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檜和田知之プロは中国新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

人手不足時代を生き抜く中小企業の戦略 ~人材育成・採用活動の成功事例から学ぶ実践的アプローチ~

1. 序論:深刻化する人手不足と中小企業の現状




以前、「【広島の経営者必見】社員が自ら成長する組織へ! 27年の人材育成実績から導く"3つの鍵"」(https://mbp-japan.com/hiroshim)と「【広島・呉の製造業経営者向け】採用難でも生産性1.5倍!27年の実務経験が導く人材確保の実践ノウハウ」(https://mbp-japan.com/hiroshim)でお伝えした人材育成と採用のノウハウ。今回は、さらに掘り下げて、全国の中小企業の成功事例も交えながら、人手不足解消への道筋を探っていきたいと思います。

「いい人材が見つからない」「採用しても定着しない」―。こんな悩みを抱える経営者の方は少なくないはずです。実際、経済産業省の調査でも、7割以上の中小企業が人手不足に直面しているという結果が出ています。特に製造業、建設業、サービス業といった現場を持つ企業では、その悩みは深刻さを増す一方です。

人手不足は、企業にとって想像以上に大きな痛手となっています。「受注があっても人手が足りず断るしかない」「既存の社員の負担が増えて、今いる人まで辞めてしまいそう」。さらに、ベテラン社員の持つ技術やノウハウを若手に伝えられないまま、技能継承の機会を逃してしまうケースも。

かつては「募集をかければ人は集まる」「新人は先輩の背中を見て育つ」という考え方が通用しました。でも、今はそうはいきません。若い世代の価値観は大きく変化し、従来型の採用や育成の方法では、もう立ち行かなくなっているのです。

ただ、こんな状況でも、着実に成果を上げている企業があります。そこには、「人材育成」と「採用活動」を、単なる人集めではなく、会社の未来への投資として捉える視点があるのです。

本稿では、これまでの連載で紹介してきた事例も含め、人手不足を乗り越えるためのヒントを、より具体的にお伝えしていきます。すぐに実践できる取り組みから、中長期的な戦略まで、経営者の皆さんの実情に合わせて選んでいただける内容を目指します。

2. 社員の自律的成長を促す組織づくり




「人が育たない」とお悩みの経営者の方は多いのではないでしょうか。しかし、実は社員たちには「成長したい」「もっと活躍したい」という想いが眠っているものです。以前の記事でもお伝えした通り、27年の人材育成実績から見えてきた重要なポイントは、この「成長意欲」をいかに引き出すかにあります。

自己実現欲求を刺激する3つの鍵


株式会社山岡製作所の事例は、その好例といえるでしょう。同社が実践する「マンパワーUP活動」の特徴は、以下の3点です:

1. 明確な目標設定と可視化
技能検定やTOEICスコアといった具体的な指標を設定し、社員が自身の成長を実感できる仕組みを構築。「次はこのレベルを目指そう」という自発的な向上心を引き出すことに成功しています。

2. 社員による社員のための教育プログラム
「教えることは学ぶこと」というポリシーのもと、社員が講師を務める研修制度を導入。教える側も学ぶ側も共に成長できる、相乗効果を生む仕組みとなっています。

3. 適切な評価と承認
目標達成者への表彰制度を設け、成長を会社が正当に評価・承認する文化を醸成。金銭的報酬だけでなく、組織内での存在価値を高める機会としても機能しています。

主体性を引き出す仕組みづくり


株式会社琉球光和の取り組みは、さらに一歩踏み込んだものです。社員自身に年間事業計画を作成させるという大胆な施策により、「会社の中の自分」ではなく、「経営者としての自分」という意識を育んでいます。

「最初は戸惑う社員も多かった」と、同社の取締役は語ります。「でも、自分で考え、決めた計画だからこそ、その達成に向けて主体的に動くようになった。結果として、一人一人の業務効率が大きく向上しました」

相互学習の文化を根付かせる


注目すべきは、これらの取り組みが、単なる「スキル習得」を超えた効果を生んでいる点です。社員同士が学び合い、教え合う文化が自然と形成され、組織全体の生産性向上につながっているのです。

「教える側も学ぶ側も、共に成長できる」。この言葉に、持続可能な人材育成のヒントが隠されているのかもしれません。

次のセクションでは、この「学び合いの文化」をベースに、具体的な生産性向上の手法について見ていきましょう。

3. 生産性向上につながる人材育成の実践




「人手不足だから生産性が上がらない」。よく聞く悩みですが、実はこれは逆かもしれません。以前の記事「【広島・呉の製造業経営者向け】採用難でも生産性1.5倍!」でご紹介したように、人手不足をきっかけに生産性向上を実現した企業は少なくありません。

技能マトリクスで見える化を


「うちの現場は、技能の習得に何年もかかる」。製造業では特によく聞く声です。ただ、本当にそうでしょうか?ある製造業の事例では、技能マトリクスの導入で状況が大きく変わりました。

