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杉浦直樹

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杉浦直樹(すぎうらなおき)

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コラム

中小企業でも残業上限規制の影響に要注意

2019年3月10日

テーマ:経営戦略




この4月から働き方改革の推進で導入される「時間外労働の上限規制」が改正労働基準法で施行されます。時間外労働の上限は従来通り原則「月45時間、年360時間」ですが、短期間の突発残業に対応できるよう、1か月では法定休日労働を含んで100時間未満、2か月ないし6か月のどの月平均でも80時間以内、月45時間を超えることができるのは年6か月以内で年上限が720時間と設定され、きめ細かい残業管理が求められます。

重要なのはこの上限には罰則があるということです。この時間外労働の上限を守らなかった企業は、罰則として「6か月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科される恐れがあります。問題は、その違反企業は労働基準法違反企業として厚労省によって企業名を公表されることです。

これによって企業の信用にかかわるという問題に留まりません。例えば、労働基準法違反で有罪となった企業は、外国人技能実習生の実習計画の取り消し処分を受けるだけでなく、5年間にわたって新在留資格制度に基づく外国人社員の在留許可を受けることができなくなる恐れもあるのです。

外国人労働者なしには日本での事業活動そのものが継続できなくなってきている中、外国人社員に対する労務に問題があるという理由ではなく、一般正社員(しかも日本人)の残業管理が十分でなく、上限残業時間の違反があることが労働基準監督局の立ち入り検査で判明し、その結果罰金を受けたことが原因となって、外国人雇用の資格なしと断じられてしまうのです。

世の中がどんどん変化し、少子化の加速で労働力不足が深刻化している中で、働き方改革による女性や高齢者の活用、生産性の向上への取り組みは待ったなしであり、過重労働による自殺問題も契機となり、この4月から労働環境は根底から大きな変化を迎えるのです。

外国人技能実習制度は、さまざまな機関が絡んだ複雑な運営の仕組みであり、実習生の受け入れ企業の労務問題がきっかけとなって技能実習法が一昨年に施行されて以降、より複雑で細かい管理が求められるようになり、はっきり言って現場では非常に使いづらいものに変化しています。その細かい管理や規制が、実習現場の仕事の実態とかなりずれを起こしているとも言えます。技能実習はあくまで特定の技能を実習するために認められた在留許可の元で行われるため、その技能以外の仕事はそもそも実習計画には入れることができません。

ところが、現場での仕事という観点では、3年ないし5年の実習期間ずっと一つの種類の仕事をさせ続けるのは現実的ではありません。本音では、もっと幅広い仕事の経験を通じて実習してほしいと思っても制度上許されないのです。「溶接工」の技能実習として来日した実習生は、ずっと溶接の仕事しかできません。もし組み立ての仕事をさせたことが立ち入りで判明すると技能実習法違反となり、同時に実習生は在留資格を喪失することにつながりかねません。

昨今、大企業が受け入れている実習生に対する技能実習計画と受け入れ部門での仕事の違いから摘発されるケースが増えています。三菱自動車、日立、パナソニックでは改善命令や実習計画取り消し処分を受けているのです。これら企業は法律的には確かに違反をしたと思います。しかし、実習生に劣悪環境で労働をさせたとか、最低賃金以下の給与で労働させたり、課徴残業を強制したというわけではないのです。もっと現場実態をきちんと理解したうえでの立法化、運用をしてもらわないと、制度の主旨がどんどんねじ曲がってしまうのではないかと危惧しています。

中小企業の時間外労働規制は一年猶予だが・・


4月から施行の時間外労働規制への対応は大企業が対象です。しかし、中小企業は1年後に必須となりますので悠長に構えているわけにはいきません。大企業での導入を見ながら、中小企業は特に、限られた人材と時間で仕事をやりきることが今まで以上に求められます。

うちは徹夜してでも仕事をやりきることで信頼を得て事業を行ってこれた、残業させられないから納期が間に合わない、というようなことは許されないと感じておられる中小企業の経営者は多いと思います。しかし、たとえ中小企業でも今まで以上に働き方改革に真剣に取り組み、残業管理をきっちり行っていかないと、企業経営そのものが立ちいかなくなる恐れがあります。

また残業規制だけでなく有給休暇の最低5日間の取得義務化も同時に求められることから、働く時間と休む時間、勤務日のメリハリをつける働き方改革は中小企業においても真剣に取り組む必要があります。

「中小企業は社員一丸必死になって事業をやっているんだ、残業代はきちんと払っているし、頑張って仕事をやり遂げたいという社員を応援して何が悪い」と憤る方も多いのが実態です。しかし、今後これは非常に大きなリスクとなります。4月以降おそらく企業を退職した多くの人が、辞めた企業での労務問題を労働基準監督署にタレこむのではないかと思われます。そして、その結果今まで以上に現場査察が入ってくる可能性が高まります。

結果として、もし労働基準法違反が指摘されたとき、今や中小企業にとってなくてはならない外国人労働者の在留許可が下りず、活用している外国人技能実習計画が取り消されて今後外国人技能実習生を採用できなり、企業の存立そのものにかかわるのではないかと思われます。

中小企業の場合は、現時点でも労働基準法違反の実態が多いため、いきなり摘発されて外国人労働者の在留取り消しとまではいかずに改善勧告というレベルに留まると思われますが、今見せしめのような形で、大企業の労基法違反が公表されていることを考えますと、国は本気で残業規制に取り組んでくると思われます。今後、中小企業に対しても労基法コンプライアンスの徹底を求めてくる可能性は高いのではないでしょうか。

働き方改革とか残業上限や有休取得義務化は大企業の話と考えていると大変なことになる恐れがあります。今のうちに着々と準備を進めていくことをお薦めします。

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