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小堀將三

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小堀將三(こぼりしょうぞう) / マンション管理士

マンション管理士事務所JU

コラム

マンションベランダからの子供の転落事故 第3回

2018年5月14日

テーマ:その他

コラムカテゴリ:住宅・建物


 子供のベランダからの転落事故のほとんどが、何らかの足がかりになるものを使って「手すり」を乗り越えたことによるものです。今回はこの「手すり」の安全基準についてお話したいと思います。
 子供の手すりの乗り越えによる転落事故を防止するために、次のような計測実験が行われました。4歳児から6歳児の90人に、どれぐらいの高さの台によじ登れるかを計測、足がかり台によじ登ることができるかを足がかり台の高さと厚みを変えて計測、そして柵を乗り越えることができるかを足先からベランダ柵までの水平距離と床高を変えて計測。実験の結果、台登り実験では、高さ60センチまでは全員が登れていますが、105センチ未満の子供は70センチの高さの台は登れませんでした。また、足がかりについては、70センチぐらいのものであれば、105センチ以上の子供は手すりを越えるための手段として用いていました。厚さについては、10センチ未満であればある程度有効ですが、25センチ以上では安全性に乏しいようです。建築基準法施行令第126条(屋上広場等)には、「屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが1.1m以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。」とありますが、この高さでも、足がかりになるものを手すりから60センチ以上離していないと、105センチ以上の子供は乗り越えられます。このような実験結果を踏まえて、今回の発表資料では以下の提案がなされています。

● 手すり柵の絶対高さ
・手すり柵の絶対高さは、現行法規等の規定のH=1,100㎜は子供にとっては十分安全な高さであるが、3 階以上からの転落事故は大人であっても重大事故となるため、1,200㎜程度を標準とすべき。
● 足がかり
・できるだけ足をかけられる「厚さ」を少なくする。10㎜程度では5歳児以上の児童の多くが足をかけられる。幅が50㎜あれば抑止効果は全くない。
・足がかりの「高さ」について、5歳児以上の児童の多くは600~700㎜あたりまで上れることから、手すりの高さは、足がかりとなる面を基点として800㎜以上、できれば900mm以上とすべき。
● 手すり柵からの距離別高さ
・ベランダに物を置く場合には、手すり柵から60㎝以上離して置く。(6歳以下の未就学児であれば、手すりにつかまってさらによじ登ることは困難)
・エアコンの室外機はベランダ床に設置せず、天井付近の高所に取り付ける。
● 手すり越えを誘発しない
・縦さんの手すり子柵や透明なパネルの無開口柵により、手すりを越えなくても子供でも外のようすを見ることができるようにする。
● 手すり子の構造的耐力
・子供は手すりで遊ぶこともあり、大きな力がかかると手すりの桟が破壊され、重大な事故になることから、手すり柵についても定期的な点検が必要。

 提案のなかに定期的な点検が必要であるとありますが、これについては、国土交通省が作成した長期修繕計画作成ガイドラインのコメントの「推定修繕工事項目、修繕周期等の設定内容」で、「バルコニーの手すり」の修繕周期の参考数値として36年 が示されており、「想定される修繕方法等」は、「全部撤去の上、アルミ製手すりに取替」と示されていますので、三回目の大規模修繕工事を迎える管理組合様は、是非「手すり」の修繕計画をご検討下さい。
最後になりますが、ちなみに、法令や各団体により基準及び規格では、手すりの高さと隙間の条件が次の表のようになっていますので参考にしていただければと思います。



マンションベランダからの子供の転落事故 第1回
http://mbp-japan.com/osaka/mankan-ju/column/32086/
マンションベランダからの子供の転落事故 第2回
http://mbp-japan.com/osaka/mankan-ju/column/32124/

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