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杉浦直樹

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杉浦直樹(すぎうらなおき)

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コラム

次世代の技術立国を支える企業の社会的責任

海外経営

2018年5月10日



私の現在の取引先であり、現役時代からお付き合いのある理科実験器具を製造販売してこられたFさんという方がおられます。Fさんは器具を企画製造されるだけではなく、子供たちに科学の面白さを伝えていく伝道師として全国を飛び回っておられます。一人でも多くの子供たちが科学に興味を覚え、将来技術立国としての日本を支えていくと固く信じ、人生のほとんどを次世代に科学に精通した人材を継承していく使命感で仕事をしてこられてきました。

残念ながら経営的には大変ご苦労されてきたのですが、Fさんの理念、使命感に感銘を受け、私自身も支援を採算度外視で続けてきました。既に70歳代後半にさしかかっておられ、本来なら引退して趣味のゴルフを楽しむ老後生活を送られていても全く不思議ではありませんが、少しでも多くの子供たちのために科学の面白さを経験してほしいという情熱は些かも衰えておらず、それこそ全国を東奔西走してあちらこちらで子供向けの理科実験教室の講師として実施されたり、学校の教員免許更新研修で、先生向けに理科実験のやり方や子供たちへの教え方を指導されています。本当に頭が下がる思いです。

なぜ日本は技術立国として地位を築けたか


今、全国に科学館といわれるミュージアムは非常に多くあります。改めてウィキペディアで調べてびっくりしたのですが、日本全国に科学館や子供科学館と言われる施設は、官民合わせて137か所もあります。この数は世界どの国よりも跳びぬけて多いのです。

Fさんは科学教育の生き字引のような方で、Fさんによれば日本の科学館の数が一気に増えたのが昭和38年以降とのことです。これは日本が高度経済成長していくためには人材育成が重要で、特に科学技術分野における社会教育の重要性について、昭和天皇がある行事で述べられたことを契機に、政府や公共団体が科学館設立に注力を始めたことがきっかけとなっているとのことでした。Fさんいわく、技術立国に必要なのは、決して大学など高等教育の研究機関に予算を重点配分するのではなく、一般庶民や子供たちが幅広く科学技術についての関心を高めることが遥かに効果が大きく、過去日本が技術立国として国際競争の中で勝ち残ってきたのは、一気に設立が加速した科学館の存在が基盤となっているとのことでした。

この137の科学館の中身を見てみますと、一般には自然科学に関連展示を行う博物館ですが、例えば、蒸気機関のしくみや力学モデル、化学物質の分子構造などの展示もあれば、交通、通信、鉄道、産業技術に特化したものもあったり、子供のための理科、科学、環境教育を主とするものも作られています。それらでは単なる常設展示だけでなく、定期的に科学イベントも実施され、より多くの人が科学に親しめるような工夫がなされています。

設立運営はほとんどが公的機関


科学館そのものはアミューズメント施設ではないため、テーマパークのように高い入場料をとって経営できているようなところは全くなく、ほぼ8割以上が国や地方自治体による設立で、入場料も無料に近いもので、ほとんど税金で運営されています。最近では少子化の影響や科学技術への関心低下によって来場者が減少し、予算がカットされて施設の閉鎖、縮小も拡大されているようです。科学館が今まで社会教育機関として果たしてきた役割を考えると、このままではいけないとFさんも非常に憂いておられます。

もう一つの問題は社会教育における企業の責任です。科学館の運営の大半が公的機関であるのは、社会教育は企業の直接のミッションでないという考え方が一般的であるためで、企業が設立運営する科学館関連の施設は非常に少ないのです。確かに展示品を企画製作するだけでなく、定期的に内容をリニューアルすることは必然であり、集客のためにも魅力あるイベントも開催しなければなりませんし、そのためには常に運営コストがかかる施設です。また企業が運営する科学館では入場料をいただくことは現実的ではありませんので、科学館を設立運営するには社会貢献活動として位置づけ、企業ブランド力向上とも連動したマネジメントの姿勢が問われます。

こんなコストもかかって採算の取れないものを何故作らねばならないのか、社会教育施設なら国や自治体が税金でやればいいのではないかと考える企業がほとんどではないでしょうか。

でも私はこの考え方は根本的に間違っていると思います。企業として次世代に経営資産や人材を継承していくのは社会的責任です。今の企業を支える人材は誰のおかげなのでしょうか。先人が国の将来を見つめ、科学館を設立することで科学に関心の高い国民が育ち、他国に比べて優秀な技術人材を確保できたためではないのでしょうか。企業として恩返しはどうやってやるのですか?先人の見識の高さに感謝し、残してくれた経済基盤と高度人材に感謝しつつ恩返しするのは、次世代に何を残せるかにかかっているとは言えないでしょうか。

このまま企業が科学人材創出に貢献しない経営を続けていくということは、将来に負の遺産を残すことになるのです。もっとも中小企業のレベルで科学館を運営するなんてことは土台無理でしょう。しかし、公的機関が運営している科学館でのイベントにボランティアで理科実験教室のお手伝いはできるはずです。子供たちに科学や環境についての出前授業を行うこともできるはずです。NPO団体を作って、企業が共同で社会教育にさまざまな方法で支援できるはずです。イベントの協賛はできるはずです。寺社仏閣や盆踊りへの寄進と同様、科学教育への寄付もできるはずです。企業の規模、体力に合わせて貢献はできるはずです。大企業であれば尚更です。最近では企業ミュージアムも増えてきてはいますが、まだまだ数は少なく、単なる企業史の展示館であったり、ショウルームに限りなく近いものであったりします。もっと次世代に人を残すために社会に何を伝えるのか、この姿勢が非常に問われていると思います。

海外であればなおさらCSRは重要


多くの企業が海外展開を考える動機としては、海外に出た方がコストを低く抑えられるとか、海外の方が市場が大きくもっと売れるとか、海外の方がより儲かりそうというように、収支がどう改善されるかという視点で考えがちです。

しかし、次世代に事業を継承し、人や技術資産を残し発展させていくことで、日本経済とともに展開国の社会発展に貢献するという考え方は非常に高く評価されます。外国から投資してもらって利益を上げる事業により雇用と税収に貢献するというレベルではもはや歓迎されません。展開国の社会経済を支える高度人材をどう創出してくれる企業かということの方がより重視される時代になりました。

特に、展開国の次世代を支える子供たちへの教育に貢献する企業活動はマスコミの注目も集め、結果として広告宣伝以上の社会的評価を受けることにもつながります。

以前、Fさんと一緒にベトナムで子供たち向けに理科実験教室のイベントを実施し大変好評を博しました。前職のベトナム法人では、理科や数学に興味を持つ次世代創出に貢献することが、ベトナムの社会経済発展の礎になるとのポリシーのもと、10年以上にわたって教育貢献活動を進めてきました。政府関係やマスコミ、地域社会から高く評価をいただいているのですが、残念ながら他の日本企業で海外での社会貢献活動に力を入れておられるところはまだまだ少ないのが実態です。

もし、進出企業として現地での科学教育貢献に賛同いただけるのであれば、何社か集まって、また大企業がリードする形で「楽しい科学の実験出前教室」というようなイベントを仕掛けていきたいと考えているところです。

ご興味のある方はぜひご一報ください。

この記事を書いたプロ

杉浦直樹

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