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杉村基樹

保育施設を対象とした人材育成のプロ

杉村基樹(すぎむらもとき) / 人材育成コンサルタント

株式会社ネクサス

コラム

保育士に求められる能力とは?|保育園における良い人材を考える

2022年5月13日

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 人材育成 研修組織開発

皆さん、こんにちは。
今回のコラムのテーマは「良い人材」です。

保育園における「良い人材」とは、どのような保育士をイメージしますか?
何ができることを期待していますか?

子どもを惹きつけるのが上手な人
絵本の読み聞かせが上手な人
子どもの発達を理解している人
子どもの最善の利益を理解している人
………
いくらでも出てきそうです。


保育士は専門職なので、プロにふさわしい専門性を期待したくなるのは当然です。

しかしながら、人材に求める基礎能力や課題について実際に現場で話を聞いてみると、意外にも保育の専門性より社会人や組織人としての能力が話題にあがることが多いようです。

・体調などの自己管理
・時間や期限を守る
・挨拶や笑顔
・自己理解
・文章をまとめる力
・アイデアと工夫
・冷静な判断力
・危機対応力
・仕事の段取りや優先順位
・報告や相談
・周囲とのコミュニケーション
・主体性や積極性
・感情コントロール
・周囲への気配りと配慮
・空気を読んで動く…



「空気を読む」のが基礎能力かどうかわかりませんが、これらは実際に現場で聞こえてきた内容です。

こうやってみると、保育園でなく一般企業とあまり変わらない内容だと思いませんか?
保育の専門性はできて当たり前ということなのでしょうか。


専門性だけでは不十分|保育士に必要な能力とは?

実際のところ、保育士に必要な能力は専門性に関わるものだけではありませんよね。

普段から子どもだけでなく保護者とも関わる仕事ですし、保育はチームワークも重要です。そうなると人と関わる能力が求められます。

また、保育士を続けていれば後輩ができて、仕事を教えたり、チームをまとめる立場に立つこともあるでしょう。

それだけではありません。

同じように専門職である医者の場合を想像してみてください。

人に紹介したくなるような「良い先生」は、知識や技術だけでなく、患者の話をよく聞いてくれたり、気持ちを汲んでくれたり、専門家である前に人として信頼できる…という理由があったりしませんか?

専門職は、その分野における専門的能力が重要な職業であるー。

それは事実です。

それとは別に、その専門的能力を周囲との関係性の中でより良く発揮するためには、土台となる人間性や、対人関係能力が求められます。

保育士の場合、他の専門職と比べてもそれらの影響がとても大きいように思います。

子どもを預ける保護者の側とすれば、専門性が高いにこしたことはないけれど、それ以前に人として信頼できることのほうがむしろ重要でしょう。大切な我が子と一日の大部分を過ごすわけですから。
ここは経験の長い、短いでは語れないところでもあります。

また、保育園もICT化が進み、保育の計画や記録もパソコンで作成したり、保護者との連絡もメッセージアプリを使うようになったりと10年前とは様変わりしました。

文章をまとめる、伝えるという目的は同じでも、手書きからPCに道具が変われば、使う側のスキルも入れ替えが必要になるのではないでしょうか。

時代が変化すれば、必要な能力も、今まで常識と考えていたようなことでさえも変化します。


保育の専門性だけに偏らないバランスの取れた能力開発

こうして見ると、保育士が専門職である一方、総合職のようでもあります。
専門性を高めることを第一としつつも、その専門性が職場で発揮できるように、専門性以外の能力開発も行っていく必要がある。

つまりバランスの取れた人材育成が大切です。

例えば専門性は高いが周囲と協働できない…他の職種はどうかわかりませんが、保育の仕事では支障がでませんか?
周囲の人々との関わりの中で、保育園のチームの一員として活躍できるような能力開発が必要です。

