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コラム

登坂能力の謎を解く

gradeabilityとgradability、同じ単語?違う単語?」からの続きです。

昨日、Weblio上の複数の辞書にあるgradability=登坂能力は誤用ではないかという話を書きました。
これについて、いくつかの角度から検討してみます。

【事実】
■研究社『新英和大辞典』第6版
gradeability (自動車の坂に対する)登坂(とはん)能力
gradability 「等級づけができること」「【文法】程度表示可能性」

■Merriam-Webster
gradeability the steepness of grade that a motor vehicle is capable of climbing at efficient speed
gradability なし
※ただし、形容詞gradableは動詞gradeの派生語として掲載あり

【検討】
ここで、英語の接辞を思い出してください。
-able  動詞・名詞などに付いて形容詞をつくる:訳は「~できる」など「可能」の意味。
-ability -ableで終わる形容詞から名詞をつくる:この場合の意味合いは、「可能」

新英和大辞典のgradabilityにある等級づけが「できる」、程度表示「可能性」は、まさにこれです。
動詞/名詞のgradeに、接辞-abilityがついていると考えられます。

同じ辞書でgradableを引くと、形容詞として
 1 等級[等格]づけ可能な.
 2 【文法】 〈形容詞・副詞が〉段階的な《程度の違いを比較級や very を付けることによって表せる》.
 ・a gradable adjective 段階的形容詞.
とあります。
eのないgradabilityは、grade--gradable--gradabilityの派生ですね。
このため、意味の含みは「~できる」になりますが、登坂能力は「~できる」ではなく「能力」です。

さて。
英語の造語法で最も多いのは、既存の語に接辞を加える派生と、既存の2以上の語の結合または連結による合成だと言われています。
今回はgrade+abilityの合成だと考えれば、「能力」の意味でも違和感は生じません。

じつは、洋書や英語論文などの学術資料をあたると、登坂能力を示す語としてgrade abilityと「2語で」書かれたものが結構あります。特に、古い資料に多いです。
Weblioに収録されている辞書でも、この2語を訳語として掲載しているものがありました。

研究社の大英和辞典によれば、gradeabilityは1952年に登場した用語のようです。
2語のgrade abilityは、これより古い文献にも使用例があります。

【推測】
ここから先は、推測です。
登坂能力はもともと、grade abilityと2語で構成されていた。
これが時代がくだるにつれて連結造語として変化して、gradeabilityとして定着した。
grade + -ableからの派生語ではないため、Websterでは、独立した単語として収録したのではないか。

【結論】
以上の点をすべて考慮すると、eのないgradability=登坂能力は誤用と言ってよいだろうと思います。
これはやはり、gradeabilityでしょう。

なお、洋書でも、登坂能力を示すと思われる場面でeのないgradabilityの使用例は多数存在します。
ただし、たとえばGoogle Booksで
 gradability vehicle
と検索すると、英語圏以外の言語圏・地域で出版された書籍や、英語圏で出版されていても著者が中国・韓国系やアラブ系、東欧・北欧系と思われる名前の書籍が、相当にあるのです。
この状況に照らすと、登坂能力にgradabilityを使っても100%完全な誤訳とは言えないかもしれません。
でも、あえてeを抜く理由は、見当たらないと思います。

【補足】
Weblioで登坂能力を引くと、gradeability、gradablity、grade abilityの他に、
hill-climbing ability,hill climbing ability,climbing ability,ascending ability
といった表現が出てきます。

調べていくと、Gradeability is a measure of the hill-climbing ability of a vehicle.と記載した資料があったり、自動車の仕様チェック項目でgradeabilityとhill-climbing abilityを別々に掲載した資料があったりします。
つまり、両者は完全に同じものを指しているわけではないようです。
また、ネット上には「登坂性能」と「登坂能力」を同義に扱っているとみられる用語集もありましたが、両者は異なります。
この点も、併せて記しておきます。

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gradeabilityとgradability、同じ単語?違う単語?

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