コラム
研究に携わる人がやってはいけない最たる事例
2021年5月11日
京都コムニタスではそろそろ研究計画書作成に着手する人が増えてきています。当塾では、この研究計画書をはじめとする書類作成に力を入れています。もちろん、よい書類は受験において大きなアドバンテージになるからです。この研究計画を作っていくにあたって、必修の授業の中で様々なポイントをお伝えしていますが、実際に作るのは授業外で個々に一緒に作っていきます。この時期はまだ時間に猶予がありますので、あわてず、じっくりとその人の考えを煎じ詰めていきます。この煎じ詰めの作業の時に、間違った思考や余計な思考が入ると、純度の低いものになります。余計な邪念を外して、ゼロベースで真っ白の状態から考えていくのが妥当です。
そんな研究計画書を作ろうとする人は、このコロナ禍は私たちのこれからについて学ぶべきことがたくさんあります。あらゆる分野の人が、他人ごとにならずにしっかり目を向ける必要があります。その中で、是非「やってはいけない最たる例」として、内閣官房参与が、日本のコロナ感染状況を他国と比べて「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止かというと笑笑」と発言をしたのだそうです。報道をいくつかあげておきます。
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この発言に対する批判は、五輪以外の問題を指摘してくれています。
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五輪が開催できるという人の意見
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メディアの報じ方というのは、いかに読み手をミスリードしようとしているかを競っているようで、複数見ると、どれを見ても失笑してしまいますが、よく見るとある程度の事実を知ることもできます。要は、嘘ばかり言うメディアといえども、共通して伝えていることは、概ね事実と見ても問題ないと考えられます。例えば、どれだけ政権が無茶苦茶を言っても、コバンザメのように寄り添う産経と、誰がなんと言っても、政権否定に全精力を注ぐ東京新聞が、結託する可能性は低いので、この両者が共通して伝えている記事のパーツは、概ね事実でしょう。
あとは、今回は産経は、ほとんど触れておらず、東京新聞は鬼狩りの日輪刀を振り下ろすがごとく力一杯報じているところを見ると、対象の内閣官房参与は、政権よりの人物で、世間的に見て、非常識な発言をして、それが政権に悪影響を与える可能性が高いと予測することができます。
研究に携わる人は、研究者としての目線で、正しいもの、間違っているもの、適切なもの、不適切なものを見極める訓練が必要です。あともう一つ、やってはいけないことをしている人の手法を見抜くことも大切です。
本件の内容としては、この内閣官房参与は、大学の先生なのだそうですが、少なくとも研究者としてやってはならないことをしています。内閣官房参与の発言としては、ここでは知ったこっちゃありません。
まず、「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止かというと笑笑」という問題発言です。
要は、「さざ波だから五輪開催可能」という主張が妥当か否かです。例えば、亡くなった方々に対する冒涜であるかどうかは、ここでは情報がないので何も言えません。
日本の感染状況が他の国と比べてどうか、という理解は、個人の自由ですので、「さざ波」と言おうが、大波と言おうが、嵐の前の静けさと言おうが、これから収束する波と言おうが、勝手に言えば良いことです。もちろん、批判はあるでしょうから、受け止めねばならないでしょう。ただ、この方、このさざ波という表現は、別の人の表現を引用したと言いますが、意味不明な釈明です。この一文の結論は、「これで五輪中止かというと笑笑」ですので、論点はさざ波であるか否かではありません。この方は、五輪中止を言う人をあざ笑っているわけです。となると、「日本はさざ波なのだから、五輪中止など笑ってしまう」と言いたいのだと解釈して問題はないでしょう。しかし実際の問題はさざ波であろうが、なかろうが、「各国の波のデータ」を見た上で、五輪という世界中が東京(マラソンは暑いから北海道)に集まるイベントを開催できるかどうかです。日本がさざ波なら、比較しているわけですから、比較対象となる明確に大波の国からの選手を受け入れられるのか、今の時点で、そういった国々からの出場選手とこの国の人々の「安全と安心」が保証されているのか、その国々は7月に選手を派遣すると言っているのか、実際のところ、何と言っているのかについて、全く情報がないのです。参加国は200以上になるはずですが、それらの国々が7月に選手を東京に送ることができると発言しているなら、そう報じるべきですし、今のところ、どの国が慎重姿勢なのかの情報があってしかるべきです。五輪は一国、一競技ではないのです。テニス、ゴルフ、サッカーなど一つの競技を開催するだけでも相当な労力がかかっているはずなのに、オリンピックでは33競技があるとされます。日本がさざ波だからと言って開催できる根拠になどなろうはずもありません。むしろ開催国なら大波の国の状態に目を向けて、彼らとどんな話合いがもたれているか、彼らがどのような思いを持っているかの情報を流す必要があるはずです。
ましてや総理大臣の五輪開催に関する答弁についてこの記事は当然の指摘をしていると思います。7月近くなるにつれて「本当に開催するのか?」という疑念の方が多いのが世相の空気であろうと思います。
さざ波は五輪開催の根拠になどならないのです。
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