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コラム
「試合に出させて!!」~遅刻してスタート前に競技失格のエピソード
2015年5月14日 公開 / 2017年2月24日更新
セベ・バレステロスが遅刻で失格!
アメリカ・ニュージャージー州にあるバルタスロール・ゴルフクラブにて開催された1980年の全米オープンは優勝が帝王ジャック・ニクラウス、そして日本の青木功が2位という大健闘を魅せた試合。今でも「バルタスロールの死闘」として語り継がれています。
この大会の2日目に事件が起きました。
この年の4月に開催されたマスターズで優勝したスペインのセベ・バレステロスがスタート時刻に遅れて競技失格となりました。
セベのスタート時刻は10時45分。
宿泊先のホテルを出るとき、すでに時間がない状況だったにもかかわらず、さらに交通渋滞に巻き込まれ、コースに到着したときはスタート時刻の直前!
急いでロッカールームに駆け込んでスパイクシューズをわしづかみにしてスタートティーに向かいました。
しかし、1番ホールのティーインググラウンドに到着したときには、同伴競技者のヘイル・アーウィンとマーク・オメーラの2人はすでに2打目を打ち終えてグリーンに向かって歩いているところでした。
「どうかプレーをさせてくれ」
とスタート係の競技委員に掛けあいましたが聞き入れてもらえず、「競技失格」の罰を受けました。
ゴルフルールにスタートの遅刻を優遇する注釈がつく
当時、全米オープンの主催団体であるUSGA(米国ゴルフ協会)は、競技ルールにもローカルルールにもスタートの遅刻に対する優遇処置について、何も決められていませんでした。
しかし、「同伴競技者全員が2打目を打ち終える前にプレーできる状態でスタート地点に到着したプレーヤーには、競技失格とはせずに、最初のホールに2罰打を科した上でスタートを許す」ということを慣例としていました。
セベはこの特別の計らいにも間に合わなかったということです。
この一件があって、1984年のゴルフ規則改定時に、規則6-3(スタート時刻)において、注釈で「委員会は、プレーヤーが自分のスタート時刻後5分以内にプレーできる状態でスタート地点に到着した時、遅刻の罰を競技失格とはせずに、マッチプレーでは最初のホールの負け、ストロークプレーでは最初のホールで2罰打とすると、競技条件の中で決めておくことができる。」という規定が追加されました。
この場合の「プレーできる状態」とは、1本のクラブと1個の球を持ってさえいれば、特にゴルフシューズを履いていなくても、またゴルフ用の服装をしていなくても、その条件を満たしていることになるそうです。
全英アマで起こった遅刻で失格殴打事件
その4年後の1988年、今度はイギリスでスタート時刻違反が起こります。
この時は「競技失格殴打事件」となってしまいました。
米国カンザスシティーのアマチュア選手、フレッド・ローランドさんは1988年の全英アマ選手権に出場するため4500マイルかなたの英国ウェールズへ飛びました。
フレッドさんは、仕事のあと毎日ウルフクリーク・ゴルフリンクスに通いつめ、熱心に練習を重ね、このクラブでは何度もクラブ・チャンピオンに輝いているカンザスシティーでは有名なアマチュア選手。
全米アマ選手権でも際立った活躍を見せた49歳のフレッドさんは自信に満ち溢れていました。
満を持してフレッドさんは、ウェールズの全英アマ開催地ロイヤルポースコール・ゴルフクラブへやってきました。
当日は天候が悪く、雨と強風が吹き荒れていました。
彼は武者ぶるいを覚えつつ、雨の中1時間もティーインググラウンドでスタートを待っていました。
横殴りの雨に傘も役に立たず、ズボンはずぶ濡れになってしまいました。
彼は着替えるために移動式トイレへ向かいました。
やがてレインウェアを着込んで1番ティーに戻ってくると、競技委員長のマイケル・リース卿が近づいてきました。
「ローランドさん、さきほど名前を呼んだのですが、おられませんでしたね」
「ええ、ちょっと・・・」
彼はわずか1分の遅れでペナルティーが課せられるのかと悔やみました。
「じゃ、2ペナで始めます」
「いえ、失格です」
いきなり心臓を鷲づかみされたような気がし、膝ががくがくと震えだしました。
たった1分・・・着替えている間の遅刻なのに・・・失格・・・
「待ってください・・・私は遠いアメリカから・・・それもカンザスシティーという辺境なところからやってきたんだ。どんな重いペナルティーでも受けるから、試合にだけは出させてくれ!」
「分かっています。あなたがアメリカ人であることを考慮して、私たちは2度もあなたの名を呼びました。本来は1度しか呼ばないところを。」
フレッドさんは凍りついたように嵐の中、茫然と立ち尽くしました。
たたみかけるようにリース卿は言いました。
「失格は失格です」
返す言葉もなく、気が付いた時には、手が出てしまっていました。
「ついカッとなってね。アメリカ人の醜態をさらしにわざわざウェールズまで行ったようなものだ」
当時の全英アマでは競技規則に「5分以内」の優遇制度は採用されていなかったのです。
現在のルールでは、上記ルールの「競技条件の中で決めておくことができる」という注釈がなくなっているので、スタート時刻の5分以内にティーインググラウンドに到着していれば、失格となることはありません。
その後のフレッド・ローランドさんはというと、実は、現在でもシニアの競技で活躍されています。
これまでにカンザスシティーのアマチュア選手権では、あらゆるタイトルを取られています。
そして75歳を超えた今でも毎日ウルフクリーク・ゴルフリンクスに通って、競技に出場しながらゴルフを楽しんでいるそうです。
ローランドさんの現況を知ってホッとしました。
やっぱりゴルフの魅力に一度憑りつかれた人は、そう簡単にはキライになれないようですね。
■参考文献
「マイク青木のゴルフルール事件簿」マイク青木著:日経ビジネス文庫
「生きがいはゴルフだけ」ブルース・ナッシュ&アラン・ズーロ著、山崎雄介訳:二見書房
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