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小泉達治

商品企画から販売促進まで支援するデザインの専門家

小泉達治(こいずみたつじ) / アートディレクター

有限会社コイズミデザインファクトリー

コラム

女性のベテランデザイナーは貴重 1

2016年11月3日 公開 / 2020年11月20日更新

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 退職 手続き

女性のベテランデザイナーは何処にいる?

私が事務所をかまえる京都に限らず、全国的に女性のベテランデザイナーが少ないのはなぜでしょう。
仕事のジャンルによってかなり差がありますが、特にグラフィックデザイナーやWEBデザイナーにはその傾向が強いのは確かです。もし、デザイン会社や印刷会社のデザイン室に行く機会があれば、一度確認してみてください。おそらく30代後半から40代にかけての最も仕事ができるであろう世代の女性デザイナーはほとんどいません。アパレル関係や雑貨など女性でないと無理なジャンルであればなんとかベテランの女性デザイナーが存在しますが、最も数が多いグラフィックデザイナーやWEBデザイナーでは探すのが困難です。

なぜ、女性のベテランデザイナーは少ないか

理由は明確です。女性のライフイベントとデザインの現場がかみ合わないからです。さらにそういった慣例を目の当たりにした女性達がデザイナーという仕事を放棄してしまうからです。
普通の仕事であれば女性は結婚しても仕事を続けることが多くなってきました。世間的な風潮として会社がそういう環境を整えるようになったからです。しかし、デザイン会社は基本的に小規模なところがほとんどですから、そういう環境を整えるのは至難の業であり、場合によっては復帰することすら許されないような空気が漂っていたりします。大手の印刷会社や広告代理店の制作現場は表向き復帰することができますが、実際主婦としての家事とデザイナーの仕事を両立するというのはあまりにも大変で現実的ではありません。デザイナーにはどうしても「残業」という重い二文字がのしかかっているからです。

出産後はさらに続けることが難しい

それでもなんとかパートナーや親の協力を得てデザイナーという仕事を続けたとしても、何年か後に訪れる「出産」という出来事は、デザイナーを続けには致命的です。少なくとも保育園に預けられるくらいに大きくならないと絶対に無理ですし、預けられるようになっても普通にデザイナーとして勤務するのは難しいのが現状です。

現状では女性デザイナーに向上心を持ってもらうことが難しい

こういった状況では、女性デザイナーに向上心を持ってもらうことが非常に困難になります。
職場の先輩女性デザイナーが、みんな結婚や出産で退職や転職を余儀なくされ、デザイナーであることを放棄してしまったり、デザイナーでありたいと思っても状況が許されないという場面を目の当たりにすれば、「いつか私もそういう時が来るんだ」という気持ちになっても無理はありません。
そういう気持ちになってしまうと「デザイナーとして成長したい」とか「立派なデザイナーになりたい」という向上心がなくなってしまうだけでなく、現状にまで不安を抱かせてしまうことになってしまいます。

続けにくい状況と向上心減退では少なくなって当然

こういった状況では女性のベテランデザイナーが少なくなって当然であり、業界全体で見てもそれが当たり前のようになっています。しかし、これは労働問題的な観点からだけでなく、デザイン界全体にとっても大きな問題であり、日本のデザイン業界が今後時代に対応できる人材を輩出できるかという点でも熟考していかなければなりません。

このような問題を踏まえ、女性デザイナーに対する私の考え方を次回書かせていただきたいと思います。
貴重な女性デザイナーをどう育て確保すればよいかを考えてみました。

この記事を書いたプロ

小泉達治

商品企画から販売促進まで支援するデザインの専門家

小泉達治(有限会社コイズミデザインファクトリー)

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