塗装一筋38年、手抜きのない手塗り仕事で住まいを守る塗装職人（3/3）

長年培った熟練技術を若手に伝承したい

　京都で生まれ育った奥田さんは、15歳の時に塗装業界に飛び込みました。始めは塗装の仕事を任せてもらえず、毎日真っ黒になりながら天井の蜘蛛の巣を払ったり、錆を落としたりしていたそうです。「他の職に興味が移って転職したこともあるのですが、現場の楽しさを忘れることができず、すぐに塗装業界に戻りました」と懐かしそうに話します。その後、尊敬する先輩職人から“打ち込むことで仕事は面白くなる”と教わり、脇目も振らず塗装職人としての修行を積んできました。

　1992年、塗装用具をトラック1台に詰めて独立。塗装業を始めたものの、社員はおらず自分一人で仕事を切り盛りする毎日だったと振り返ります。「独立した時は、『お前が親方になるのか』と驚かれ笑われました」。やがて、丁寧で綿密な仕事ぶりが評価され徐々に依頼が舞い込むように。職人仲間に助けられながら仕事を増やし、2007年には南区に現事務所を構えるまでに成長。「とにかく丁寧な仕事をすることを心掛けてきました。『あなたに頼んで良かった』とお客様に言っていただけるのが一番の喜びです」とにっこり笑います。

　塗装業界は後継者不足と嘆く奥田さん。今後は、若い世代の育成に力を注ぎ、長年培った技術を受け継いでいきたいと意気込みます。「15歳で職人になり苦しい時期もありましたが、仕事を通じて大きく成長できました。先輩職人やお客さまとの出会いが、私という人間を磨いたのです。今度は私が若い人を育て、お世話になった地域の皆様に恩返ししたいですね」

（取材年月：2017年9月）

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