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大串正明

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大串正明(おおくしまさあき) / 食農ビジネスコンサルタント

ベジフルあいら

コラム

何故農産物の価格は上がらない?

2023年2月17日 公開 / 2023年2月20日更新

テーマ:農業の将来性について

コラムカテゴリ:ビジネス

最近は物価高騰という言葉を良く耳にします。たしかに輸入原料を中心に電気代高騰などや為替レートの円安傾向によって色んなメーカーが値上げをしています。しかしながら価格を上げたから企業の業績が上がり所得が増えるということはあまり聞きませんよね。やはり需要と供給の関係が商品やサービスの売れ行きに大きく影響し価格上昇していくわけです。
今の日本の経済はスタグフレーションの域に入っていると考えられます。物価高騰などの影響で、賃金・収入が上がらない又は上げられない中での値上げは買い控えや引き締めの現象を招き必ずしも売上げの増加、企業の増収に繋がっていかないからです。

ここからは本題に入ります。農業における生産物においては少し事情・方向性が違います。
農産物においては販売方法は色々あっても価格形成はほとんど市場の価格を基準に決まってしまいます。肥料・農薬・資材・燃料費が高騰しても自分本位で価格を決める事が出来ません。ある程度の相場は存在します。
青果物でいえば卸売市場システムにおいて天候等の影響により入荷量による需要と供給のバランスで価格形成されます。これが従来の取引ですが最近では事情が少し違い市場外取引いわゆる生産者が直接販売する量(企業との直接取引を含む)が増えたため卸売市場の入荷量の減少と買受人の減少によるシステムの弱体化によって相対取引(事前交渉など)での価格決定方法が増えて正常に機能出来ていないので本質が掴めないことも考えられます。気象災害等で市場外取引が減ると一気に市場価格は高騰しますが、やはり近年は冒頭で言ったように輸入品の高騰もあり今の状態であれば国産の商材を買受人からしてみれば安く買いたいので価格は従来のような高値がでにくい状況にあります。また安値の基準が入荷量ではなくほぼ買受け業者の売れ行きによるところが大きく、それに合わせる形で直販の価格を決めて販売しているので自ら安売りしている状況です。かなり曖昧な流通形態が存在している状況です。やはりAIやICTの導入がかなり遅れている業界なので改善されていけばいいのですが......。

次に最近耳にする6次産業化ですがいわゆる生産・加工・販売を一貫して行い自身で価格設定を行えると利点が有るということですが、こちらは設備導入などで一般の加工業者の商品に比べかなりコストがかかり単価が高くなりがちでこのご時世では成功例はかなり低く補助金事業でも黒字化のハードルは高くなっているのが現状です。国が推奨している施策ではありますが生産者が加工・販売を行うことは自分の経験・知見からするとかなり難易度が高く事業化するには補助金に纏わるコンサル等の思考等では厳しいと思います。国が認めたから成功するという安易な考えでは難しく、やはり経営能力にすぐれた起業家の精神が必要であると思います。いわゆる感性と自分軸です。お書物主導ではただ補助金報酬で動く人たちの餌食になり、自分の首を絞めるだけです。

一次産業をはじめとする食産業は我々人類が生きていくためには欠かせないもので絶対必要なものです。成長の余地は多いにあると思います。ただそれを持続可能なものにするにはその時代・状況を把握して判断する能力を磨いていく必要があります。どの仕事も人間的成長がなければ続けていくことは不可能です。安易にこれからは農業がいいと思って就農される方も多いですがやはり自分がどういうビジョンを描きそれが今の時代に可能であるかをある程度考えていかないといけないと思います。

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