医療処置が必要な患者を搬送する、医療特化型の民間救急サービスを展開（2/3）

福祉タクシーから民間救急サービスへ。「全民救」加盟で、より幅広い活動が可能に

　15年ほど前に父親が脳卒中で倒れたことがきっかけで、この事業を始めたという中村さん。当時は介護タクシーもなく、父親を搬送する方法を探した結果、たどり着いたのが福祉タクシーだったと言います。

　それまでは父親が営む会社で働いていましたが、自ら福祉タクシーの開業に踏み切りました。いざ始めてみると、病院の相談員からいろいろなことを聞かれたそう。「点滴を下げたまま乗車できるか」「酸素ボンベは載せられるのか」など、医療の専門家のいない福祉タクシーではカバーしきれない部分が多くあることに気づきました。

　「それならば、当時はあまり普及していなかった民間救急を目指そうと、福岡にある『全民救（全民救患者搬送協会）』の九州支部に出向き、詳しい話を聞くことにしたのです」

　何はともあれ専門知識を持つスタッフが必要だということで、看護師を雇用することからスタート。ですが、毎日必ず仕事があるとは限らないため、安定した雇用にはつながりませんでした。ならば自分で勉強するしかないと、一次救急、二次救急と学び、3年間かけてインストラクターの資格を取得した中村さん。ドクターや看護師に教える立場となり、そこで地道に信用を獲得していきました。

　立ち上げ当初はチラシを作って配るなど一人で懸命に周知活動をしていたそうですが、なかなか思うような結果が得られなかったと言います。その後、全民救に加盟したことで活動もしやすくなり、知名度も上がりました。今や全民救は厚生労働省も認める団体となり、中村さんは「この団体の看板を背負っているのだというプライドを持ち、どんな依頼も引き受けていくつもりです」と、意欲を見せます。

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