そう考えると、学ぶ対象となるテーマはいくらでもありそうです。最初に挙げた、様々な人材としての基礎能力も納得がいきます。

私がコンサルティングでお手伝いする際、能力開発を次の4つの分野に分けています。

  1. 専門スキル
  2. 業務スキル
  3. マネジメント
  4. マインド


それぞれの分野で必要な能力をさらに具体化して、バランス良く高めていけるように、組織として保育士の成長を具体的なマップにします。
それらを主体的に取り組めるように支援しましょうとお話ししています。

コミュニケーションやマネジメントのような分野は、日常の仕事だけでは磨くことが難しいこともありますから、外部研修などで学習機会を設けるなど工夫するといいでしょう。


それから、新人とリーダーでは、当然ながら求められる能力も変わってきますよね。
その職員の成長段階において、何が必要なのか、何を学ぶとより活躍できるのか。
重要なのは、職員一人一人の成長ステージに応じた学びの機会を設けることです。

この学ぶタイミングというのはとても重要で、できるだけ早いうちから学んでおいた方がいい…という考えも否定しませんが、その人がいま直面している課題や状況に合わせて学んでいくほうが、経験を通じて得られる学びがより深くなるはずです。

知識として知っているのと、実際にやってみるのとでは全然違いますよね?

成長ステージにあわせて学ぶ機会を設けた方が、

「ふーん、そうなんだ」ではなく、
「やっぱりそうなんだ」

という実感が得られること間違いなしです


名選手名コーチにあらず|重要な保育士のマネジメントスキル

名選手名コーチにあらずとよく言われます。

保育の仕事でも、保育士として優秀であることと、リーダーとして優れていることはイコールではありません。後輩を指導することやチームをまとめたりすることは、保育とは別の種類の能力なので当然ですよね。

にもかかわらず、マネジメントを学ぶ機会もないままリーダーを任せられることが実際には多いのではないでしょうか?

迷いながらもリーダーとして奮闘する職員さんには敬意を表しますが、できることならその立場になる前に「準備運動」をさせてあげたいところ。

キャリアアップ研修に「マネジメント」分野が設けられているように、ミドルリーダーの育成は今後の園運営における重要課題と捉えられています。

「人を育てる人」を育てないと、保育の質の向上は図れない。
実際のところ、どんなに優れた保育の考え方やメソッドを備えていても、それをするのは人です。力がつかないと質は担保できません。
だから、保育園には新しい人材を育てられる人が必要。マネジメント力のある人が必要なのです。

とはいえキャリアアップ研修の15時間だけでマネジメントをマスターできるわけではありませんが、マネジメント分野が要件化されただけでも大きな進展でしょう。

実は、後輩指導に向きあうと、一番成長するのは後輩よりもリーダー本人。立場が人を育てると言われるように、リーダーという立場も人材育成に上手に活用したいですね。


保育士として、チームの一員として、そして一人の人間として

改めて、皆さんが考える「良い人材」とはどんなイメージでしょうか。
職場には、それに近い保育士がロールモデルとしていらっしゃいますか?
いるとしたら、なぜそう思うのでしょうか?

保育園それぞれに目指す保育があると思います。
子どもの最善の利益のための保育を実現することについてはどの園も同じだと思いますが、園の理念や方針が違えば園ごとの個性もきっと違うものになりますよね。

そうすると、人材に求める姿勢や能力も変わってくるでしょうし、共有したい価値観もちがってくると思います。
ということは、それぞれの園で「良い人材」の定義もそれぞれで変わってくる。
皆さんが思う「良い人材」の要素を書き出してみてはいかがでしょうか?
それぞれ違うからこそ、私たちの園が目指す保育者の姿を共有しておく必要があると思います。

理想の保育を実現するために、一人一人が園の「顔」として活躍できるように、そして職員が成長を実感できるように。
保育の専門性に限定せず、学ぶことが楽しく思える職場づくりを考えたいところです。

では、また次回のコラムでお会いしましょう!

こちらもご覧ください↓↓↓
☆保育園の経営者向けお役立ちコラム
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この記事を書いたプロ

杉村基樹

保育施設を対象とした人材育成のプロ

杉村基樹(株式会社ネクサス)

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