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コラム

日々の雑感:建築と保育

日々の雑感

2013年4月28日 / 2014年5月23日更新

 先日、2年前に設計させていただいた保育園の定期点検に立ち会った。和の雰囲気を取り入れた木造園舎で、本物の材料にこだわったつくりである。
 障子を提案させていただいたものの、こどもが破ってしまうのではないかと少し心配だったのだが、2年前のまま変わっる様子はない。あまりにきれいなので貼り替えていただいたのかと思い、園長におたずねしたところ、そうではないらしい。
「まったく問題ありませんよ。他の園さんでは、破れの心配から採用されないケースが多いのかもしれないが、私たちの園では逆の発想です。むしろ保育の材料として活用しています。障子を取り入れてよかった。」とのコメントをいただいた。園長の話では、こどもたちは硬い素材と柔らかい素材を敏感に感じ取り、木の柱と障子とでは触れ方が違うという。ものの扱い方を、素材から感じ取っている様子がうかがえる。 
 3歳未満児であるからこそ可能だったのかもしれないし、もう少し検証が必要だと思うが、建物そのものを教材にしてしまうという保育が存在しえるということがわかって、嬉しい気持ちでいる。しかし逆に言うと、無意識下で悪い教材を与えてしまっている場合があるということでもあり、設計者として喜んでばかりはいられない。
 ずっと保育所の設計を仕事にしていると、保育のスタイルが一様でないという当然のことに悩まされる。保育スタイルが違えば、設計も自ずと違うものになるわけだから、経験を積めば積むほど答案が増えて正解が見えにくくなるという矛盾の中で、さまようことになる。
 また、保育そのものについて、どこまで設計者が踏み込むべきかということについても、判断が難しい。第三者として客観視できる立場であるからこそ踏み込むべきなのかもしれないし、保育の実務経験のない素人だから言えてしまう余計なお世話なのかもしれず、提案するということは実に難しい。
 設計とは決断の連続である。そしてその決断の一つ一つが保育やこどもたちの生活に影響を与える。嵐のような年度末を終えて一息ついたところで、いままで設計させていただいた園舎を振り返る時間を取らせていただき、検証してみたいと思っている。事業主様には失礼な物言いになるが、間違った決断を下している場合も多くあるだろうと思う。その一つ一つを反省し、今後につなげていければと思う。
(大塚謙太郎)

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