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  1. 家族信託(民事信託)と後見のポイント比較!どちらを活用するべきか
小川文子

大手都市銀行や外資系資産運用会社等の金融出身の女性弁護士

小川文子(おがわふみこ)

恵富総合法律事務所/コンサルタント

コラム

家族信託(民事信託)と後見のポイント比較!どちらを活用するべきか

2019年6月7日

テーマ:家族信託

認知症や知的障害を持つ人を支える制度として、まず思い浮かぶのは成年後見制度ではないでしょうか。しかし最近、成年後見制度よりも自由度の高い家族信託が注目されています。具体的にどのような点が違うのか、ポイントを比較してみましょう。

1.後見制度とは
認知症や知的障害などで判断能力が十分でない人は、財産の管理や各行政手続きなどを自分で行うことができません。後見制度は、こういった方が将来的に安心して暮らせるように、後見人等を選任する制度です。

後見人は財産を管理したり、施設の入所手続きをしたり、料金の支払いをするなどのサポートを行います。

後見制度には、「法定(成年)後見」と「任意後見」の2つの制度があります。

「法定(成年)後見」は、民法で定めた後見制度で、家庭裁判所が後見人等を選任します。
すでに判断能力がなくなった段階で、利用できるのは法定後見です。法定後見は、家族などが家庭裁判所に申し立てて後見人を選んでもらうようになります。
親族を候補者として指定することもできますが、親族間のトラブル、使い込みや不正を防止するため、最近は7割以上の割合で弁護士や司法書士などの専門職が選任されています。

「任意後見」は後見人を自分で選ぶことができます。
判断応力のある段階で、本人が任意後見契約を結ぶので、自分の希望する人を後見人にすることができます。
契約の中で財産の管理方法も定めておけるので、自分の意向を反映した財産管理も可能です。
なお、任意後見では、裁判所が後見監督人を選任します。弁護士や司法書士などの専門職が後見監督人となり、後見人が誠実に職務を果たしているかを監督します。

銀行の通帳や印鑑の管理などは後見人が行うものの、使い込みが発覚したりすると、後見監督人等の請求により裁判所から後見人を解任されます。

2.家族信託とは
家族信託は、信頼できる家族に自分の財産の管理、運用をあらかじめ託しておくことで、本人が認知症を発症してしまった後でも、財産が凍結されることなく、家族が管理、運用できる制度です。

契約の内容は自由に設定することができ、財産の管理方法や、託す財産の範囲、さらに亡くなったあとは、誰がその財産を承継するのかまで定めておくことができます。

家族信託を利用すれば、成年後見制度を利用することなく、財産の自由な管理、運用、処分が可能です。

3.後見制度と家族信託を比較
〇効力の発生時期
法定後見は後見人が選任された時点でスタートします。

任意後見では本人の判断能力が低下し、かつ家族などが家庭裁判所に申し立てることによって、任意後見監督人が選任された時から効力が発生します。
通常は、元気なうちは自分で財産管理を行い、判断力が低下したら、あらかじめ選んでおいた後見人が職務を開始し、財産管理を開始するという流れとなります。

これに対して、家族信託は、原則、信託契約を締結した時に効力を発生しますから、いつスタートするかを自由に決めることができます。

〇報酬について
法定後見は、多くの場合、専門職が仕事として行うので、報酬が発生します。金額は家庭裁判所が決めますが、月2万円~3万円が相場となっています。ただし、これは通常の後見事務に対する報酬で、管理が複雑な場合などは付加報酬が発生します。

任意後見監督人への報酬はもう少し安いですが、10年も支払いが続くと財産が目減りするのは否めません。

他方、家族信託は財産管理をする受託者は、家族が行うので、原則無報酬で行いますが、あらかじめ報酬を定め支払う場合もあります。

〇お金の運用について
成年後見制度の目的の一つである財産管理は、いわば被後見人の財産を守ることであり、家族信託の目的の一つである財産管理は、信託財産の積極的運用も含むものです。

したがって、株式を売買する、賃貸アパートをリフォームして物件の価値を高めるなどの行為は、家族信託では契約書に定められている限り可能ですが、成年後見制度では、本人の財産を減らすおそれのある行為になるので簡単には認められません。

また介護施設に入所するために自宅を売る場合、成年後見制度では「居住用不動産処分許可の申し立て」を行い、家庭裁判所の許可を得なければなりません。その間に売り時を逃してしまうこともあります。

さらに、孫が大学へ行く際の援助など、おそらく本人に判断能力があったら納得して出すと思われる出費も認められない場合があります。

この点も家族信託では、お金の管理や処分方法を自由に設定することが可能です。

4.元気なうちに行動することが重要
後見制度と家族信託ではそもそも目的が違いますので、どちらが良いということは一概にはいえませんが、判断能力が低下した後では、法定後見で対応するしかありません。

判断能力があるうちに、認知症対策のために財産管理を任せたい、そして、信頼して任せられる人がいる場合は、任意後見か家族信託という方法になります。両者のうち、より柔軟性があるのが、家族信託です。

後見制度は、日常生活をサポートするうえでは大きな助けとなる制度です。そして、家族信託と後見制度は対立する制度ではありません。

例えば、対策の一つとして、不動産や余裕資金等の財産管理は家族信託を活用し、信託財産以外の生活資金等の財産管理や日常生活の諸手続きや介護サポートなどの身上監護は任意後見制度で、といった使い方も検討されます。

いずれにしても、何もしなければ家族の負担が大きくなりますので、判断能力のあるうちに、対策を講じておくことが重要です。

この記事を書いたプロ

小川文子

大手都市銀行や外資系資産運用会社等の金融出身の女性弁護士

小川文子(恵富総合法律事務所/コンサルタント)

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