具体的な手法をご紹介します:

1. 技能を細分化する
例えば「加工技術」と一括りにしていた技能を、「材料セット」「機械操作」「品質チェック」など、より小さな単位に分解します。

2. 習得レベルを4段階で評価
- レベル1:指導を受けながらできる
- レベル2:一人でできる
- レベル3:他人に教えられる
- レベル4:改善提案ができる

3. 毎月の習得状況を可視化
エクセルなどで一覧表を作成し、社員全員の技能習得状況を「見える化」します。

多能工化への具体的ステップ


金井大道具株式会社では、コロナ禍での受注減少期を逆手に取り、多能工化を推進。具体的には:

1. クロストレーニングの実施
- 朝礼後の30分を技能伝達の時間に
- 週替わりでトレーナーを決め、小規模なスキル共有を実施

2. ジョブローテーションの工夫
- 2週間単位で担当を少しずつシフト
- 「教える側」と「学ぶ側」の両方を経験

3. 「できた」の基準明確化
- チェックリストの作成
- 実技テストの実施

その結果、一人あたりの担当可能工程が1.5倍に増加。人手不足の中でも生産性を維持できる体制が整いました。

デジタル技術の戦略的活用


株式会社クア・アンド・ホテルでは、eラーニングシステムを独自にカスタマイズ。「空き時間」を「学習時間」に変える工夫をしています。

ポイントは3つ:
- 1回15分程度の短い動画で学習効率アップ
- スマートフォンでいつでもアクセス可能
- 学習履歴の自動記録で進捗管理の手間を削減

助成金・補助金の賢い活用


「人材育成にコストはかけられない」。中小企業からよく聞く声ですが、実は見逃している支援制度も多いのです。

例えば:
- 人材開発支援助成金(厚生労働省)
- 人材確保等支援助成金
- 各都道府県の独自支援制度

ある企業では、これらの制度を組み合わせることで、年間の教育訓練費用の約7割を補助金でカバー。「予算がない」は、もはや理由にならないかもしれません。

4. 採用難時代を乗り越える戦略的採用




「採用市場で中小企業は不利」。そう思い込んでいませんか?確かに、知名度や待遇面では大企業に及ばないかもしれません。でも、だからこそ、独自の強みを活かした採用戦略が効果を発揮するのです。

SNSを活用した採用ブランディング


株式会社八百鮮の事例が、その可能性を示しています。同社では、社長自らがTwitterで情報発信を始めました。投稿内容は特別なものではありません。

- 社員の成長エピソード
- 職場の何気ない日常
- 会社の将来ビジョン

こうした等身大の情報発信が、予想以上の反響を呼びました。「大企業にはない、家族的な雰囲気が伝わってきた」「経営者の考えに共感した」といった声が集まり、採用コストを3分の1に削減しながら、必要な人材の確保に成功したのです。

オンラインプラットフォームの戦略的活用


リスタンダード株式会社は、「Wantedly」を活用して成果を上げています。ただし、単に求人を掲載するだけではありません。

重視したのは以下の3点:
1. 企業文化の見える化
- 社員インタビューを定期的に掲載
- 職場の雰囲気が伝わる写真を多用

2. 成長機会の具体的提示
- 研修制度の詳細を公開
- 先輩社員のキャリアパスを紹介

3. 双方向コミュニケーション
- 質問へのスピーディーな返信
- オンライン座談会の実施

その結果、わずか3ヶ月で4名の内定者を獲得。「規模は小さくても、魅力的な会社」というブランドイメージの確立に成功しています。

採用と育成の好循環を生む


前述の人材育成の取り組みは、実は採用活動でも大きな武器となります。株式会社クア・アンド・ホテルでは、充実した研修システムを採用のアピールポイントとして活用。「入社後の成長」を具体的に示すことで、応募者の不安を解消しています。

特に効果的だったのが、以下の取り組みです:

- 内定者向けオンライン座談会での先輩社員の体験談共有
- 研修システムのデモ体験
- 社員の成長事例をSNSで発信

コストを抑えた採用手法


採用予算が限られている中小企業こそ、効率的な採用活動が求められます。ある企業では、以下の方法で成果を上げています:

1. 既存社員のネットワーク活用
- 紹介制度の導入
- 社員のSNSでの情報拡散

2. 地域密着型の採用活動
- 地元の学校との連携強化
- 地域イベントへの参加

3. インターンシップの戦略的活用
- 職場体験の充実
- SNSでの発信依頼

次のセクションでは、これまでご紹介した人材育成と採用活動を、どのように統合的に展開していくのか、その具体策についてお話ししていきましょう。

5. 人材育成と採用の相乗効果を生む統合戦略




「採用」と「育成」。これまで別々に考えられがちだったこの2つの取り組みを、いかに連携させれば良いのでしょうか。実は、この2つを上手く組み合わせることで、予想以上の効果が生まれているケースが増えています。

