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山崎宏

シニアの生涯主役人生を全面支援する濱の老い先案内人

山崎宏(やまざきひろし) / 終活コンサルタント

百寿グループ(株式会社百寿研 、百寿コンシェルジュ協会、NPO二十四の瞳)

コラム

老いる世間は鬼ばかり

2021年7月27日

テーマ:終活

コラムカテゴリ:くらし

コラムキーワード: 終活 いつから相続対策相続問題

日本人なら知らない人はいない大作家たちが、人生について書いています。
夏目漱石は「とかくこの世は住みにくい」、島崎藤村は「人生は大いなる戦場だ」、芥川龍之介は「人生は地獄よりも地獄的だ」、林芙美子は「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」と…。
これらを現代に置き換えるとこうなります。

とかく老後は住みにくい。
老後は戦場。
老後は地獄以上に地獄的。
花の命は長すぎで苦しきことのみ多かりき…。

国民の平均年齢50歳、100歳以上人口が10万人を突破しようかという長命国家ニッポンですが、毎年3月20日の国際幸福デーに国連の関連機関から発表される世界幸福度ランキング(2021年)では、日本は56位。毎度のことながら、主要先進国・G7のなかで断トツの最下位です。

例えば、オレオレ詐欺、架空請求詐欺、還付金詐欺等々の特殊詐欺。警察庁の集計によると、かつて年間500億円を超えていた被害総額は300億円まで減ってきていますが、認知件数は減っていない。つまり、一件当たりの被害金額が少なくなっただけで、だまされる人の数は減っていない(1万5千人)わけです。ちなみに、被害者の85%超が65歳以上の高齢者。平均被害金額は、約200万円となっています。

また、もっと悲惨なのが殺人事件における被害者と加害者の関係性です。毎年600件の殺人事件が立件されますが、なんと60%近くが親子間で起きているのです。驚愕しますよね。

医療や介護に係る自己負担も増えていく傾向にあるし、相続税の課税対象が広げられたり、菅政権が声高に「自助」を叫んだりしているせいもあって、老い先に不安を抱えながら暮らしている高齢者は多いと思います。

考えてみれば、医療の世界では、高齢者に対する過剰医療(クスリ漬け、検査漬け、痛くも痒くもない人に対する手術、延命治療)で収益を上げている医者も多いですし、介護の世界では施設職員による虐待がいっこうになくなりません。

現役世代に目を向けても、50歳で役職定年を強いられ年俸が半分近くに減ってしまうとか、リストラの対象年齢が引き下げられるとか、気分的にめげてしまうような状況が増えています。この傾向は、新型コロナウィルスの影響で、ますます加速していくことが容易に想像できます。

こんな具合ですから、先日お亡くなりになった橋田寿賀子さんの『渡る世間は鬼ばかり』になぞられて言えば、まさに「老いる世間は鬼ばかり」です。こうしたなかで100歳くらいまで生きていかなければならない以上、私たちは自分で自分をまもる意識と知識と技術を身に着けておくべきです。ちなみに、橋田さんは享年96歳でしたが、92歳の時に自著で安楽死宣言をしていました。また、葬儀もお別れ会等のセレモニーも一切せず、直葬されました。


それではここで、もうひとつ、旬の鬼を紹介しましょう。

終活ビジネスが花盛りです。
いまや終活なる言葉を知らない人はいませんが、その意味を間違えている人があまりにも多い気がします。そんな人たちは、無料だからといってそそくさと巷の終活セミナーに出かけていって、主催者の専門家もどきにいいようにされて安堵してしまいがちです。身の回りのことがどうにか自分でできていたとしても、さすがに老い先への漠然とした不安くらいは抱えていますから、大手銀行の看板や弁護士バッチの前に、あえなく撃沈してしまうわけです。

