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台所の椅子で

坂部智子

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テーマ:仕事のはなし

先日訪問したAさん(90歳 女性 要介護2)は、
室内移動の支えに 台所の椅子を使用してはる。

マンションの長めの廊下には、開口部が数か所あるため、
手すりは付いているけれど 途中で途切れている。
部屋から居間、台所への移動は、杖では不安定・・・という状態。

歩行器の検討もしたけれど、なかなか使えそうなのがなかったそう。
息子さんが、重たい食卓椅子の脚裏に市販の「らくらくすべーり」を貼りつけ、
Aさんは、椅子をそろ~りそろ~りと押しながら移動している。
その椅子のすべり具合がとてもいい。

前にも書いたけれど、
室内での移動に、ワゴンを使ったり、このAさんのように椅子を押したり・・・と
独自に、家にあるものを活用しているケースも多い。

実際、「歩行器の選定」というのは、
福祉用具の中で、一番難しい・・・と感じている。
そもそも、歩く時に頼る“支え”でありながら、“動く”ことを求められている。
動きつつ、しっかり支える・・・・という矛盾(?)が歩行器の役目。

歩行器に体を預けすぎたり、あんまり足元がおぼつかないと、
“動く”機能に引っ張られてしまい、危険。
“支える”ことを重要視すると、歩く時には持ち上げるタイプとなる。
または、車輪付きで 体重をかけたら、ストッパーがかかり止まる・・・というタイプ。
慣れれば、けっこう上手く使用している人もいるけれど、なかなか 使う人が限られる商品である。

Aさんの台所椅子は、椅子自体が重いので、Aさんを引っ張ってしまう程にはすべらない。

使う人の歩行状態、体型、椅子の形状、重さ、床の材質など
安全に関して、いろいろチェックポイントはある。
が、市販の福祉用具以上の役割を「あるモノ プラス 工夫」がつくりだすことは多い。

いろんな発見、学ぶべきことがたくさんある。

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