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杉浦直樹

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杉浦直樹(すぎうらなおき)

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コラム

労働力激減の衝撃

経営戦略

2018年5月24日



先日のNHKスペシャル「縮小ニッポンの衝撃 労働力激減 そのとき何が」をご覧になられましたでしょうか。

3月に出版した「次世代につなぐ中小企業の海外経営」で述べたかったことは、今や確信に変わりました。このままでは日本は確実に没落していきます。日本は企業だけに限らず社会全体がもっと海外に開かれたものに改革し、GDPを拡大し続けるには国内市場と国内労働力だけでは無理なことは明確です。人口ピラミッドが釣り鐘型から今後は「棺桶型」に移行していくことは変えようのない現実なのです。

今、働き方改革がさかんに叫ばれ、とにかく残業時間の削減が日本社会の至上命題のような雰囲気が広がっています。しかし、人口が減り労働人口が激減していくことがはっきりしている中で、本当に残業時間の削減を法律で強制し、労働力のインプットを減らして、果たして経済は成長していくのでしょうか? 労働時間を減らすのであれば、たとえ労働人口が減らない場合でも、単位時間あたりのアウトプットつまり生産性が高まらない限り、労働投入量の減少分は確実にGDPが縮小します。この生産性を高めるための「働き方改革」として、多様な働き方としての裁量労働制や高度プロフェッショナル制度による残業規制の枠を外す動きもあります。しかし、労働人口の激減はそのような生半可な対応ではとても克服することはできません。これから約30年後には日本の人口は1億に迫っていきますが、より深刻なのが生産年齢人口(15-64才)がピーク時と比べ3500万人減少するのです。その時、誰が社会を支えるのか?・・これがNHKスペシャルのテーマでした。

しかも一人あたりの投入労働量は、残業削減の動きによって既に大きく減少しているのです。その分サービス残業が増えているという声も一部であるようですが、投入労働量つまりインプットが減れば、それに比例してアウトプットが減るのはむしろ当然といえます。しかし、問題の深刻さは、最低限の労働量をインプットしてアウトプットを確保しようとしても、肝心の労働力の源泉である人の確保ができなくなってきていることです。いくら採用をかけても人が来ない、特に中小企業は厳しいということは言われ続けてきましたが、少子化による労働力激減の衝撃は、日本の社会がどう生き延びられるかに直結する深刻な問題なのです。「働き方改革法案」を単なる「残業ゼロ法案だ!」といった矮小化したレッテルを貼って批判している一部野党には辟易しますが、社会全体が成長発展していくには、グローバルで競争に勝てるアウトプットが必要なのです。

労働力減少を高齢者と外国人でどこまでカバーできるのか


労働力激減の衝撃をどう乗り越えていくかというのを、NHKスペシャルではあくまで日本国内の経済視点からの切り口で、若年層が働きたくない3Kの仕事を高齢者や外国人技能実習生の活用でしのいでいるというものでした。それでは追いつかない現状と将来の人口構造からの危機感をあおるだけでした。現実、介護施設でも人手不足のため高齢者を職員として雇っているところが増え、その職員が老齢化で運転が危なくなって送迎の順番を間違えたり、オリンピック施設の建設現場でもベトナム人の技能実習生が現場リーダー的な仕事まで広がっていることを紹介していました。

日本国内で労働力を確保することを前提とするのであれば、外国人つまり移民を受け入れる他ありません。もちろんそうなりますといろんな社会問題が起きてきます。今でも外国人犯罪が増加の一方であり、このまま外国人労働者を受け入れることができるのかという課題提起でした。しかし、問題の本質を日本国内の事情だけで考えていては、将来さらに大変なことになるということについて、ベトナム人の技能実習生の例をあげて説明をしていました。

最近の技能実習生を取り巻く環境はどんどん厳しくなってきています。本来技能実習制度は、日本の技能、知識を発展途上国へ移転を図り、その国の経済発展を担う人を育てる国際協力のための制度がその主旨です。しかし、いくら理念として国が唱えようとしても、実態は企業にとっての労働力供給の調整手段として使われてきましたし、昨今では労働力不足のの担い手として依存されるようになってしまいました。この建前と本音のずれが社会問題を引き起こし、技能実習生に対する不当な労働環境や処遇が顕著になり、海外からも人権侵害といわれるまでになり、政府もやむにやまれず技能実習制度の適正化のため外国人技能実習法を制定して昨年より施行されました。この新法によって、確かにベトナム人をはじめとする労働環境の改善が図られるようにはなったと思いますが、実際、国が新たな管理監督官庁である機構をつくり、監理監督をあらゆる面で厳しくしたために、実習生を受け入れる側にとっては、非常にややこしく複雑な業務が増えるだけでなく、それにともない管理コストや実習生に対する教育コストが急に跳ね上がってしまいました。そのため、実際起きている問題は、外国人技能実習生を雇用するには、日本人以上の人件費がかかってしまうことになり、非常に使いづらい制度になってしまっているとの声をよく聞きます。「日本人が採用できるのなら、こんな面倒くさくて、気苦労が絶えず、そして高コストの実習生など使わない」というのは中小企業の一般的な受け止め方です。

それでも、ベトナムなどから技能実習生がどんどん来てくれている間はよかったのですが、最近それもだんだん難しくなってきているのです。あまりにも厳しい条件であり、特に日本語のレベルや技能レベルによって在留資格が細かくわけられ、ある程度一定基準に達しないとビザが延長されない制度です。今までは3年で帰国しなければならず、今回制度改正されて優良な受け入れ機関として認定されれば5年まで延長できるものの、なんと国は外国人技能実習生がそのまま日本に居つかれないように、里心を思い起させるために3年で無理にいったん帰国させ(企業の旅費負担で)、しかも1か月間の冷却期間を義務付けたあとでないと再入国を認めないという姑息な制度にしているのです。企業としては人不足の中で、外国人にもできる限り長期間勤務してもらって、幹部として企業の経営を支えてほしいという思いがありますが、国は基本的に移民政策は認めていないのです。

技能実習生という制度を日本だけでやっているのならそれでもかまわないと思いますが、昨今台湾や韓国でも外国人労働者を積極的に受け入れているため、日本で働きたいというベトナム人が減ってきていることが懸念されるのです。ベトナム人にとって一番出稼ぎに出ているのは台湾や韓国です。台湾、韓国でも少子化の影響を深刻にとらえ、積極的に外国人の労働者を受け入れてきました。在留資格を細かく管理する日本のような制度ではなく、台湾では実習生であっても最長13年在留できたり、中国語は必須でもなく、転職も可能です。日本は親日国だから採用をかけたらどんどん応募してくるといったら大間違いです。実習生にとっての個人負担も少なく、転職できたり、一生懸命言葉を勉強しなくても働ける台湾や韓国に実習生が流れているのです。

世の中は日々刻々変化しています。

日本が生き残るためには、日本に引きこもって、海外から実習生という裏技で労働力を確保すること自体壁にぶつかってきています。企業が成長発展するための市場はすでに海外が中心、労働力も海外が中心にシフトしています。どうすればよいのでしょうか? 企業自身が海外に打って出る以外にないと思うのです。伸びる海外市場で海外の人材を活用して戦っていく以外に生き残るすべはありません。日本のみで事業を続ける限り、まず人が確保できないことで労働資本を事業に投入できず、注文はあってもモノやサービスを提供できない姿が日々現実となり、黒字なのに廃業に追い込まれる企業が増えていくと日本経済そのものが沈没してしまう危機を強く感じるのです。

この記事を書いたプロ

杉浦直樹

杉浦直樹(すぎうらなおき)

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