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コラム

「北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない」

行政

2017年11月26日

小笠原淳『見えない不祥事ーー北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』

 公文書開示請求(情報公開請求)を積み重ね、分析して、北海道警察が警察官の不祥事(犯罪等)を公表してなかったり甘い処分で済ませている実態を明らかにした本です。
 こう書くと、データを分析した本か実務書のようですが、ハードボイルド小説のような書きぶりになっていて、読み物として面白いです。内容は、特に北海道民にとっては、深刻な問題ですが。
 
 道警は、ひき逃げした警察官を1か月10%の減給で済まして、処分やひき逃げ事件を公表せずにいます(19頁)。
 そういう組織が、道民の生命財産を守る役割を負っていたり、また道民を被疑者として捜査対象にするということは非常に恐ろしいことだと思います。つまり、まともに守ってもらえるか期待できない、まともに捜査されないということであれば、犯罪に関わったときに本来であれば守られたはずの”人生”が破壊される危険が大きくなっているということです。


 警察という国民・社会にとって必要な組織をどう適正に運営するかは、法律レベルの問題もあります。
 法律を変えるというところまでいかなくても、報道や住民のチェックや裁判を起こすことで、警察組織への監視と抑制はある程度はできると思います。あとは、報道機関や住民が無関心にならずに行動するかにかかってくるでしょう。


 裁判所に刑事裁判を求める(起訴)役割は検察庁の検事の役割です。
 道警の不祥事の中でも有名な稲葉事件(映画「日本で一番悪い奴ら」にもなった)で出てくるロシア人に銃を密輸させたパキスタン人について、いないと偽証した警察官について、不起訴にした検事が2016年から鳥取地検の次席検事になっているという指摘があります(194頁)。
 文中に名前は出てきません。法務省人事の情報では、同年4月1日付けで鳥取地方検察庁の次席検事になっているのは田畑光行氏です。(田畑氏が不起訴にした担当検事かどうかは不確定です。)
 不起訴処分をした担当検事として名前が出ていたとしても、起訴不起訴の決済は担当検事の一存で決めるわけではない(検事正や次席検事の決済を取るし、事案によっては地検より上つまり高検とも協議するようです。)ので、担当検事だけを取り上げても酷な気がします。
 個別の不起訴処分について検察庁が今さらコメントすることはないとは思いますが、不起訴処分にした当時の札幌地方検察庁の検事正や次席検事が誰で、今どこのポストにいるのか気になるところです。


 稲葉事件に関して銃の密輸で有罪判決を受け服役したロシア人の再審で、無罪判決が出ています。
 この再審事件の審理は1回の審理で結審して証拠調べをせずに無罪判決になったとのことです。
 これは、証拠を調べてしまうと無罪判決の理由の中で警察の違法捜査に触れざるを得ないから、証拠調べを避けたという旨の指摘があります(195頁)。
 そういうことなら、札幌地裁の裁判官も相当なインチキをやっていることになります。
 裁判官は強力な国家権力を扱う公務員なので、実名を挙げて欲しいところでした(判決を検索して確認すれば分かりますが。)。

 
 薬物事件の検挙のノルマをクリアするため、協力者の仲介者や売人は通常は検挙しないで末端の薬物使用者だけを検挙するという話もかなり怖い話です(197頁)。
 この辺のことは、道警だけに限らなそうな気もします。


 組織を適正にしようとか上司の問題行動について意識を持って上層部に煙たがられる警察官だと、付けいる隙がないと遂には「証拠偽造」で検挙されるようです(196頁〜)。
 刑事事件で検挙されるに至らなくても、不当な懲戒処分を受けている警察官・職員は皆無ではないように思えます。不当な処分を受けた場合は、できれば審査請求や訴訟で戦って、組織の膿を少しでも明らかにして欲しいです。


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弁護士 林 朋寛(札幌弁護士会所属)
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