それでは、終活セミナー参加者たちの典型的な過ちをご紹介しますね。以下は、実際に私が潜入した終活セミナーの実態です。

シニアの懐を狙う主催者たちは、日経新聞の一面記事を大スクリーンに映しながら、こんな常套句を声高らかに述べてきます。

「いいですか。認知症になったら大変なことになりますよ!預金口座が凍結されて、実のお子さんでも一円すら引き出せなくなってしまうんですよ。日本全体で、親名義の預金口座の凍結リスクは、な・な・なんと200兆円にもなるんですよ!だから今のうちに、娘さんや息子さんをボケた時の後見人に指定しておきましょうよ。気心の知れたお子さんが後見人なら、安心じゃないですか!任意後見人制度を利用するには家庭裁判所で手続きが必要です。これはかなり煩雑なんですが、ご安心ください。こちらにいる法律のプロの先生たちが、本日ご参加いただいたみなさまに限って、特別価格で対応させていただきます!」

その結果、一定の割合で、参加者は、遺言信託やら任意後見制度やら家族信託契約やら、もっと軽率な人は、銀行だけがノーリスクで儲かるようにできている投資信託なんぞまで署名捺印してしまうのです。

成年後見制度はクーリングオフができないとか、任意後見人が家族であっても最終的には家庭裁判所が勝手に選出した輩に全財産をコントロールされることになるとか、利用する側のデメリットや自分たちに不利益となるようなことを伏せたままにセールスし、何も知らない人たちからおカネをせしめているとしか思えない…。そんな光景をよく目にします。

かつては、終活セミナーというと葬儀関係者が主催するものがほとんどで、せいぜい葬儀の生前予約をしたり、墓地を購入したりする程度で済んでいました。ところが最近は、高学歴な銀行マンやら弁護士やらが終活ビジネスに熱心です。一流大学卒の若手社員に電話をかけさせ、あたかも儲かるかのような話をさせて金融商品を売りまくるわけです。ちょっとタチが悪いと思います。

彼らが取り扱う商品やサービスを購入したり契約したりしてみても、全然、意味のある老い支度になっていません。親世代が実践すべき本来の終活というのは、自分に何かがあったとしても、愛する子どもたちに不便や不利益や負担や迷惑をかけずに済むように、想定課題ごとに対策を講じておくことをいうのです。

そして、そのためには、多額の報酬や手数料を払ってまで、金融機関やら法律事務所やら家庭裁判所やら葬儀社やらと関わる必要など一切ありません。家族内にイレギュラーなこと(子どもたちがやたらと不仲だとか、非嫡出子がいるとか、愛人がいるとか、特定な子どもにはビタ一文おカネを遺したくないとか…)でもない限りは。終活を、法律やら制度やら契約を前提に考える必要は一切ないのです。

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普通のケースは、親子間で完結できるものです。親子の絆を拠り所として、親が目の黒いうちから、顔を突き合わせて、きちんと自分の言葉で想いを伝えればいいのです。直接会話することもなく、死んでからいきなり遺言が出てきたりするから子どもたちがモメるのです。老いてなおおカネに執着しすぎるから、本来は子どもたちに渡るはずだったおカネを知らない人に持っていかれるのです。

おカネの話ばかりではありません。医療や介護のことも抜け落ちています。親が意思決定や意思表示ができなくなった時、子どもたちが医者やケアマネジャーと折衝することになります。認知症ゆえの身体拘束とか、人工透析や胃ろうといった延命治療とか、時に重大な決断を求められます。

親がしっかりと老い支度をして子どもたちと共有していなかったとしたら、何かと忙しい子どもたちが、緊張と動揺の中でむずかしい専門的な判断をしなければならなくなる。その結果、親が死んだ後も、それが正しかったのかどうか苦悩して、トラウマになってしまう人たちがたくさんいるのです。子どもたちの精神的負担の大きさがわかりますか? 

終活とは、エンディングまでの段取りです。一過的・断片的なものではありません。点ではなく線で、そして面で考えてそなえるべきものなのです。

繰り返します。
本当に意味のある終活とは、ある日突然ボケたり死んだりしたとしても、子どもたちが不便や不利益を被らずに済むよう段取りしておくことです。遺言を書くとか、墓を買うとか、葬儀を予約するとか、そんな断片的なことではないということをしっかりと刻んでおいてください。

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