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次世代リーダーの育成

谷内篤博

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 最近の人事の重要課題としてよく取り上げられるのは、経営人材の育成である。日本の企業はこれまで本格的に経営人材の育成をしてこなかった。日本の企業が行ってきたのは、管理者研修やリーダー研修などの階層別研修で中間管理職を育成することである。
 企業の成長を支える現場力を高め、現場における効率的なマネジメントを展開するためには、中間管理職は必要不可欠である。こうした中間管理職による職場内訓練(OJT)が日本の人材育成の大きな特徴で、ものづくりとしての産業基盤を支えてきた。
 しかし、現代のように経営環境の先行きが不透明で、グローバルレベルでのナレッジ競争が本格化する時代には、中間管理職ではなく、経営人材、すなわち経営をナビゲート(舵取り)できる次世代リーダーが強く求められる。
 次世代リーダーは従来型の階層別研修で育成することは極めて難しい。階層別研修は階層全体の能力向上に向けて全体を底上げすることに主眼が置かれており、次世代リーダーのようなエリートの育成や選抜型研修には向かない。次世代リーダーの育成には新たな視点が必要である。
 次世代リーダー育成に向けた新たな視点は大きく3つある。1つ目は、選抜→育成→活用といったステップで展開することである。選抜するには、どのような経営人材がいつまでにどれ位必要なのかといったゴール設定が前提となる。さらに、意識づけや心構えを考慮に入れると、年代的には40代前半、場合によっては30代からの早期選抜が望ましい。具体的な選抜にあたっては、単に人事評価だけでなく、周囲の人物評価や人格・識見など、多面的な視点が必要である。ヒューマン・アセスメント(HA)やコンピテンシー評価などを活用することも有効である。社内に十分な候補者が見つないない場合は、社外からの外部調達も視野に入れざるをえない。
 育成に関しては選抜型研修といったスタイルで、戦略やマーケティング、アカウンティング、人的資源管理など経営に必要なリテラシーをビジネス・スクール形式で修得させることが望ましい。社内のスタッフのみでは不十分なので、大学や外部の専門教育機関などと提携し、企業内大学(Corporate University:CU)を設置することも必要となる。
 活用にあたっては、選抜型研修で学んだ経営リテラシーを実際に活用する機会として、新たなプロジェクトへの参画や海外現地法人への出向など、一皮むけるための経験をさせることが極めて重要となる。これはいわば理論学習と実践学習との融合をはかるために必要である。
 2つ目の視点は経営トップの巻き込みである。次世代リーダーの育成には経営哲学が必要不可欠である。経営トップ自らが自社の経営理念や経営哲学を社長塾などを通じて伝授・浸透させてこそ可能となる。そのためには、トップの巻き込みは重要な役割を果たす。
 最後の視点は、次世代候補の見直しである。次世代リーダーの育成は早期選抜に基づき実施されるため、定期的に候補者をモニタリングし、その適性がないと判断された場合は候補者の入れ替えを行う必要がある。次世代リーダーの育成は決してエリート主義を浸透させることではなく、次世代を担える経営者を育成ことが目的である。

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専門家

谷内篤博(大学名誉教授)

 

上場企業の人事部や大手シンクタンクで人材育成や人事制度設計に従事。人的資源管理・組織行動論を専門に大学教員として30年間研究を重ねました。理論と実践を融合させて、人と組織の活性化をサポートします。

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