センター試験を廃止して「達成度テスト 基礎&発展」に
2013年10月23日京都新聞朝刊第一面の「凡語」欄にて、韓国の入試制度を紹介していました。
ここに一部引用させていただきますと、
「▼その1点を競う過酷な入試制度を続けている国がある。お隣の韓国だ。日本のセンター試験に当たる大学修学能力試験で、国立、私立を問わず、すべての大学志願者が受験する▼大学ごとの2次試験には小論文や面接が課されるが、ほぼこの1日だけの試験結果が合否を左右する。韓国の大学進学率は日本より高く70%を越える。(中略)▼この試験は、韓国では成人式よりも重要な人生の通過儀礼とされる。今年の試験は11月7日に迫っている。(中略)▼公正で平等な評価と人材選抜は、中国の科挙制度以来、各国に共通する宿題でもある。10代でのたった一度きりの試験で人生がきまるとは思わないが、その在り方を考える大人たちの責任は重い。」
冒頭の1点を競う試験が“過酷”とは思いませんが、非常に興味深い内容です。
記事によると、日本の大学入試センター試験と違って、韓国の大学修学能力試験は、大学志願者は全員受験しなければならず、この試験でほぼ合否が決定し、1回限りの本番の学力テストでとった点数によって合否を判断するという、明確で単一の評価基準が特徴的です。
1点刻みの点数に非常に重きが置かれており、まさに、今日本で政府の教育再生実行会議が槍玉にあげている「知識偏重の1点刻みによる評価」といえます。
一方、2013年10月24日の朝日新聞朝刊15面に、アメリカマサチューセッツ工科大学(MIT)の入学者選抜責任者スチュアート・シュミルさんのインタビュー記事が掲載されていました。
ここに一部引用させていただきますと、
「何か一つの要素をとくに重視するのではなく、大学進学適性試験(SAT)や高校の成績、エッセー、高校での活動実績、複数の推薦状に加え、インタビューの結果もすべて総合して、個々の生徒の全体像を描く、というのが基本です。その上でMITにふさわしいかどうか判断します。(中略)すべての学生に持っていてほしい素養があり、その上で、できるだけ多様な学生に来てほしい。(中略)極めて重要なのは、学生全体として多様性に富んだ集団であることです。」
大学が明確なアドミッション・ポリシーを持ち、志願者を学力だけでなく多面的に評価して合否を決定するというやり方、そして、学生の多様性を大変重要視している点は、先の韓国の大学修学能力試験とは対照的です。
そのような違いの背景には、文化の違いが大きく影響しているといえそうですが、さて、日本の入試制度は、この先どのような方向を目指しているのでしょうか?
政府の教育再生実行会議は、現在の報道を総合すると、
・1点刻みの学力評価によって合否が決まるやり方はしない。
・大学の2次試験は面接や論文などで多面的に人物評価をするように促す。
という方針で間違いないようです。新テストも複数回受験できるように検討するなど、これまでの学力一辺倒による合否判断から脱却しようとしているように思えます。
東京大学と京都大学で、2016年度入試から「筆記試験以外の入試」、すなわち、東京大学で推薦入試が、京都大学で特色入試がそれぞれ導入されることが発表されたことも、同じ方針に基づいたものだと言えるでしょう。
すなわち、大学進学のための学力試験(センター試験に変わる「新テスト」または「達成度テスト(応用)」をこれまで通りに課し、学力を担保するが、韓国のように学力一辺倒の合否判断はせず、MITのように人物を多面的に評価するウエイトを高め、多様な学生を獲得しようという方向をめざしていくものと思います。
大学のアドミッション・ポリシーや入試制度は、高校生の入試勉強のありかたや進め方に多大な影響を与えます。やまぎわ高校ゼミでは、これまでも「人間力」を高めることを指導方針としていますが、今後は「学力」だけではなく「人間力」の育成もますます重要になってくると思います。