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発達障害について理解し支援を広げ、誰もが自分らしく生きられる社会をつくる

発達障害に対する人々の理解を深め、社会を変えていくプロ

武山弥生

武山弥生 たけやまやよい
武山弥生 たけやまやよい

#chapter1

発達障害に関する問題は、当事者や家族だけの問題ではない

 「当方では、発達障害者とその家族が、豊かで実り多い社会生活を営むための活動や研究を行っています。本人、家族ともに周囲との摩擦で不安や混乱を抱えるなど、心理的なケアが求められることもあるため、夫と二人で国家資格である公認心理師を取得し、専門性に基づいた福祉サービスに力を入れています」

 そう語るのは、2008年に発足した「シーズ発達研究所」代表理事の武山弥生さん。発達障害への理解を促す種(シーズ)をまき、地元の関係事業者や企業、住民など、さまざまな資源と結びつけることで、種が育つ豊かな土壌(地域社会)を作ることをミッションに掲げています。

 「発達障害の早期発見に努め、自立や社会参加を後押しすることを定めた『発達障害者支援法』が2005年に施行されました。少しずつ世間の捉え方は変化していますが、当事者や家族が望むサポートを十分に得られていないのが現状です」

 武山さんのもとでは、発達障害について理解を深めてもらうための勉強会や講演会を開催するほか、就労継続支援B型事業所やグループホームを運営。本人だけでなく保護者、特に子どもと密接に関わる母親のカウンセリングも行っています。

 シーズの原点となったのが、アメリカの学生運動やフェミニズム運動でスローガンとなった「The personal is political(個人的なことは政治的なこと)」という考え方です。
 「私どもとしては、発達障害があることをその人や家族だけの問題とするのではなく、社会的な問題として地域全体で受け止め、向き合える世の中になってほしい。そう願っています」

#chapter2

わが子のために保護者として奔走したことがその後の活動につながる

 武山さんが発達障害と関わるようになったのは、わが子が療育プログラムに参加したり、言葉の遅れがある児童などを対象にした「ことばの教室」に、小学校時代お世話になったからです。
 「1990年代当時は、学校で友だちとトラブルがあったり、集団生活になじめないと、母親による『愛着障害』という扱いをされました」

 育児に翻弄されていた武山さんは、幼児期の教育について勉強しようと保育士の資格を取りますが、教科書にも発達障害の記載はなかったとか。
 「発達障害に関する情報がなかった時代なので、『全ての責任は母親にある』とされるのは仕方がなかったかもしれません。しかし、どんなに一生懸命にやっても、家族や友だちからも分かってもらえないのは本当につらかったですね」

 発達障害をもつ子どもたちの保護者も同じ思いをしているはず。悩みを共有して語る場所が必要と「親の会」を立ち上げます。
 「私と同様、母親の育て方が悪いと言われてきた方がたくさんいました。心を開いて話ができるようになると『自分の子どもと死のうと思ったことが一度はある』と、ほとんどの方が涙を流すんです。それほど、母親たちは追い詰められていました」

 一人で耐えてきた境遇を分かち合った「親の会」のメンバーと、行動を起こします。地方でも発達障害の情報を得ようと、東京で活躍している医師や著名人の講演会を開き、学びの機会を設けました。こうした努力が、後の「シーズ発達研究所」につながります。

武山弥生 たけやまやよい

#chapter3

心理相談、教育相談だけではなく、実社会で役立つソーシャルワークが必要

 活動を続ける中で子どもは成長して大人になり、当初は学習支援が中心でしたが、就労支援へと事業内容が変化しました。

 「重度でない発達障害の子どもが働ける職場はまだ少ないので、利用者の特性に合わせて作業開発をするなど、自分のペースで、できることに取り組める就労継続支援B型事業所『アトリエシリーズ』を2020年にスタートしました」

 さらに、2021年に家庭的な雰囲気のもとで入浴、食事などを提供する男性用の共同生活援助事業所(グループホーム)を、2022年には女性用を開設。地域の中での居場所づくりに尽力しています。

 「生活が安定しないと、仕事を含め何事も継続するのは難しいでしょう。落ち着ける場所があってこそ心身が安らぎ、自分らしく生きていけるのです。また、人生には娯楽も欠かせません。グループホームでは音楽を奏でたり、 美術活動をしたり仲間と楽しく過ごせる環境を目指したいですね」

 武山さんは、障害のある人に寄り添い、暮らしの中の困り事に応える「相談支援専門員」になるために、2022年度中に指定特定相談支援事業所の開設準備をしています。

 「公認心理師や高校のスクールカウンセラーとして多くの方にお会いしますが、心理相談や教育相談の限界を感じています。話を聞くことはもちろん大切ですが、一人一人が実際に生活をする中で必要な知識やスキルを身に付けないと、現実的な解決に至らないからです。今後は若い世代の専門家の育成に力を入れ、共生社会づくりのために実態に即したサービスやサポートを強化していきたいですね。意欲のあるスタッフを求めています」

(取材年月:2022年7月)

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武山弥生

発達障害に対する人々の理解を深め、社会を変えていくプロ

武山弥生プロ

発達障害支援

一般社団法人シーズ発達研究所

我が子に発達障害があった経験から、発達障害を持つ方や家族が地域の中で豊かに生活できるように幅広い支援活動を行う。保育士、公認心理師の資格を有し、専門性がある活動をしているのが特徴

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