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高正樹

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高正樹(たかまさき)

社会保険労務士法人ジャスティス

コラム

退職の申し出は、退職日の3ヶ月前までにしなければならないとする就業規則の規定は有効か?

就業規則等

2016年11月30日

貴社では、従業員が自己都合で退職しようとする場合には
退職日の何日前までに会社に申し出なければならないことにされていますか?

仕事柄、色々な会社の就業規則を拝見しておりますが、
多数の会社で、就業規則で退職日の30日(1ヶ月)前までに申し出なければならないとされています。

そんな中、ある会社から、
「退職する場合には、退職日の30日前までに会社に申し出なければならない。」
とする就業規則の現行の規定を「90日(3ヶ月)前までに申し出なければならない。」
と改定したいが問題ないかとのご相談を受けました。

そこで、今回は、退職する場合は、退職日の90日(3ヶ月)前までに申し出なければならない
とする規定は有効か否かについて書いてみたいと思います。

まず、期間の定めを設けず雇用している従業員からの退職の申し出に関しては、
それに関する法律として、民法第627条があります。
以下に民法第627条を抜粋しますので、まずはご確認ください。

【民法】
第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
  当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
 この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以降についてすることができる。
 ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、
 三箇月前にしなければならない。

この民法の規定につきましては、見解が分かれるところではありますが、
最近の学説等を総合しますと、以下のような結論となります。

▼パートタイマーや時給者・日給者の場合
   退職の意思表示から2週間が経過すると雇用契約は終了する。(民法第627条第1項の考え方)

▼月給者の場合
   給与計算期間の前半に退職を申し出た場合には、その給与計算期間の末日に、
  給与計算期間の後半に退職を申し出た場合には、次の給与計算期間の末日に
  雇用契約は終了する。
   たとえば、末締めの会社の場合、1日から15日まで(前半)に退職を申し出た場合には
  当月の末日で退職となり、16日から末日まで(後半)に退職を申し出た場合には
  翌月末日に退職となるということです。(民法第627条第2項の考え方)

ちなみに、長期の退職申入れ期間を定める就業規則の規定について、
司法(裁判所)はどのような判断を下しているかについては、
退職願は6ヵ月以前に提出しなければならない旨を定めた就業規則の規定の効力について争われた
「高野メリヤス事件(S51.10.29 東京地裁判決)」が参考になります。
この裁判は控訴されておらず、一審で判決が確定しているケースであるため、
控訴・上告されて最高裁まで行っていれば別の判断になる可能性があるものの、
一審において裁判所は以下のように判示しています。
『就業規則によって民法第627条で定める予告期間を、使用者ために延長することが許されるか、
 については説が分かれているが、労働基準法第14条は、端的に長期の契約期間によって
 労働者の自由が不当に拘束を受けることを防止するものであり、同法第16条、第17条は、
 その意に反して労働の継続を強制されることを、同法第18条は、労働者の自由が不当に拘束されることを
 それぞれ防止する趣旨を含むものと解され、結局、法は、労働者が労働契約から脱することを欲する場合に
 これを制限する手段となりうるものを極力排斥して労働者の解約の自由を保障しようとしているものとみられ、
 ・・・(略)・・・民法第627条の予告期間は、使用者のためにはこれを延長できないものと解するのが相当である。
 従って、変更された就業規則は、予告期間の点につき、民法第627条に抵触しない範囲でのみ有効と解すべく、
 その限りでは、同条項は合理的なものとして、個々の労働者の同意の有無にかかわらず、
 適用を妨げられないというべきである。
 また、同規則では退職には会社の許可を得なければならないことになっているが、
 労働者の解約の自由を制約する結果となるので、この規定は効力を有しないと解すべきである。』

こうなると、退職日の30日前までに申し出なければならないとする現行の就業規則の規定の効力はどうなのか
との疑問を抱かれる方がいるかもしれませんが、
退職する従業員が担当していた業務に空白が生じることを防ぎ、
後任への業務の引き継ぎを行うためなどの目的で30日程度の予告期間を設けることは、
企業の運営上合理的な理由だと言えますし、
労働基準法第20条に定められている解雇予告期間(30日前までの予告)とのバランスから考えても、
従業員側から雇用契約の解除を申し出る場合にも30日前までに行うことと定める現行の規定は
無効とは解されない(妥当なライン)と言うことができると思われます。

ただ、これを90日(3ヶ月)前までに申し出なければならないという規定に改定するとなると、
不利益変更ということにもなりますし、さすがに前記の民法の規定や東京地裁判決に照らして、
有効性を見い出すのは難しいのではないでしょうか。

よって、就業規則の退職の申し出に関する規定を30日(1ヶ月)前から“90日(3ヶ月)前”に改定することは
オススメできません。
そもそも、このような改定が原因で労使トラブルが生じた際には、このような就業規則の改定の合理性を
立証するのは極めて困難だと言えますので。。。

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