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井上博文

大学院・大学編入受験のプロ

井上博文(いのうえひろふみ) / 塾講師

株式会社コムニタス

コラム

文章で伝えたいことは読んで欲しいことです

2021年4月10日

テーマ:実は難しい研究計画作成方法

コラムカテゴリ:スクール・習い事

京都コムニタスでは、研究計画書や志望理由書などの書類の作成に力を入れます。もちろん、受験戦略として、良い書類はアドバンテージになり得るからです。
良い文章の基本は読み手にとって読みやすいことです。読みやすいことの条件はたくさんありますが、その中でも最も基本的なことは、どのような読み手がいるかを予想して書くことです。私たちで言えば、確かに○○大学に対して書類を出すのですが、それだけではなく、必ず読んでいただく先生がいますので、その先生をイメージして書きます。過去の面接の経験から、この先生は、とても詳細に読んでくださるので、理路整然と書いた方がいい、とか、この先生は尺度は2つ以上書いておかないと、研究とは見なさないと、面接で言われるから注意しよう、とか、この先生の本を引用するときは、具体的にどこが良かったかを言えないと、かえって逆鱗に触れる、などなど、リアル過ぎる話ですが、実際に私たちはここまで考えて文書を作ります。
その意味で、いかなる文書を書くときでも、不特定多数の人に対して書くのではなく、読んでくれる人をイメージして、その人が読んでくれたら、どう思うだろうか、ということを想定して書くことが基本です。特定の個人を意識せずに「国民」のためにメッセージを発して、受取手も反論をしないという関係があるのは、この国では天皇陛下ただお一人ではないかと思います。

私たち一般人は、天皇陛下のようなメッセージを発することはできませんし、求められてもいません。よりピンポイントの人を目がけて文章を作ることを意識しないといけません。例えば、今、書籍出版の話をいくつか抱えているのですが、学術書は多くても500部くらいが限界値です。つまりいくら壮大な論文を書いても読んでくれる人は、同業者500人程度しか想定できないということです。この業界においてはそれでも多い方だと考えるのがむしろ一般的です。

繰り返しになりますが、京都コムニタスでは、500人どころか、一つの大学の数名の先生あてに文章を書きます。そこまでピンポイントで書かないと、読み手には伝わらないのです。何度か言いましたが、私の師匠は、志望理由は、愛の告白だと思えと昔から言っていました。愛の告白は、通常同時に複数には発しませんし、世界中の人に向けて発信することもありません。普通は、ある特定の一人の人に対して発します。だから「あなたが第一志望(一番好き)なんです」と言うと、一人に向けた言葉ではないく「第二」「第三」を想定しているから、コントのようになってしまうわけです(最近何かのCMでこのシチュエーションがあると聞きました)。これは「相手」がぶれており、メッセージを発した側に問題があるということになります。

また、このようなメッセージを発する人は、読み手との関係も想定できていないことがほとんどです。私は最高裁まで裁判をしたことがありますが(厳密には私ではなく相手方ですが)、裁判書類は、相手方に読ませるものではなく、裁判官に読んでもらうために書きます。だから裁判官の心証を悪くするようなことを書いてはいけません。そのあたりの空気は、素人にはわかりませんので、弁護士などプロに相談するしかありません。実際、私も弁護士の先生に何度もたしなめられました。「君はもっと冷静に文章が書ける人かと思ったがね」と叱られて、ちょっとへこんだこともあります。裁判では怒り感情に任せて文章を書いたり、もちろん、嘘をついて、他人を誹謗中傷するのも論外です。

以上から、文章で伝えたい事とは、読み手に読んで事ということです。その際、読み手を曖昧にせず、明確にしておかねばならないということです。ただ、読み手を想定する以上、その人は「読んでくれる人」です。「読んでくれる人」は「読める人」です。この点を信頼することが大切です。研究計画や志望理由なら大学の先生、裁判なら裁判官は、その分野の専門家です。理解できないなどあろうはずもないわけです。したがって、理解できないとすると、これは書き手であるこちら側の問題だという了解が必要なのです。こうして書き手と読み手の信頼関係が、見知った関係でなくともできるところが文章の良いところです。だから、「理解してもらえないかもしれませんが」とか「伝わるかどうかわかりませんが」とか「一人でも理解してくれる人がいれば」などを書く人は、読み手を信頼していないわけですので、信頼関係はできません。自分に問題があると思わず、こういったことを書いてしまう人は多いのですが、これを独りよがりと言います。書いた文章を一文字残らず、正確に理解してもらう責任は書き手にあるのです。


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