられる。

 原則的には、共用部分である廊下や階段での「置き配」は認められないと思います。もし許容する場合には、「置き配」の運用方法を決めなければなりませんが、許可、不許可の線引きが非常に難しいと思われますし、「置き配」のルール違反の判断が人によって違うこともありえます。
 ですから、基本的な事項のみを細則等で決めておくか、総会で決議しておき、その他の細かなことは、問題が生じた都度、理事会で検討したうえで掲示板等で注意喚起をすれば良いのではないでしょうか。
 むしろ、防犯対策をしっかりと検討しておくことの方が重要だと思われます。オートロックでないマンションでは、宅配BOXの設置、「OKIPPA」等の利用、防犯カメラの監視範囲などについて、是非検討していただきたいと思います。
 またオートロックのマンションでは、配達先がお留守の場合に、配達員が適当に部屋番号を押して在宅の方にオートロックを解除してもらうケースがあります。その方は良かれと思って解除されたと思いますが、本当に配達員かどうかわかりませんので、宅配業者であることを信用してオートロックを解除することは決して行わないで下さい。このことは、是非、チラシを全戸配布するなどして住民の皆様に啓蒙して下さい。
 今、様々なIT関連会社から安全にオートロックを解除するサービスの提案がなされていますので、ご自分のマンションに合ったサービスの導入を検討していただければと思います。

<参考資料>
  置き配の現状と実施に向けたポイント
  OKIPPA
  kit HOME ENTRANCE

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小堀將三

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