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杉浦直樹

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コラム

黒字廃業増加の深刻さ・・あの「岡野工業も」

経営戦略

2017年12月22日 / 2018年1月31日更新




先日のAbemaTVで、中小企業の黒字廃業が増加している危機についてレポートされていました。昨年自主廃業した中小企業はおよそ3万、その内49%が黒字経営だったというのです。多くの顧客に支持され、利益を上げているにも関わらず、後継者不足を理由に廃業を選択する中小企業が今、急増しているというものでした。20年前は中小企業の後継は8割が身内であったのですが、今は6割まで下がっているのです。

創業150年の造り酒屋の女将も、息子が3人おられたのですが、他の仕事に就いており、後継者が現れなかったため、廃業を決断されたといいます。そして、世界に誇る「痛くない注射針」で有名な岡野工業も、現在84歳の岡野社長が85歳になった段階で廃業することを決めたとのことでした。廃業した企業のうち、三分の二が後継者が不在であったためといいます。

私はこのTVレポートをネットで見たのですが大変ショックを受けました。岡野工業は典型的な超優良な中小企業の代表格のような創業50年の会社です。その岡野工業の財産を次世代に引き継げないという事態は、日本経済の深刻な先行きを暗示しているように思えたのです。

岡野工業は従業員3人の小さな町工場ですが、年商8億の優良企業で、30もの特許を保有。13年前には大手医療メーカーから依頼され、蚊が血をすうための口器と同じ太さの3ミクロンの注射針を開発、「痛くない注射針」として、赤ちゃんや糖尿病患者のインシュリン注射などに使われています。そしてこの注射針をつくれるのは世界でも岡野工業だけなのです。

岡野社長には2人の娘さんがおられますが、いずれもモノづくりには興味がないとのことで、結局社長自身誰かに継がせる予定もなく廃業を決められたとのこと。岡野社長いわく、「跡取りがいないってのは悔しい、でもやりたいことは全部やった。技術屋、職人って、ほとんどいなくなるだろうね。だってうちの近所でもみんな辞めてっちゃうんだ」

新しいものを生み出せない社会に


少子高齢化に伴う人材不足、そして企業の後継者不在の影響は、今後一気に社会発展を蝕んでくるように思えて仕方がありません。企業の事業承継問題をこのまま放置すると、現在の団塊世代全員が後期高齢者となる2025年には、雇用は650万人、GDPは約22兆円が失われる可能性があると中小企業庁が予測しています。いわゆる「少子高齢化不況」がじわじわと忍び寄ってきており、おそらくオリンピック後に一気に表面化してくるのではないでしょうか。

経済の規模が少子化によって小さくなることの以上の問題として、技術立国と培ってきた日本の強みそのものの空洞化が避けられないことがあります。今まで開発してくれた匠の技をもっていた職人さんの技術は、当面は大企業で押さえている特許やマニュアルで継承できたとしても、どこかで必ず新技術にアップデートしなければいけないのに、誰もやれる人がいなくなる、つまり新しい価値を生み出せない社会に陥る可能性が大きいのです。

岡野社長はインタビューでこう言いました。「うちみたいな技術は、大企業でも絶対できる。人もいる。やればできるけどやらないだけ。もし失敗したら飛ばされたり、ボーナス無くなってしまうと思うから、できないできないって言ってた方が無難。俺は何回も何回も失敗したよ。じぶんが学歴がないから技術で勝たないとダメだと思っているから、失敗を恐れずチャレンジできた。大企業もチャレンジしないとダメだね。先頭に立っている人が犠牲になんなきゃ。自分だけがいい思いしようって言うのはダメ。それだけだね」

日本はもうモノづくりを次世代に繋いでいけない社会になってしまったのでしょうか。

事業承継対策は優遇税制と補助金という発想ではだめ


少子高齢化が深刻化し、本来の主旨とは違う外国人技能実習生を頼って人材不足を乗り越えようする企業が増えています。ただこれも早晩限界が来ると思います。労働管理のコンプライアンスも年々厳しくなっており、コスト面でも採用コストや連れてくる旅費、そして受け入れ監理団体の管理コストなど、日本人雇用とそう変わらないぐらい人件費がかかるようになってきました。また技能実習生は通常3年までで彼らは帰国しますので、外国人に技能承継しても人的資産として残すことができない根本的な問題があります。

しかも、最も深刻なのが、事業承継できる家族がほとんどいないということです。中小企業はこのままどんどん縮小していく以外にはないのでしょうか。一方、経産省や国の事業承継対策を見てみますと、相も変わらず事業承継する企業への相続税など税金の軽減であるとか補助金であるとか、旧態依然とした古いやり方で税金を突っ込むことしか発想がありません。あとは後継者育成の名のもとに経営セミナーとか開催しているだけです。今回閣議決定されたH30年度予算を見ますと、様々な事業承継対策予算が盛り込まれています。ただ、本当に効果があるのかといった疑問を感じる項目がオンパレードです。結局補助金に目ざとい企業がうまく申請書を書いて採択されるだけで、社会にとってどうしても次世代に引き継ぐべき企業をどう残すかということには使われないような気がします。

根本的な社会構造まで踏み込んで、いかにして次世代に事業継承するかという民間の発想から思い切ったしかけをリードするべきではないでしょうか。

この記事を書いたプロ

杉浦直樹

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