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杉浦直樹

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杉浦直樹(すぎうらなおき)

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コラム

「陸王」には中小企業経営のエッセンスが詰まっている

雑感

2017年11月20日


池井戸潤氏の小説はビジネスマンであれば皆引き込まれると思います。「下町ロケット」「ルーズベルトゲーム」「半沢直樹」しかり、いかにも実話にありそうなことをリアルに描いています。これらドラマ化されたものはすべて大ヒットとなっており、今は「陸王」という零細企業で倒産寸前の足袋製造会社が、起死回生をかけてランニングシューズを開発、実業団のスター選手に履いてもらう夢を追いかける感動の名作です。

「半沢直樹」のときは、「やられたらやり返す、倍返しだ!」といった銀行内部の上司と部下の暗闘のような印象がありましたが、「下町ロケット」では中小企業が苦労に苦労を重ね、ロケットの主要部品の開発に成功している話で、ぐぐっと引き込まれるドラマでした。そして今回の「陸王」は、「下町ロケット」と同様零細企業の一発逆転劇には違いないのですが、第一話から毎回食い入るように見ています。なぜなら、この「陸王」のストーリーには、今中小企業が抱える問題点だけでなく金融業界の構造問題などあらゆる課題が凝縮されており、今後の中小企業経営のヒントが満載であるからです。

① 事業承継の問題
長男の就職活動に苦労している姿と、親への反発など家族の感情を浮き彫りにしつつ、会社の危機に手伝ったことをきっかけに本当の生きがいとは何か徐々に目覚めてくる、そして立派な後継者として育っていく姿が描かれています。

② 経営者の情熱とチャレンジ精神、リーダーシップ
どんな危機に直面しても決してあきらめない気持ち、情熱が周囲を動かし、いつの間にか社長を助けていこうという信頼の輪が広がっていく姿に、経営者としてのリーダーシップの重要性とチャンレンジ精神とは何かを示唆してくれます。

③ 中小企業のモノづくりと品質に対するこだわり
どんどん同業者が廃業していく中で、中古機械を引き取り、その機械の部品を修理用に生かしたり、新たなモノづくりに利用していく姿勢と、老舗メーカーとして一切妥協を許さない品質管理のこだわりは、昨今の大手企業の品質問題に関する不祥事に教訓を与えてくれます。

④ 老舗メーカーの新規事業開発とイノベーション
足袋だけでは生き残ることができないと見極め、足袋の技術を生かした軽量で丈夫なランニングシューズの開発に乗り出す経営は、事業に対する先見性の重要さを教えてくれます。またランニングシューズ開発の過程で培った技術力を逆転の発想で、足袋の付加価値を高めた新製品を開発しヒット商品となって経営危機を脱する姿が描かれています。

⑤ ブランドに対する信頼
老舗足袋メーカー「こはぜ屋」のブランドであるトンボのマークに誇りと信頼を忘れない経営は、ブランド価値の重要性を教えてくれます。

⑥ 零細企業の資金繰りの悩み
いつ潰れてもおかしくない経営危機の中で、銀行は何度も新規開発のための融資を拒否しさらに苦境に立たされます。キャッシュが回らない経営をどう乗り越えていくか、典型的な零細企業の資金問題に焦点を当てています。

⑦ 試される金融機関の目利き力
ドラマの序盤では貸し渋る悪役で描かれていますが、銀行マンが実際に現場を見て、人の情熱や技術にかける気持ち、モノづくりへのこだわりを目の当たりにして、将来成長する確信を感じ融資にGOサインを出します。本来金融機関は独自の産業を育てる役割や目利き力が改めて求められているというあるべき姿を訴えています。

⑧ 小規模企業のマーケティング戦略
外資大手のシューズメーカーに正面から戦いを挑むというドラマ展開になっています。実際には一人のランナーに履かせたからといって一気に販売が伸びるわけではないのですが、小規模企業である「こはぜ屋」がスポンサーシップになることの難しさと、ピンポイントに絞り込んだマーケティングと情熱がランナーとの信頼関係を築いていくことが成功につながっていく絞りこみのマーケティングが描かれています。

⑨ 中小企業の技術力の高さと創造力
大企業にはマネができない技術やノウハウを中小企業が持っていて、新しいことにチャレンジして付加価値を高めていくという強い思いがあることを示唆しています。

⑩ 中小企業の人的資源
一人が病気やケガで欠けると途端に影響がでる人的資源の脆弱性を描きつつ、それを社員の団結力で乗り越えていく姿は大企業には見られないことを物語っています。

⑪ 従業員のモチベーションと組織風土、仕事に対するやりがい
経営は人がすべて、経営者から工員一人ひとりまで全員の高いモチベーションが次から次へと襲い来る危機を乗り越えていくのです。危機が起きるたびに、外から貴重な戦力が加わってさらに強い組織風土が作られていく様子が描かれています。

⑫ 情報チャネルや人的ネットワークの重要性
「こはぜ屋」が変革を遂げていくきっかけとなっているのが人的ネットワークです。特に、運動用品店の店主が市場の声や業界動向まで事細かく社長に情報を提供してくれるファンとなっています。そして一発逆転のきっかけとなったのが、ライバルメーカーで選手に食い込んで信頼を得ているシューフィッターがクビになったのを受けて、「こはぜ屋」の社長に引き合わせ、顧問としてチームに入ったことです。

まだまだ他にもあるのですが、こういった中小企業に是非頑張ってほしい、心から応援したくなる感動のドラマです。どちらかというと、ライバルの外資のシューズメーカーや貸し渋る銀行は悪役に描かれているのですが、彼ら自身も日本経済を支える中小企業から学べることも限りなくあるドラマです。経営資源であるヒト、モノ、カネ、情報・ノウハウの重要性と、いかに中小企業がその経営資源の活用を極大化するかという経営のヒントを与えてくれるので、最終回までのめり込んで拝聴していきたいと思っています。

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