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公認心理師が提案する、釧路の喫茶店などで心を癒やす一人旅

一人旅での心の整理をサポートするメンタルヘルスケアのプロ

山内正樹

山内正樹 やまうちまさき
山内正樹 やまうちまさき

#chapter1

「オープンダイアローグ」の手法を取り入れた旅行者向けのメンタルヘルスケアを提供

 旅先でたまたま訪れた店のオーナーや周囲の人と話し、日頃は口に出せなかったモヤモヤなどを吐き出して、気分がすっきりした経験はありませんか。自然豊かな観光地として人気の北海道・釧路市にある「くしろ街なか心の保健室」では、旅行者に向けてメンタルヘルスケアサービスを提供しています。

 代表を務める山内正樹さんは、中学校教師を経て、公認心理師として活動。20代の頃に世界各国を旅して回った経験があり、独自のサービス「くしろ街なかオープンダイアローグ」を思いついたそう。
 「オープンダイアローグとは、フィンランド発祥の心理ケアで、相談者と専門家の1対1ではなく、家族や看護師なども交えてチームで対話を進める手法です。特に一人旅は、気持ちの整理や人生の棚卸しをするなど、自分と向き合える良い機会です。釧路市内の喫茶店や居酒屋などの店主を交え、私と相談者の3者で〝開かれた対話〟を行います」

 店舗は、申し込み時のヒアリングで把握した相談者の特性に合わせて、山内さんがセレクトします。
 「どの店主さんも、日頃からお客さまの悩みを聞いたり引き出したりすることに長けた方ばかり。私が専門家の立場で傾聴することで、ため込んでいた気持ちをオープンにし、ご自身で気付きが得られるようお手伝いします」

 人と話すのが苦手な人は、山内さんと店主が話す様子を聞くところから始めることも可能。無理に話さなくてもただ聞いているだけで、人生の棚卸しができる時もあります。
 「誰かとつながりたいと思っていても、どうすればいいか分からないという声は多いです。その場で対話を聞くだけでも、〝見取り稽古〟として、人とのつながり方のコツを学べます」

#chapter2

中学校教員を経て、公認心理師に。SNSカウンセラーとして全国からの相談に対応

 山内さんは、約30年の中学校教員生活の中で、特別支援教育コーディネーターとして相談業務に長年携わってきました。さまざまな生徒や保護者と向き合う中で、心の不安定さから生じる問題に対処する機会も多かったそう。大学院で臨床心理学を学び直し、公認心理師の資格を取得。中学校を退職し、通信制高校でスクーリングを担当しながら、2022年に「くしろ街なか心の保健室」を立ち上げました。

 事業を始める以前から、自然の中を歩くことでストレスや不安を和らげる心理療法である「ウォーキングセラピー」などを手掛けていた山内さん。20人ほどのグループで、釧路市内の公園や街角を歩いてめぐり、ゴール地点の喫茶店で店主と語り合うイベントの開催実績もあります。
 「風景を見ながら歩いていると、脳が活性化され、凝り固まった考えから抜け出せ、考え方が前向きに変わります。今後もニーズがあれば、オープンダイアローグと組み合わせて対応できます」

 また、SNSカウンセラーとしても活動する山内さん。NPO団体が運営するSNSを活用した相談窓口で、全国からの悩みに応えています。
 「『死にたい』と書き込むような命に関わる相談も少なくありません。メッセージのやり取りから、命のとりでとなれるよう心して取り組んでいます。SNSに限らず、初めての相談では、自分の弱さを見せられず本心を秘めているケースは多いです。旅行者であっても、経済的な問題など深刻なお悩みを抱えていることもあるでしょう。必要に応じて専門機関と連携して先々を照らせる道先案内人でありたいと思っています」

山内正樹 やまうちまさき

#chapter3

自然が近い釧路に、保健室のように心が落ち着く場をつくりたい

 出身地でもある釧路の街を「人の心を癒してくれる雰囲気がある」と評する山内さん。学生時代に街づくりの歴史を研究し、環境が人の心に及ぼす影響に興味を抱いたそう。教員時代には、「環境経営論〈2〉自然環境と人間の存在」(松行康夫・北原貞輔共著、税務経理協会、1999年刊)で、第5章を担当。「釧路湿原のワイズ・ユース(賢明な利用)」をテーマに、地域の施設や店舗などにも聞き取り、住みやすさとは何かを追求しました。

 「釧路には何もないという声もありますが、何もないからこそ、自然とのつながりを大事にしながら暮らしやすい街を作ろうという人たちがたくさんいます。例えば喫茶店のマスターがお客さんの世間話や相談を聴くことは、昔から当たり前のように行われてきたこと。『心の保健室』も、学校の保健室のように、誰もがほっとできる場として、街に溶け込む存在を目指しています」

 旅行者向けのオープンダイアローグ以外にも、お試し価格で受けられる入門的なケアや、1対1で傾聴を行うオンラインカウンセリングを用意。本来、カウンセリングの目的は、悩みを消すことではないと話します。
 「目の前の悩みが解消されても、また新たな悩みは生まれます。ご自身と向き合い、悩みを自分で抱える力を一緒に育むことで、心の負担を軽減することを目指します」

 釧路を訪れた人が、「あのとき自分を見つめ直すことができて、いい旅だった」と感じ、人生の質を深める機会を提供します。

(取材年月:2023年10月)

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専門家プロフィール

山内正樹

一人旅での心の整理をサポートするメンタルヘルスケアのプロ

山内正樹プロ

公認心理師

一般社団法人くしろ街なか心の保健室

人生という旅をしている人々のために、〝開かれた対話〟による心のケアを提供。喫茶店という自由な対話空間の中で、あなたが心の整理をするお手伝いをします。現在、公立学校のスクールカウンセラーとしても活動中。

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