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小泉達治

京都の街に貢献するデザインのプロ

小泉達治(こいずみたつじ)

有限会社コイズミデザインファクトリー

コラム

いきつけのBARを持とう

いきつけのBARはありますか?と、聞かれて「はい、あります。」とすぐに答えられれば一人前だと勝手に思っている。
BARといってもいろいろあって、HOTELのBAR、いわゆるショットBAR、年老いたバーテンダーが一人でやっているような鄙びたBARなど様々だ。この場合Cafe BARというのはちょっと違うし、今時の言い方でもない。

私が酒の味に区別がつくようになった25年ほど前、世はまさにバブルに向かって一直線という時代、映画ではリチャードギアとダイアンレインのコットンクラブやトムクルーズ、ポールニューマンのハスラーなどという、いかにも流行を狙った作品が人気をはくし、夜の街にはプールバーやショットバーが一気に幅をきかせた。

そういえば当時、あまりふつうに「BAR」とはいわなかった気がする。
みんななぜか「ショットバー」といっていた。そんな言葉はあの頃だけのものだが。
しかもそれはいわゆる飲み屋街に突然現れたやたらとおしゃれな店構えのものがほとんどであった。
時折、たった一人のバーテンダーがひっそりと常連だけを相手にやっているような店に、わきまえのない流行を追いかけた若造が急にどかどかと押しかけては顰蹙をかったりもしていた。

バーボンをロックで飲むということを覚えたのもこの頃だ。
週末ともなるとあちこちの「ショットバー」では、「ハーパー、ロックで」という台詞を聞かない日はなかった。
彼女を連れて、サスペンダーを付けただぼだぼのパンツをはき、パーティーでもないのに蝶帯とシルクのストールというスタイルで木屋町あたりをうろうろしたものだ。

その当時「ショットバー」に行くということは、流行にのっかている自分を確認しに行くことだった。
酒の味など元々あまりわかっていないのでバーボンかカクテルであれば良かったのだ。
ビリヤードのキューを足下に置いて、ナインボールのルールをカウンターの端っこにいるお目当ての娘に教えることが最もかっこいい口説き方だと信じていた。

それからかれこれ四半世紀。意外と年もとってみるものだ。
いまでは何軒の「ショットバー」に行ったことがあるとか、あのバーボンを飲んだことがあるとかないとか、サイドカーには何と何の酒が入っているとか、そんなことはもうどうでもよくなった。
うまい酒と気の合うバーテンダー、そして素敵なバックミュージックが流れていて、そこそこすいている店がベストだと思えるようになた。
20代の時のようにガールズバーの女の子をくどく必要もないし、第一そんなことはもうめんどくさい。
と、そんな言い訳が言い訳に聞こえないような年になったので、なおさら楽になった。

こういう楽な気分になるには、最低40年は生きなければならない。
もちろん30年しか生きていないのに40年も生きているように見えるというのは問題外だ。
ましてや未だに「ショットバー」などと平気で言っているようではどうしようもない。

そのくらい長く生きているとバーテンダーと話ができるようになる。
そして話ができるようになった店というのは必ず居心地がよくなるものだ。

私も10年ほど前まではもっぱらHOTELのBAR派だったが、ここ1,2年は祇園のある店に通っている。
通っているといってもそんなに頻繁に行くわけではなく、1ヶ月に1回程度のことだ。
その店はいつも私が行くと70年代のフォークや歌謡曲をかけてくれる。私の好みをバーテンダーがちゃんと把握してくれているのでいつもそのパターンだ。というか、バーテンダーも私と同じ趣味なのだ。
そのバーテンダーとはもう25年ほど前からの知り合いになる。私が独立して事務所を持った同じ頃に彼も店を持った。私が勝手に同志のような気がしていたので、しばらく行かない期間があってもまた結局その店になってしまった。

事務所のスタッフを連れて行くこともたまにあるが、いつもみんなは先に引き上げてしまう。確かに20代の若者に70年代のフォークや歌謡曲はあまりにもつらかろう。

飲む酒も以前のようにバーボンでないといけないということはない。並んでいる酒の中からその日、目についたものを選ぶ。たとえそれが日本製のウイスキーでも全く問題ない。サントリーの山崎やニッカの竹鶴などは、世界の銘品に負けることはないとも思っている。

ただ、一つこの店には決定的な難点がある。
それは居心地がよすぎて、ひどいときには5時間も6時間も居座ってしまうことだ。
ふつうBARというものは小一時間も飲んだらさっと引き上げるのがイキなそうだ。
そういう意味で私は全くイキではない。
次の曲が流れると、まるでドレミファドンかのようにイントロで歌手名や曲名を当てることに情熱を燃やす姿は、きっと傍目に懐メロBARで昔を懐かしんで飲んでいる、人生に疲れた50のおっさんにしかみえないことだろう。

この次もまたそんな昭和なことでは、昔のようにあのカウンターの端っこの彼女を口説くどころの騒ぎではない・・・。などと、イキがってみたりするところが50のおっさんらしい。

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