子どもの心と身体の両方を診ることができる小児科医療のプロ安藤康一

子どもの心と身体の両方を診ることができる小児科医療のプロ

安藤康一

地域の子どもたちに適切な治療を行える場所を提供したい

　JR西宮名塩の駅から徒歩約1分の場所にある「あんどうこどもクリニック」。クリニックの理事長で小児科医である安藤康一さんは、とても強い思いを持ちながら子どもの診療に向き合っています。
　安藤さんは、神戸大学を卒業後、当初は大学に残って研究を続ける予定だったそうです。しかし、ご家族の事情もあり、地元に小児科医療が必要という強い思いから、今のクリニックを立ち上げます。

「私が西宮北部でクリニックを立ち上げようと思った理由は、この地域で小児科をしっかり診れる医師がいなかったということです。私が研修医のころ、実家が寝屋川市から西宮市に引越しをしました。当時、近隣には、いくつかのクリニックがあったのですが、込み入った子どもの症状になると、皆さん宝塚や神戸まで通っていたんです。その様子を見て、将来この地域で子どものためのクリニックを開業したいと強く思いました」

　小児科の中でも特に必要だと思ったのは、子どもの心に対応できるクリニック。そのため、「あんどうこどもクリニック」では、「発達相談」に力をいれています。また、安藤さんはアレルギーも心臓疾患、ホルモン疾患、糖尿病でも、あらゆる病気を診ることが可能です。これまで勤務していた地方の大きな病院では、どんな病気でも診られないと勤まらないという環境にあったからだそうです。発達相談に力を入れている理由は、子どもさんの健やかな成長のためには心の悩みについて、適切な支援やアドバイスができる場所が必要と感じているから。安藤さんは、もっとお子さんの治療に寄り添っていきたいと考えています。

子どものモチベーションには私たち医師も驚くことがある

　これまでたくさんのお子さんの治療に関わってきた安藤さん。患者さんには、日々驚かされることがたくさんあるそうで、印象に残った出来事についてお聞きしてみました。

「学習障害で発達障害をもった、ある男の子のケースですが、男の子は行を追って文字を読むことができませんでした。そのため、いつも定規を当てて本を読んでいたのですが、少しでもずれると最初から読み直す必要があり、読書感想文を一度も書くことができなかったんです。そんなある日、定期診断に訪れた男の子がいきなり『ぼく、課題図書を2時間で読めるようになった。それに読書感想文も書けたよ！』と嬉しそうに話すのです。私は、こんなに早く本が読めるようになったお子さんを診たのは初めてだったので、とてもびっくりしました。と同時に、とてもうれしくて感動したことを覚えています」

　これまで、お子さんの治療で悩まれている親御さんをたくさん診てきた安藤さんですが、「このようなお子さんが一人でも増えることで、皆さんの励みになれば」と思いを綴ります。

子どもに必要な治療を受けられる態勢を整えたい

　安藤さんは、発達支援についてさらにいろいろな取組みをこれから行いたいと考えています。
「私のクリニックでの一般的な診療に関して、私がやりたいと思っていたことは、概ね達成できたと思っています。ただ、一般的に『発達障害』についてはまだまだ支援が足りないんです」

　現在、西宮市に隣接する地域から「あんどうこどもクリニック」に来られる患者さんも多いそうです。
「実は、乳児検診で発達障害の疑いがあるかもしれないといわれても、近くに専門機関がなく、すぐに診察を受けることができないケースも多いんです。このような状況だと親御さんはますます不安になります。だから、もっと発達障害を診られる医師を増やしたいと思っています」と思いを語る安藤さん。

　また、医療機関だけでなく、学校の先生にも活動を広げていきたいと考えています。

「もっと学校や幼稚園の先生にも発達障害について知識を得てほしいと思っています。やはり、先生たちが理解していないと子どもたちを傷つけてしまうことがあるんです。それにせっかくいろんな才能があるのに、そういう芽を詰んでしまう可能性も。

　また、行政から学校への支援もまだまだ足りないと感じています。これからは、医療関係者だけでなく、学校関係者の方にももっと発達障害について知識を得てほしいのです。だから、勉強会をしたり情報交換をしたりという機会を持ちたいと考えて立ち上げの準備をしています。少しでも、お子さんの心の問題で悩んでいる方のために、いろんなことに挑戦していきたいと思っています」

　現在、多くのお子さんが悩んでいる心と身体の悩み。安藤さんの活動は、多くの人の悩みを穏やかなものに変えてくれるでしょう。

（取材年月：2019年7月）

子どもが適切な治療を受けられる場所づくりに取り組む

地域の子どもたちに適切な治療を行える場所を提供したい

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