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宮島敏

酒造りと写真を通して信州の大自然を表現するパノラマ写真作家

宮島敏(みやじまさとし) / パノラマ写真作家

合資会社宮島酒店

コラム

SDGs その先の未来へ ~酒造りを通して持続可能な社会を~ 【2】パラダイムシフト

2021年7月17日

テーマ:SDGs

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: マーケティング戦略経営戦略ビジネスモデル

信濃錦SDGsロゴセット
 今回の新型コロナウィルス禍は、オイルショックやリーマンショックのような人間が作り出した経済システムの不備ではなく、自然界と人類との闘いであり、ヒトという生物種の存亡に対する危機さえ感じます。このことは、コロナ禍が終息した後に戻って来る日常が、何事も無かったかのようにはならず、パラダイムシフトの大波を覚悟しなくてはならないことを意味します。
 あるいは、新たな感染症と共存し続けなくてはならない状況が「ニューノーマル(新常態)」になるとするならば、それ自体がパラダイムシフトであり、いずれにしてもコロナ禍をきっかけとして、もともと燻(くすぶ)っていた現状の価値観に対する「違和感」が、新たな価値観を求める動きに力を与えることになるでしょう。
 パラダイムシフトとは、価値観の劇的な変化、つまりその時代において当然のことと思われていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的に変化することを指します。分かりやすい例としては、天文学における「天動説」から「地動説」への劇的な変化が挙げられ、「コペルニクス的転回」とも言われます。
 価値観が劇的に変わり、場合によっては今までの考え方や見方を180度変えなくてはならないこともあります。

 科学的な発見とは違いますが、近年、私たちの身の回りでもパラダイムシフトと言えるような「破壊的イノベーション(Disruptive Innovation)」が起きています。
 よく引き合いに出されるのは、SONYのウォークマンであり、AppleのiPhoneです。
 これらの登場によって、既存のライフスタイルやそれを支えた産業、日本独自に進化した携帯電話はガラパゴス携帯とさえ呼ばれて、とても短い間に隅に追いやられてしまいました。

 ハーバード大学のクリステンセン教授が唱えた「破壊的イノベーション理論」によれば、「新興企業の新たな価値観を持つ製品は、主要企業の市場を最初は『さざ波』のように下の方から静かに侵食していくが、既存の経済システムの中核と思われた企業でさえ、知らぬ間に市場から退場させられることがある」と説いています。
 今までの国際社会は、経済が優先され、その上に社会があり、環境は二の次であるかのような構造をしていました。産業革命以降に人々が手にした豊かな生活は、地球の環境を引き換えとしてきたのです。
 SDGsは、人類が抱える数々の問題に対して、国際社会として歩むべき道を示したものです。その理念の中では、まず安定した地球環境が基礎にあり、その上に社会生活が営まれ、経済活動は環境と社会が整ってはじめて成り立つのだということが示されています。

 手間をかけた有機野菜ならば、形が不揃いであっても地元のお店で無駄なく美味しい料理となって、健やかな生活に繋がります。環境に優しく地域経済が循環する取り組みが、100年後の未来を作るのではないでしょうか。
 国際社会がSDGsを採択したのは、今までの「経済>社会>環境」という方向から、「環境>社会>経済」という方向へのパラダイムシフトを図り、長年の「違和感」を解消する必要性に気づいたからに他なりません。
 今回のコロナ禍は、20世紀には「さざ波」であった気候変動が、22世紀に向けて全地球的な大波となって押し寄せて来ることに備えさせるため、たとえ新たな価値観に沿えない既存の仕組を隅に追いやることになっても、急いでSDGsに取り組みなさいという、 21世紀の人類に対する地球そのものからの警告なのかも知れません。

 日本酒は、今まで何度もパラダイムシフトの洗礼を受けて来ました。
 第二次大戦の頃には、食糧としての米の需要が優先され、それまでの酒が純米醸造酒であったのに対してアルコールを加えて増量するようになったことや、酒を腐らせてしまう「火落菌」対策のため、明治期より防腐剤として加えられていた「サリチル酸」を、世界保健機関(WHO)などからの指摘を受け全廃しなくてはならなくなったことも、パラダイムシフトと言えるでしょう。
 特にこの数十年の流れを見ると、ナショナルブランド(NB)と呼ばれる大手銘柄が主流とされ、NBは一級酒、地方の地酒は二級酒という棲み分けがされていた時代に、地方の小さな蔵元たちが、品質の高い酒を造ることによって市場構造を変化させたこと、さらには特級酒として出荷されることが多かった大吟醸酒を、敢えて級別審査を受けずに二級酒のまま出荷するなどして、国の課税システムであった「級別制度」を無意味化させたことも、パラダイムシフトではないでしょうか。

 級別制度が無くなったあと、それに代わるものとして制定されたのが日本酒の「製法品質表示基準」です。
 その中で規定される「特定名称酒」には、大きく分けて「純米醸造酒」と「醸造アルコール添加酒」があり、特定名称酒に該当しない「普通酒」と呼ばれる酒では醸造アルコールが増量のために用いられるのに対して、「本醸造酒」や「吟醸酒」「大吟醸酒」といった「純米」の表示のないものはその使用量が制限され、すっきりとした味わいや香りを引き出すために用いられる、とされています。
 この基準は、制定後に「純米酒」の精米歩合の制限が撤廃されるなどの手直しをされながら現在に至っていますが、日本酒の品質に対する基本的な考え方は、「原料米の品質」と「精米歩合」の二本立てと言えます。

 「原料米の品質」については、農産物検査法での3等以上の玄米を用いることが原則とされ一定の線引きがあり、また「酒造好適米」という酒造りに適した米の開発が、地域の風土に合わせて進められています。
 一方の「精米歩合」については、大吟醸酒で50%以下、吟醸酒で60%以下などと規定されているため、「高品質=高精白」という価値観が定着し、表面の90%以上を削り落とした精米歩合1桁台という、ある意味で究極の日本酒まで造られるようになって来ています。
 過度なエネルギー消費の抑制や、食糧廃棄率の改善が叫ばれる中で、日本酒がこのままの姿にこだわり続けるのであれば、その在り方を国際社会から問われ、ガラパゴス携帯のように知らぬ間に市場から退場させられることにもなりかねません。

 SDGsへの取り組みの中で日本酒に求められているのは、「高品質=高精白」という価値観からの脱却はもとより、環境や水系を維持し地域のレジリエンス強化にも繋がる、土作りからの顔の見える米作りなど、等級や品種だけではない原料米の持つ価値を評価し、さらには酒税法や製法品質表示基準の大幅な改定までをも含めた「パラダイムシフト」なのではないでしょうか。
 その意味では、日本酒の本質が問われているとも言えるでしょう。

 かつて貿易交渉の中で、洋酒に対する酒税が高いことを指摘され改定されたことがありました。その当時、「外圧に屈した」とも言われましたが、SDGsも国際社会から求められている点では「外圧」なのかも知れません。
 しかし、その実現を本当に求めているのは外圧などではなく、地球そのものであるということを、忘れてはならないと思います。

・SDGs その先の未来へ【3】多様性の喪失
 https://mbp-japan.com/nagano/miyajima/column/5090045/

この記事を書いたプロ

宮島敏

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