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コラム

るろ剣の北海道編の連載中止は妥当か

エンターテインメント法

2017年12月5日 / 2018年8月14日更新

 漫画の『るろうに剣心』の作者が10代前半の女児の裸の動画の移ったDVDを所持していたとして、児童買春・児童ポルノ禁止法の単純所持の罪で捜査を受けたというニュースがありました。
 事件は警察から検察に移っています。逮捕勾留されたのでなく、いわゆる書類送検です。
 なお、有罪判決が確定したわけでもないですし、そもそも起訴されたというニュースはまだ聞こえてきませんから、この作者をあたかも犯罪者であるかのように評する記事があればおかしいです。



 るろうに剣心、略して「るろ剣」は、北海道編がジャンプSQで連載スタートしたばかりでした。
 ジャンプの出版社の集英社は、当面の間この作品を休載するとのことです。

 作者は勾留されたのではないので、物理的に連載が不可能になったわけではありません。
 にもかかわらず、休載あるいは将来的に打ち切りということになるのは妥当でしょうか。

 また、映画化されたるろ剣の放送を中止したCS局があったそうです。


 本件とは少し違いますが、映画やドラマでは、出演の俳優の犯罪の嫌疑なので、お蔵入りや俳優を替えて撮り直しということがあります。
 

作品と作者は別個の存在


 確かに、作品を目にすることで、作者の児童ポルノ所持のニュースが思い起こされる人もいるかもしれません。
 しかし、作品外の作者の行為によって作品の内容が何か変わるわけではありません。
 また、もし作者がどういう人物か等を気にする人がいれば、その人がその作品を触れなければいいだけでしょう。作者の悪イメージで作品を手に取る人が少なくなれば、その作品の人気がないことによる終了ということでいいと思います。

 作者本人の人物像や行為はともかく、面白い作品が生み出され、世に残るのであれば、休載しなければならないというのは行き過ぎだと思います。

 当然、法的な責任を問われる行為をしたのであれば、その責任は作品を生み出すかどうかとは別の話で問われればいいのです。


 問題のあった俳優の出演する映画等は、スポンサーのイメージにも影響がある等の事情もあるかもしれません。しかし、普通の消費者は、たまたま出演していた俳優が映画の外で問題を起こしていたからといって、映画そのものや映画のスポンサー等にまで混同して悪い印象を持つとは思えません。
 一部のおかしな中傷をする者はいるのかもしれませんが、そのような人にまで配慮する必要が本当にあるのか疑問です。


期待させられた受け手のことも考えよ


 今回の北海道編の連載開始は、それなりに宣伝されていたのではないかと思います。
 道民の私も単行本化されたら読んでみようと思っていました。
 るろ剣が週刊ジャンプに連載やテレビアニメも観てましたし、映画も観ましたので、北海道編は少し楽しみにしていました。

 今回の連載の初回を見せられて、続きを楽しみにさせられた読者も多数いるはずです。

 作品の受け手は、宣伝を含めて作品を観たいと期待させられます。これは、今回の件に限らず、お蔵入りになったりした映画等にも言えます。
 煽られた受け手の期待する感情や、もしかしたら煽られたことで何か購入するなど出費が生じているかもしれません。
 そのような立場に置かれた受け手を放置して、作者や演者、あるいは出版社や映画会社等の勝手な都合で作品の継続や発表を取り止めるというのが全く許されるものなのか疑問です。


 このような受け手の側の期待は、出版社等に対して慰謝料請求などができるほどの法的に保護される利益とまではいえないかもしれません。

 しかし、出版社等には、一種の社会的責任として、いったん作品を世に出すことを一般に打ち出した以上は、できるだけその流れを続けるべきではないかと思います。


 今回の件は、連載を復活させるか、難しければ電子版だけでも連載を継続するとか、電子書籍で単行本化するなどの対応をしてもらいたいです。



児童ポルノ禁止法について


 児童の心身を傷付ける児童ポルノの製造するような行為は許すべきものではありません。
 ただ、法律に問題がないわけではありません。
 3年前の改正の際に、解説記事を書いていますので、ご参考まで。
改正児童ポルノ禁止法で脅かされる表現の自由



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弁護士 林 朋寛(札幌弁護士会所属)
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