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コラム

誤訳訂正制度があるから安心?

特許明細書

2015年3月15日 / 2015年3月24日更新

日本では、平成6年の改正特許法(7年7月1日施行)で外国語書面出願制度が導入されました。
同時に、翻訳文の誤訳訂正ができるようになっています。

改正以前は誤訳が問題になる裁判が時々ありましたが、改正後、それも聞かなくなりました。
反面、少しくらい間違っても誤訳訂正できるから・・・・・という気の緩みなのか、あるいは他に理由があるのか、昔に比べると「安易な作業」が透けてみえる誤訳が増えたようにも感じます。

「制度上」可能だからといって、「いつでも」「簡単に」訂正できるわけではありません。
誤訳訂正の大前提として、あくまで外国語書面の原文に基づく誤訳訂正だということを、第三者が納得できるように説明しなければならないのです。

具体的にいうと、特許事務所では
 ・原文のどこに、何がどのように書かれているのか=誤訳となった原文箇所の特定
 ・それがどのように翻訳され、なぜ、不適切であるのか=誤訳の内容と、誤訳であるといえる理由
 ・どのように訂正しようとしているのか=訂正の内容
 ・なぜ、その訂正であれば適切なのか=訂正の合理性を裏付ける根拠
といったことを
 ・訂正したいすべての誤訳に対して個々に
説明した「誤訳訂正書」を作成し、特許庁に提出します。

場合によっては辞書や専門書の写しを資料として添付して、訂正が妥当であることを説明する必要も生じます。
特許翻訳者は、このような作業がなされていることを、十分に意識する必要があると思うのです。

いわゆる専門用語の誤訳の場合、専門資料に根拠を見いだすのは、さほど難しくないかもしれません。
ただし、特許事務所側では、適切な資料を「探す手間」が発生します。
資料のほうから、その訳語は僕に載っていますと手を上げてくれることはないですから、あたりをつけて探していかなければなりません。

専門用語以外の通常の単語では、英和や英英などの言語辞書を使うことが多いようですが、ここにも「探す手間」が発生します。
それでもまだ、資料が見つかればよいほうでしょう。

ときどき言うように、たとえば英和辞典に掲載されているのは単語の「意味」ではなく、「使用頻度の高い訳語」です。
そこには、すべての訳語が掲載されているわけではないですよね。
誤訳の訂正をしようとしたとき、最適な訳語が辞書に載っていなかったら?
資料を使うことなく訂正のための説明をすることに、どれだけ膨大な手間と労力を要するか・・・・

考えたこと、ありますか?

あるいは、これと真逆の問題もあり得ます。
昨今、某有名オンライン辞書の(不適切な)訳語を安易に使用した翻訳文が目立ちますが、仮にその訳語について誤訳訂正しようとしたとして、
それが明らかに誤訳だと証明しなければならなくなるかもしれません。

自分が特許事務所の実務者で、オンライン辞書の誤訳を証明する立場になってみてください。
見る人が見れば不適切だから・・・・では、不十分。
それをきちんと「証明」するのがいかに大変な作業であるか、容易に想像できるでしょう。

誤訳訂正制度は、ある意味で条件付きの救済措置のようなもの。
そこには、誤訳が誤訳である旨の合理的な理由/根拠を示すと同時に、訂正しようとする訳語が正しい旨の合理的な理由/根拠を示すという、「二重の証明責任」の可能性を常に伴います。

誤訳訂正可能だから、とりあえず訳しておけばよい・・・・・「ではない」のですね。

最後に、訂正審判の審決文をいくつかあげておきます。
これは権利化「後に」なされた誤訳の訂正に関連する書類で、誤訳訂正書そのものではありません。
本当なら、誤訳訂正書を実際に読むことができれば理想なのですが、残念ながら一般の翻訳者にはそういう機会も乏しいでしょう。
審決文は特許事務所ではなく審判団が書く文章なので、次善の策ではありますが、一般公開されている資料で誤訳訂正の実務を何となくでも知るための目的には、かなうのではないかと思います。

訂正2014-390138
誤り訂正コード → 消失訂正コード
FEC(前方誤り訂正:forwaed erasure correcting)コード → FEC(前方消失訂正:forwaed erasure correcting)コード
レートレス誤り訂正コード又は低レート誤り訂正コード → レートレス消失訂正コード又は低レート消失訂正コード

訂正2011-390090
次亜塩素酸水溶液 → 次亜塩素酸塩水溶液

訂正2014-390137
平行 → 並列 (英語の in parallel が対象になっています。)

訂正2011-390112
4.5以上のpH → 4.5より高いpH
ポリ(メタクリレート)アクリレートエステル → ポリ(メタ)アクリレートエステル
投与量ダンピング → 用量ダンピング
ほか、多数の誤訳を訂正しています。

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