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坂本公則

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坂本公則(さかもときみのり)

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コラム

配偶者控除の改革論議に思う

配偶者控除の改革論議に思う
―― 給与体系(家族手当・住宅手当)の見直しも必要か ――

 政府税制調査会では、現在、今年末の税制改正大綱に向けて、配偶者控除の改革を検討しています。これは、いわゆる専業主婦は、年収103万円までは所得税は非課税で、夫の被扶養者として配偶者控除の対象となり、夫の税負担が軽くなるという仕組みです。ただ、その適用を受けるために働く時間をわざわざ減らす人が多いなどの歪みを生じており、女性の活躍を後押しする観点からも見直しが求められているわけです。

 現在、有力視されているのは、「夫婦控除」と呼ぶ制度で、夫や妻のそれぞれの年収にかかわらず一定額を収入から差し引ける。従って、特に女性の働き方に影響を与えずに済むという仕組みです。

 所得税の議論としては、配偶者控除の他に、退職所得控除のあり方(現在の仕組みでは、勤続20年までは40万円/年だが、20年を超えると70万円/年と控除枠が急速に大きくなり、終身雇用が崩れ、転職者が年300万人近くになっている雇用環境にそぐわなくなっているという問題)の論議もあり、どういう決着になるか予断を許しませんが、配偶者控除のあり方は、公務員や多くの企業の家族手当、住宅手当などの支給条件とも関連するだけに、注目していく必要があります。

 何故なら、配偶者控除の対象であることを、家族手当、住宅手当などの支給条件としている公共団体や企業がほとんどであるという事実があるからです。

 私は、1970年代の初めに大手鉄鋼会社で社会人生活のスタートを切りましたが、当時、既に家族手当は廃止された直後でした。これは鉄鋼大手企業ではすべて共通でした。背景には、能力・成果に応じた給与体系で、極力簡素化を目指すという考え方があったと思います。

 その後、その関連会社を始め、多くの企業の給与体系を見てきましたが、家族手当を支給している企業が圧倒的に多く、意外に思ってきました。また、その支給条件も、妻については、「配偶者控除の対象であること」が大半でした。

 私は、これらの傾向に、違和感を感じざるを得ませんでした。何故なら、この20-30年間、人事給与制度の主な風潮は、能力・成果主義であり、能力や成果を何をもって測定するか、どの程度、人事処遇や給与に反映するかという議論はあっても、能力・成果を重視していくという方向は一貫していました。そうした中で、年功主義の最たるものである家族手当が、多くのしかも大企業でも存続していることを奇異に感じたのです。

 特に、支給条件が「配偶者控除の対象であること」については、納得がいきませんでした。確かに、企業としては、国の基準に従っておればよいので気楽ですが、これでは、企業の主体性も何もありません。実際、年末調整後の税務調査で、配偶者控除が否定された場合、家族手当の返却も求められるというような悲劇(喜劇?)があちこちの企業で起こっています。

 家族手当について、福利厚生の一環というとらえ方で肯定する意見もありますが、私は、それはやはり違うのではと思います。配偶者手当や子ども手当については、非婚化や少子化の防止策として社会的な意義は確かにありますが、それは、国家が福祉政策、社会政策として行うべきであり、その部分を企業に求めるのはおかしいと思います。

 企業としては、やはり、能力・成果に基づく処遇を基本として、給与体系を構築すべきです。その上で、企業独自の考え方で、独自の基準で、家族手当を設定するなら、それはそれで良しとしましょう。

 今回の配偶者控除の見直しが、女性のみならず、各人の多様な働き方を許容し、促進するようなものとなることを期待しています。

(今回、住宅手当については、家族手当とはまた違った論点があり、議論が拡散するので、敢えて触れませんでした。ご容赦ください。)


 特定社会保険労務士   坂本 公則
E-MAIL:sakamoto-jksrj@kcn.jp
URL:http://www.sakamoto-jksrj.net

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