教育体系と採用活動の連携



株式会社クア・アンド・ホテルの事例が、その好例です。同社では以下のような取り組みを行っています:

1. 採用時からのキャリアパス提示
- 入社後3年間の育成計画を視覚化
- 先輩社員の成長実績を具体的に紹介
- 資格取得支援制度の詳細な説明

2. 内定者フォローの充実
- 入社前からのeラーニング提供
- 先輩社員とのオンライン交流会
- 配属部署の業務体験

「入社前から会社の雰囲気が分かり、安心して入社日を迎えられた」という声が、内定辞退防止にもつながっています。

逆境を活かした人材戦略


金井大道具株式会社の事例は、特に注目に値します。コロナ禍での受注減少期を、戦略的な人材育成期間として活用したのです。

具体的な取り組み:
- 幹部候補生の集中育成プログラム実施
- 社員間の技能伝達時間の確保
- オンライン研修への積極的参加

この取り組みが、予想外の採用メリットを生みました。「不況期でも人材育成に投資する会社」という評判が口コミで広がり、優秀な人材からの応募につながったのです。

社員の成長が生む好循環


株式会社山岡製作所では、社員の成長を「見える化」する仕組みを採用活動にも活用しています

1. 社内報での成長事例紹介
- 資格取得者の体験談
- 技能向上のプロセス
- キャリアアップのストーリー

2. 採用説明会での活用
- 実際の成長事例を提示
- 質疑応答での具体例共有
- 若手社員による体験談発表

3. SNSでの情報発信
- 日々の成長の様子を投稿
- 研修風景の共有
- 社員インタビューの掲載

「この会社なら成長できる」という確信が、応募者の決め手になっているといいます。

統合戦略のポイント


成功企業に共通するのは、以下の3つの視点です:

1. 一貫性のある情報発信
- 採用時の約束と実際の育成内容の一致
- 社員の成長実績の具体的な提示
- 経営理念と人材育成方針の整合性

2. 双方向のコミュニケーション
- 応募者の不安や期待の把握
- 既存社員からのフィードバック収集
- 育成プログラムの継続的改善

3. 長期的視点での投資
- 人材育成予算の確保
- 教育体制の計画的整備
- 成果指標の設定と評価

次のセクションでは、これらの取り組みを持続可能な形で展開していくための、中長期的な戦略についてお話ししていきましょう。

6. 未来を見据えた持続可能な人材戦略の構築




人手不足時代を乗り越えるには、短期的な対応だけでなく、未来を見据えた戦略が必要です。これまでご紹介してきた様々な取り組みを、どのように持続可能な形で展開していけばよいのでしょうか。

中長期的な人材戦略のポイント


1. 段階的な目標設定
先に紹介した27年の人材育成実績を持つ企業では、以下のような時間軸で戦略を組み立てています:

- 半年以内:既存社員の技能マトリクス作成と課題の見える化
- 1年以内:教育体系の整備と実施
- 2年以内:多能工化の推進と生産性向上
- 3年以内:採用ブランディングの確立

「すぐにできること」と「時間をかけて取り組むこと」を区別し、無理のないペースで進めることがポイントです。

デジタル化時代への対応


eラーニングやSNSの活用は、もはや「選択肢」ではなく「必須」となっています。ただし、ここで重要なのは「デジタル化」が目的ではないということ。

成功企業では:
- 対面とオンラインのハイブリッド型研修
- SNSと実際の職場見学の組み合わせ
- デジタルツールを活用した技能伝承

など、アナログとデジタルをうまく組み合わせています。

変化する労働市場への対応


「終身雇用」「年功序列」という従来の日本型雇用システムは、大きく変わりつつあります。これからの時代に求められるのは:

1. 柔軟な雇用形態
- 副業・兼業の許可
- 時短勤務やフレックスタイムの導入
- リモートワークの活用

2. 成果主義と年功序列のバランス
- 若手の抜擢登用
- 技能レベルに応じた処遇
- ベテランの経験値活用

3. 多様な人材の活用
- 女性活躍推進
- シニア人材の戦力化
- 外国人材の受け入れ

まとめ:これからの中小企業に求められること


人手不足は、確かに大きな経営課題です。しかし、それは同時に、自社の人材戦略を見直す絶好の機会でもあります。

重要なのは:
- 自社の強みを活かした独自の戦略構築
- 社員の成長と会社の成長の好循環創出
- デジタルとアナログのバランスの取れた活用
- 長期的視点での投資判断

そして何より、経営者自身が「人材育成」と「採用活動」を、コストではなく投資として捉える視点を持つことです。それが、人手不足時代を生き抜くための第一歩となるはずです。

この記事が、皆様の企業における人材戦略の一助となれば幸いです。

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檜和田知之
専門家

檜和田知之(デジタル経営アドバイザー)

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・大手企業て培った業務効率化のノウハウを中小企業にも活用できるような仕組みづくりが強く・AI活用に強み・補助金に強み

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